【特集】英会話の楽しさに目覚める2日間の「国際理解教育」…日大藤沢
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日本大学藤沢高等学校・藤沢中学校(神奈川県藤沢市)は毎年、中1を対象に12月中の2日間、ネイティブの教師による1日6時間の国際理解教育を行う。英語のコミュニケーションスキルを向上させ、世界の文化について学び、中2から始まる「英会話」の授業に備えるのが目的だ。2日間のうち初日の授業を取材し、教師と生徒たちに話を聞いた。
英語に親しみ、話すことへの抵抗感をなくす

同校では、中学1年の英語の授業は週5時間。中2からは週6時間となり、さらに「英会話」の授業が1時間加わる。「英会話」はネイティブの教師が担当して、クラスを少人数に分けて、オールイングリッシュで実践的な英語力を磨く。中1の12月に行っている2日間英語漬けの「国際理解教育」はその準備段階にあたる。
「英語を聴いたり、黙読または音読の練習をしたりといったことは、中1の英語の授業でも行っていますが、中2でいざネイティブを前に英語を話すとなると、緊張してうまく言葉が出ない生徒がいます。そこで、中1のうちに英語に親しみ、話すことへの抵抗感をなくしてもらおうと、毎年実施してきました」と、英語科の星
この2日間の「国際理解教育」が始まったのは7、8年前だという。「2日間で英語力が飛躍的に伸びるということはありません。しかし、英会話の楽しさに目覚めるよい機会となっています」
中1生たちは2日間、朝から夕方まで1日6時間ずっと英語に触れることになる。今年は、午前中は2日ともネイティブによる英会話レッスン、午後は1日目がオンライン英会話、2日目が映画「ホーム・アローン」の観賞という内容で実施された。英語のコミュニケーションスキルを磨くと同時に、海外の文化に触れることも目的としている。
午前中の英会話レッスンは、同校の中2から高1の英会話授業を担当しているネイティブの教師が指導した。「英語が得意な生徒と、そうでない生徒で差が出てくることはありますが、ネイティブの先生たちがうまくリードして、皆に話す機会を作ってくれています」。初日午後のオンライン英会話は初めての試みだという。生徒たちはフィリピンにいる語学教師とモニター画面越しに対面し、英語でのやりとりに挑戦した。
自己紹介の表現を学び、2日目のプレゼンへ

2日間の「国際理解教育」は中1の3クラスに対し別々の日程で実施される。1組の日程は12月10、11日で、他のクラスは両日、家庭学習となっているが、1組の生徒たちは「国際理解教育」を受けるために登校する。
初日の10日に1組の教室を訪ねると、2人のネイティブの教師による授業が始まっていた。例文を参考にしながら、自分の名前、住んでいる場所、趣味、将来やりたいことなどを英語で話す練習だ。担当しているのはイギリスから来ているデイビッド・スティール先生と、アメリカから来ているジェシー・ニューボールド先生で、スティール先生は12年、ニューボールド先生は20年以上の経験を持つベテラン教師だ。
進行はすべて英語で行われるが、この日は初めてネイティブのレッスンに接する生徒たちが理解できるよう、先生たちは一言ずつゆっくりと話す。答えを言おうと何人かの生徒が同時に手を挙げると、「It’s a janken situation!(ここはジャンケンだね)」とユーモアたっぷりに伝え、生徒たちは次第に先生のペースに引き込まれていく。

レッスンのプログラムはスティール先生、ニューボールド先生らがオリジナルで作成したものだという。「英語は単なる勉強ではなく、『楽しい』『面白い』ものだということに気付いてもらい、実際に話してみることで、自分の英語に自信を持ってほしいと思います」と、スティール先生は話した。
星先生は、教室でレッスンの様子を見守りながら、「外国人には、『I live in Fujisawa(私は藤沢に住んでいます)』と言っても分からないよ。I live in Fujisawa, near Yokohama.(私は藤沢に住んでいます。横浜の近くです)のように言ったほうがいい」といったように、生徒たちにアドバイスする。
生徒たちの手元には1人1台のタブレットパソコンがあり、「ゲームを作る人になりたいんだけど、何て言うんだろう。あっ、game creatorか」などと独り言を言いながら、ウェブで検索して言い方を調べている生徒もいた。同校では昨年度の中1生から全員にタブレットパソコンを配布し、普段の授業やホームルームで活用しているため、必要なことを調べる、画像を見つけるといった作業は、難なくこなせるようだ。
この日、自分について話す英語表現を学んだ生徒たちは、明日のレッスンで、一人一人が自己紹介のプレゼンテーションを行うことになっている。自分で作った文章をすでに暗記してしまった生徒もいて、明日のプレゼンテーションを楽しみにしている様子だった。「今日は皆、反応がよかったですね。英語が苦手な生徒も、よくしゃべっていました」と、星先生はうれしそうに話した。

レッスンのあと、生徒たちに話を聞いた。石田
中2になると「英会話」の授業が始まり、中3以上では、留学生講師とともにディスカッション、発表、スピーチなどのアクティビティーに挑戦する3日間の「国内語学研修」、ホームステイをしながら語学学校に通う2週間の「オーストラリア語学研修」といった希望者対象のプログラムがある。そして、高2では全員が6日間の「カナダ修学旅行」に参加する。ただ、今年度は新型コロナウイルスの感染を懸念して海外でのプログラムは中止となった。
このほか、学校全体が実用英語技能検定を受けると同時に、英語のコミュニケーション能力を測る試験「GTEC」を、中2、中3及び、高1、高2の特別進学クラス全員が受検する。こうして大学受験に専念する高3までに、英語力を段階的に伸ばしていく。
「新指導要領が始まる来年度からは、生徒の力をより効率よく伸ばすことができるよう、中1の英語の授業を習熟度別にする計画もあります。新しい大学入学共通テストでは、長い文章を的確に読み取る力が必要とも言われています。これからも学校としてさまざまな機会を提供し、聴く・話す・読む・書く、の4技能をバランスよく育てていきたいと考えています」と、星先生は抱負を語った。
(文:足立恵子 写真:中学受験サポート)
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