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【特集】生徒に自信を持たせ、大人に育てる「思考する学び」…千葉明徳

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 千葉明徳中学校・高等学校(千葉市)は、2020年から「思考する学び」を新たなスローガンに掲げ、「まとめて・書いて・発表する」さまざまなプログラムに取り組んでいる。知識の蓄積にとどまらず、体験を通した学びをグループワークや個人で探究し、思考力や発信力を身に付けるのが目的だという。園部茂校長に、その取り組みの狙いや活動内容について聞いた。

農業を軸とした学びを手書きポスターで発表

「中学生の段階で自然と関われる『土と生命の授業』は意義がある」と話す園部校長
「中学生の段階で自然と関われる『土と生命の授業』は意義がある」と話す園部校長

 園部校長は東京農業大学を卒業後、千葉明徳の理科・生物の教師として44年間教壇に立ってきた。中高一貫化がスタートした2011年に校長に就任し、以来、新しい学びの形を模索しながら教育改革に取り組んでいる。昨年度からスローガンとしている「思考する学び」は、知識を蓄積するだけの学びから、自ら思考し、その考えを表明し合い、周囲と学び合うことへのシフトを意味している。

 そうした新しい学びの一つが、中学の総合的な学習の時間で行う「土と 生命(いのち) の学習」だ。1年生は水田で米づくりをし、2年生は畑でいろいろな野菜づくりを体験する。農業体験を切り口に、自然と人、社会のつながりを考えることを狙いとするこの学びは、中学開校前から企画され、以来11年間続けられている。

 「今の子供たちは、花や野菜を育てる機会が少なく、自然と 乖離(かいり) しているのではないかと危機感を抱いています。世界的にSDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれていますが、例えば環境問題を論じる時に、自然との関わりを持っていなければ真剣に向き合うことはできません。そういう意味でも、中学生の段階で自然と関われる『土と生命の授業』は意義があると思っています」

毎年恒例の田植えでは園部校長自ら指導にあたる
毎年恒例の田植えでは園部校長自ら指導にあたる

 「始めた当初は外部に畑や田んぼを借りていたのですが、管理も大変ですし、生徒たちが作物の日々の変化を見られない。稲のすべての成長のステージを生徒たちに見せたいという思いで、4年前に校内の敷地に田畑を作りました」

 田植えや種まきなどの農作業は校長自ら指導にあたっている。「苗の植え方一つにしても、生徒たちがアイデアを出していろんなやり方を試行錯誤してみるなど、チャレンジする場になっていますね。もっとも生徒たちには、『校長先生が一番楽しそうだね』と言われますが」

 こうした農業体験を軸として、稲作と切り離せない日本文化や環境問題などについて学び、1、2年混合のグループでSDGsをテーマとする探究学習を行っている。さらにその成果を定着させるのが、「まとめて・書いて・発表する」学びだ。

 生徒たちは、学習成果を手書きでポスターにまとめ、9月に行われる文化祭「明実祭」でプレゼンテーションする。ポスター制作は、あえてICTを使わず手書きにしている。その理由について園部校長は、「紙の色やレイアウトを工夫し、どうすれば人に伝えやすいかを考えることが大切。アナログで1枚の紙に書いて仕上げることに意義があります」と説明する。

1年間、個人で取り組む中3の「課題研究論文」

「土と生命の学習」の発表用ポスターを制作する生徒たち
「土と生命の学習」の発表用ポスターを制作する生徒たち

 「土と生命の学習」で培ってきた「まとめて・書いて・発表する」学びの集大成として、中3では約8000字の課題研究論文に取り組む。2年次に「明実祭」が終わるとテーマ探しをスタートし、3年次のゴールデンウィーク頃までに各自テーマを決定する。ゼミ方式の授業の中で、生徒は互いの 進捗(しんちょく) を確認し、意見交換しながら、調査や研究を進めていく。9月に中間発表会を開き、他のゼミの生徒や後輩からも広く意見を聞いて、さらに論文の精度を高める。年内に論文を仕上げ、2月の本発表に向けてプレゼンテーション資料を作成する流れとなっている。ただ昨年度は、新型コロナウイルスの感染に配慮して、12人の優秀作品の発表を動画で視聴するにとどめた。

 中学校入試広報室部長の土佐和也教諭によると、設定する研究テーマは自由だが「自分と社会の関わりを前提に、社会に役立つこと」をルールとしている。昨年度は、発達障害者とその家族に向き合った「社会の多様性を高めるには~ASD(自閉症スペクトラム)当事者家族に聞く~」、身近な自然にいる外来種を研究した「外来種は生態系とどのように関わっていくべきか」、うどんの汁についてさまざまな角度から検証した「カレーうどんの汁はどうして飛び散るのか」など、多彩なテーマの研究論文が並んだという。

 これらの課題研究論文に目を通すと、内容だけでなく、調査や構成の仕方も本格的に仕上がっていることが分かる。指導にあたる教員が熱意をもって、生徒一人一人の研究を指導してきた成果と言える。

 園部校長は、「今後は、論文の内容をいかに深めていくかが課題です」と語る。「そこで中学の教員のほかに、専門性の高い高校の教員3人が加わって指導にあたっています。教員が取材の仕方を提案し、専門家を紹介するコーディネーターとしての役割を担うことで、生徒たちはテーマを掘り下げ、研究をより深めることができると考えています」

 課題研究論文が進路を決めるきっかけになる生徒も少なくないそうだ。3年前に「小弓城が関東の戦国史に与えた影響」という発表を行い、ベストプレゼンターに選ばれた現高3の男子生徒は、史学を学べる大学への進学を志望しているという。「その時の発表はとても印象的でした」と園部校長は振り返る。「館長さんと親しくなるほど博物館に足しげく通ったようです。小弓城跡を駆け回っている戦国武将たちの姿が思い浮かぶような、とてもよい発表でした」

 「論文の内容やレベルは生徒によってさまざまですが、自分一人で1年間じっくり課題に向き合い、考えを深めること自体がとても尊いと感じます。発表を見ていると、生徒たちが神々しく見えてくるんですよ。課題研究論文は、生徒一人一人に自信を持たせ、大人にする取り組みだと思います」

ICTで授業を効率化し、学び合いの時間を増やす

理科の授業でiPadを使用してグループワークをする生徒たち
理科の授業でiPadを使用してグループワークをする生徒たち

 同校は、手書きポスターのようなアナログ的な学習方法を重視する一方で、ICTの活用も推進している。5年前から中高生全員がiPadを持ち、日常的に教科学習の中で活用している。

 「ICTが当たり前にある今の子供たちに、果たしてノートを取ることが必要でしょうか。例えば、板書をノートに書き写す時間を減らせば、その分、生徒が主体的に考え,それを共有し合う活動の時間が取れる。ICTは授業を効率化し、今までになかった時間のゆとりを生み出すという面で有効です。本校では、そうした時間を活用して、グループワークやディスカッション、プレゼンテーションといった学び合い、高め合う時間を増やしています」

 グループで取り組む「土の生命の学習」も、個々に取り組む課題研究論文も、生徒同士が考えを共有し、話し合い、学び合う場となっている。園部校長自身も「生徒と常にコミュニケーションを取ることが、校長としての一番の 醍醐(だいご) 味」と語る。

 校長室には、テレビドラマ「ドラゴン桜」の主人公のせりふ「今この瞬間が未来を創る」という言葉が、校長直筆の文字で掲げられている。「コロナ禍で自分を見失いがちな今だからこそ、一瞬一瞬が大切。その積み重ねが未来を作っていくということを生徒たちに伝えていきたいですね」

 (文・石井りえ 写真:中学受験サポート 一部写真提供:千葉明徳中学校・高等学校)

 千葉明徳中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2397543 0 千葉明徳中学校・高等学校 2021/09/30 05:01:00 2021/09/30 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210927-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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