「本物」の研究に触れて確かな進学先を選ぶ…千葉明徳

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 千葉明徳中学校・高等学校(千葉市)は、2018年度から千葉大学の理系人材育成プログラム「次世代才能スキップアップ」への生徒の参加を推進している。大学で講義を受けることで学部や学科を具体的にイメージさせ、進学のミスマッチを防ぐのが狙いだ。昨年12月に同プログラムの「基礎力養成コース」を終えた高2生と担当教員に話を聞いた。

中3の課題研究が受講希望者の選考ポイントになる

「本物に触れさせる」ことの重要さについて話す中高一貫コース長の栗原教諭
「本物に触れさせる」ことの重要さについて話す中高一貫コース長の栗原教諭

 中高一貫コース長の栗原篤史教諭は、以前から大学進学のミスマッチを防ぐにはどうしたらいいかを考えていたという。特に理系は研究分野が細分化されているため、似て非なる専攻が多く、進学を控えた生徒の不安は大きいものがある。「日ごとに成長する生徒の興味は変わりやすく、受験直前に進路を変えたいと言い出すこともあります。そんな調子では、研究内容をよく知らないままに学部や学科を選んで後悔することになりかねません」

 ミスマッチを防ぐためには、大学での学びが実際にどんなものなのかを知ることが重要だが、オープンキャンパスなどでは表面的なイメージしかつかめないことが多い。「本物に触れさせる」ために、栗原教諭が目を付けたのは高大連携プログラムの活用だ。そこで18年度から、地元の千葉大が実施している高校生向けの理系人材育成プログラム「次世代才能スキップアップ」に参加させることにした。

 プログラムの基本となるのは、実験を中心とする大学教養レベルの「基礎力養成講座」。この講座はさらに「健康・医療」「テクノロジー」「総合科学」「園芸学」の4コースに分かれる。対象は千葉県と近郊都県の高校生。定員は「健康・医療」「テクノロジー」が各約40人。他の2コースは各約20人。土日祝日や夏休みを利用した日程なので、普段の学校生活への影響が少ないし、受講費は無料だ。開催数も園芸学以外は6~8回で、他大学の同様のプログラムより充実している。栗原教諭は「1回だけのイベント的なワークショップではなく、継続的に通える点が生徒に響くと思った」と話す。

 希望者は、千葉大に志望理由書を提出し、希望者が定員を上回った場合は、書類で選考される。選考対象となる項目は「過去の活動実績」「科学への熱意等」の二つ。たとえ熱意があっても、科学に関する活動実績があるかどうかがポイントとなる。

 その点、千葉明徳は、学びの基本に「まとめて・書いて・発表する」を掲げており、中学3年次に課題研究論文を書かせている。中学から同校に通う「中高一貫コース」の生徒は全員、活動実績があるといっていい。そこで栗原教諭は、中高一貫コースの生徒にプログラムを紹介し、理系学部への進学を希望している生徒には個別に声を掛けた。その結果6人が応募して2人が選考を通過。夏休みから通い始めて昨年12月に「基礎力養成講座」を終了した。

高度な授業内容と仲間にモチベーションアップ

「総合科学コース」を受講した中川さんのノート
「総合科学コース」を受講した中川さんのノート

 2年1組の中川愛珠(あゆみ)さんは、「総合科学コース」を選んで受講した。本格的な設備や器具を使って実験し、広い教室でさまざまな人と知識を共有できるという点に魅力を感じたという。同級生の理科に対する姿勢や知識にも興味があった。志望理由書の「過去の活動実績」には、小6の自由研究で「フレミングの左手の法則」を活用した装置を作ったことや、中3で生物学と心理学をベースにした研究論文を作成したことを書いた。

 千葉大の西千葉キャンパス(千葉市稲毛区)に通うのは大変だったそうだが、「全講座に出席できたのは、毎回得られるものが大きかったからです」と中川さんは振り返る。「終わった直後から、次はどんなことが学べるんだろうとワクワクしていました」

 初回は、受講者のレベルの高さに焦りを感じたという。「総合科学コース」の授業では、1人ずつ用意された器具を使って各自実験を行う。その過程や結果を記録して全員と共有し、予想と実際の結果の誤差を検討する。その中で「みんな、自分が全然知らないことをよく知っている」と驚かされたという。

 受講者の1人が想定と異なる実験結果を出すと、他の生徒たちはその原因について活発に議論し始める。「知識があれば自分も仲間に入れる」と思い、予習をして授業に臨むことにした。「少しでも何かをキャッチできれば」と、図書館だけではなく、エンジニアだった祖父の書斎からも専門書を引っ張り出して読んだ。予備知識があると、難しい内容も頭に入ってきた。全然意味が分からなかった本の内容も、受講後に読み返すと少しずつ理解できるようになった。

 環境学に関心を持つ中川さんが一番面白かった講座は「地球システム科学の視点から考える地球環境問題」。授業を受けて、この分野への興味を再確認できた。環境学という学問の歴史や位置付けを教えてもらえたことも大きな収穫だった。「環境学の中にもいろんな分野があると知って、大学での研究や将来の仕事について、より具体的に考えられるようになりました」

「実験のレベルの高さに圧倒された」

「健康・医療コース」の坂本君が使ったテキストと添削された提出物
「健康・医療コース」の坂本君が使ったテキストと添削された提出物

 2年1組の坂本秀磨(しゅうま)君は薬剤師を目指していたので「健康・医療コース」を受講した。

 坂本君が最も印象に残っている授業は、担当教員の血液を標本にして顕微鏡で観察した「血液スメア 標本の作製」。指定された血液成分を探し出し、それらが教科書通りの形をしているかどうかを確認する。それだけの実験に、朝から夕方まで時間をかけることに驚いた。しっかり観察できるよう血液を染色するなどして各班で準備し、みんなで結果を予想しながら反応が出るのを2時間ほど待ち、顕微鏡で観察した。

 少しでも手順を間違えると正しい結果が得られないため、すべての工程を決められた通り遂行することに神経を使った。実際、染色の手順を間違えて血球が全く観察できなかった班もあった。「精度の高い結果を得るためには、周到かつこまやかな準備で条件を整えることが必要なんだ」と実感した。所要時間や器具の性能、正確性など何もかも高校の勉強とは次元が違い、「大学の実験はすごい」と圧倒された。

今も坂本君が大事に部屋に飾っている血液成分の顕微鏡写真
今も坂本君が大事に部屋に飾っている血液成分の顕微鏡写真

 講座終了後にもらった血液成分の顕微鏡写真は、今も大事に部屋に飾ってある。見るたびに、実験の大変さと楽しさがよみがえるという。「どの講座も専門的な内容で、今すぐ役立つわけじゃない。でもきっと、大学で授業を受けるときに力になると思います」

 同じ分野に関心を持つ仲間ができたことも、大きな財産だ。授業はグループワークが主体で、班ごとに進めるものが多かった。受講者同士で協力し合う必要があるため、自然と他校の生徒とも仲良くなれる。「実験の合間のちょっとした会話に知識の深さを感じさせる同級生がいて、自分も頑張らなきゃなと思いました」

受講した生徒の学習態度の変化に手ごたえ

 受講した生徒に対する取材に同席した栗原教諭も、「2人とも成績優秀者というわけではないので、学びへの熱意に驚いた。大学の先生にも名前を覚えてもらっていると聞いてはいましたが、納得しました」と感嘆の様子だ。受講後の2人は学習態度が変わったという。「他校の生徒から良い刺激をもらい、学校を代表して参加しているという思いが芽生えたのでしょう」

 千葉大のプログラムでは、「基礎力養成講座」の終了後、受講者の中から選抜された一部の生徒が「G-スキッパーコース」に進み、研究室で課題研究に取り組むことができる。その修了者には、英語でのポスター発表や千葉大への飛び入学といった特典もあるという。中川さんと坂本君は現在、「G-スキッパーコース」に進む選抜の最中だ。先日も、論文リスト作成の指示を受けた坂本君に相談され、栗原教諭は論文検索サイトのことや使い方を指導したという。

 今回は初参加ということで高2生だけにプログラムを案内したが、来年度からは早い段階で案内し、高1生も参加できるようにしたいと栗原教諭は考えている。「このプログラムへの参加を、中高一貫コースならではの魅力にしていきたいです」

(文・写真:佐々木志野 一部写真:千葉明徳中学校・高等学校提供)

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440104 0 千葉明徳中学校・高等学校 2019/02/12 15:56:00 2019/02/19 09:40:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190212-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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