コロナ禍を通して学んだ「対面すること」のすばらしさ…聖園

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 聖園女学院中学校・高等学校(神奈川県藤沢市)は今春、新型コロナウイルス感染の拡大防止に伴う休校中の対応として、初めてオンライン授業に取り組んだ。教師たちは、生徒の学習意欲をかきたてる授業内容や表現方法などに知恵を絞る一方、新1年生を含めた生徒の悩みや不安の解消に心を砕き、6月3日の学校再開へと道を開いたという。オンライン授業を巡る試行錯誤と学校再開後の教育方針について、教諭たちの話を聞いた。

新1年生の素顔を画面越しに初めて見る

英語の江藤幸代先生(左)と家庭科の菅野由美先生
英語の江藤幸代先生(左)と家庭科の菅野由美先生

 新型コロナウイルス感染の拡大が懸念され始めた3月、同校の教師陣は、オンライン授業の検討に入ったが、最初は慎重姿勢だったという。「休校が延長されればオンラインで対応しなければならない」。そのことは理解していたが、ウェブ会議システム「Zoom」を利用した場合、部外者がミーティングルームに入ってくる恐れがある。そこに迷いがあったからだ。しかし、新年度の授業は待ったなし。新1年生たちも入学してくる。教師同士でさまざまに情報交換するうちに、「仮に部外者が授業を聞いたとしても、そもそも学校の授業は聞いてもらうためのものだから」と吹っ切れたという。

 生徒全員に1台ずつ配備しているiPadをオンラインで利用することにし、4月6日の入学式以来、自宅待機になっている1年生計70人には各人の自宅に郵送した。中1生を含む全校生徒を対象にゴールデンウィーク(GW)前の4月末、通信テストを兼ねて計3回、Zoomでクラスごとにホームルームを実施した。教師は生徒の顔が並ぶパソコン画面に向かって、「一人で起きることができた人は?」「課題が終わった人は?」など簡単な質問を投げかけ、生活リズムが守れているかどうかを確認してコミュニケーションを図った。

 1年生は入学式以来の顔合わせとあって、生徒たちは最初のうち遠慮がちだったが、すぐに両手で大きなマルを作って質問に答えるようになるなど、テレビ会議ならではのコミュニケーションを習得したという。また、マスクを外して「対面」するのは、この時が初めてということで、1年生を担当する家庭科の菅野由美先生は「全員の素顔を確認することができ、元気そうな姿に安堵(あんど)しました」と振り返った。

工夫を重ねて動画に収録した編み物の実演
工夫を重ねて動画に収録した編み物の実演

 広報担当の鐵尾千恵先生によると、本格的にオンライン授業が始まったのは5月のGW明けからだ。それに先立って、教師たちは教科の枠を超えて話し合い、オンラインで生徒が集中力を失ったり、通信状態の影響などで置き去りになったりすることのないようにと、1コマあたりの時間を短くする、生徒の学習意欲をかきたてる内容にするなど、さまざまな工夫を凝らした。

 菅野先生は編み物の手つきを分かりやすく映像に写すために、キッチンのシンク下で使う棚にiPadをセットして、その下で編み物の実演を撮影したという。また、英語の江藤幸代先生は、英語の授業では、教師が英語で歌った後、歌詞の意味を解説したり、ジェスチャーを付けてアルファベットの歌を教えたりしたそうだ。

オンラインが生徒の不安解消に役立つ

 オンライン授業の内容に苦心する一方で、教師たちが心配したのは、学校再開後に対面授業へとスムーズに移行できるかどうかだったという。そのために、休校期間中は生徒の不安を解消することにも力を入れた。クラス担任は、1日あたり2、3人ずつZoomで個人面談を実施し、生徒の悩みや不安を共有して、生徒が孤立しないように努めた。

 オンラインならではの機能が生徒の不安解消に役立ったケースもある。同校には、教師と生徒がその日にあったことやそれに対する感想、翌日の目標などを書き込むオリジナルの「聖園ノート」がある。今回、これをオンライン化し、学習に関する質問や情報をやりとりできるようにした。「オンライン聖園ノート」は、教師間でも中身を共有できるので、内容によっては複数の教師から返信するケースもあったという。

 「自習室」もオンライン上で開設した。「自習室」は図書館で開催され、女子大生十数人が交代で生徒の学習相談に乗っていたが、休校を機にZoomで参加できるようにした。参加者の中には友達が頑張っている姿を見て自分も励みになったという生徒もいて、孤立を防ぎ、思いを共有する場としても役に立ったという。

学校再開で、対面することの大切さを再認識

6月3日から学校が再開し、登校する生徒たち
6月3日から学校が再開し、登校する生徒たち

 必要に迫られてのオンライン対応だったが、教師、生徒ともに得られたものは多かったという。例えば「オンライン聖園ノート」は、生徒が自由に書き込んだ意見から、一人一人の人となりを理解するのに非常に役立ち、学校再開後も続けることにした。再開後に生徒に行ったアンケート調査でも、「先生とお話ししているような気分になり、書くのが楽しみになった」など高評価が多かったそうだ。

 オンラインでの学習について、ある1年生は「学習時間を記録することができるので、やる気につながる」とし、別の1年生も「どんな課題が出ていたのか、さかのぼって見ることができるので便利だった」と、いずれも前向きに受け止めていた。教師たちも、Zoomの使い方やオンラインでの表現方法などを試行錯誤しながら授業の形にできたことで、学校が今年度の目標にしていた「ICTリテラシーの向上」に大いに役立ったという。

 ただ、取材で話を聞いた先生たちはいずれも、学校再開後は「対面することを大事にしたい」と口をそろえる。オンライン授業の中で発見はたくさんあったものの、通信環境が悪くて授業の途中で退出してしまったり、デバイスの使い過ぎで頭痛や肩こりを起こした生徒がいたりした可能性は否定できない。対面の授業でこそ、生徒に十分な目配りができるという考えからだ。

 登校が再開した6月3日、1年生が迷うことなく学校にたどり着けるように、先生たちは最寄り駅から校舎までの辻々に立って誘導した。入学式以来2か月ぶり2度目の登校だったが、あるクラスでは全員が授業開始の5分前までに着席し、全員拍手して再会を喜び合ったという。

 「教員と生徒、生徒と生徒が対面することの大切さを改めて認識した瞬間でした」と江藤先生は声を詰まらせた。

 (文:江澤岳史 写真:中学受験サポート 一部写真提供:聖園女学院中学校・高等学校提供)

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1384399 0 聖園女学院中学校・高等学校 2020/08/04 05:22:00 2020/08/04 16:05:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200803-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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