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【特集】図書館をフル活用し「ことばの力」を磨く…桐朋女子

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 桐朋女子中学校・高等学校(東京都調布市)は、「ことばの力」を教育の土台と捉え、さまざまな授業や生徒の「自学自習」をサポートするために図書館をフル活用している。特に近年は、情報社会を生きるためのリテラシーを磨くためにも図書館は役立っているという。30年近い司書教諭のキャリアを持つ鈴木素子先生に、同校の図書館活用について聞いた。

構成のバランスが取れた9万冊の蔵書

中高部の専任司書教論を務める鈴木素子先生
中高部の専任司書教論を務める鈴木素子先生

 鈴木先生は、1991年に新卒で桐朋学園に就職し、司書として中高・短大部の図書館業務にあたってきた。その後、2003年に中高部の専任司書教諭となり、以後、17年にわたり、同校生徒の図書館利用をサポートし続けている。

 ――桐朋女子の図書館の特色を教えてください。

 蔵書の多さと、蔵書構成のバランスの良さだと思います。蔵書数は、生徒がいつでも手に取れる開架の本が7万2000冊ほどありました。閉架の本も合わせると9万冊ほどになります。中・高の図書館としては有数の蔵書数だと思います。

 本校はかねて、資料に当たる学習を重視しており、蔵書の充実には十分な予算を割いてきました。学習に必要な資料を用意するという観点から、各教科の先生方と相談し、活用機会が多い本や資料は、例えば班ごとに1冊ずつ使うことを想定して5、6冊用意してあるものもあります。

 ――蔵書構成のバランスは、どのようなものですか。

 「本と生徒をつなげたい」という考えから、中1から高3までどの学齢向けの本も手薄にならないように配慮しています。特に新入生向けには、小学校からの橋渡しとなる易しめの本も置いています。そして、1人でも多くの生徒の意欲や興味にマッチするよう、できる限り多様な分野の本をそろえるようにしています。授業の資料として購入する本も多いですね。先生によって授業のアプローチは異なるので、個別の相談や要望に沿って、その都度購入しています。

各教科で使う資料の準備にも積極対応

 ――授業に使われる本には、どのようなものがありますか。

身体に関することをテーマにして制作する「からだ新聞」
身体に関することをテーマにして制作する「からだ新聞」

 例えば、現代社会では統計資料を参照することが多いため、「日本国勢図会」などの年鑑・白書類は毎年購入します。また、現代社会のさまざまな課題について生徒が調査・発表を行う「反転授業」に対応して、テーマに沿った本を集めた「特別課題図書」のコーナーを設けています。

 地理・歴史や総合学習では「武蔵野巡検」という地域のフィールドワークを行っていて、これに対応した多摩地域の郷土史資料も充実させています。必要な資料の中には、通常の書籍流通に乗らないようなものもあるため、担当の先生に依頼して購入してもらい、図書館の蔵書としています。そうした柔軟な対応は本校の特色だと思います。

 国語の授業で学ぶ古典文学は、生徒の理解度に合わせ専門的なものから易しいものまでそろえています。また文学全集は出版社により編集や解説が違うため、各出版社から発行されているものをできるだけそろえています。理科で閲覧することが多い図鑑類も易しいものから専門的なものまで置いています。

 家庭科では育児や家政関連の本を多用します。保健体育では、中2で「からだ新聞」という壁新聞を制作し、人体の部位や疾病などに関するテーマを一つ選んで調べ、発表します。そうした学習にも図書館は欠かせない存在です。

 ――授業への面白い活用の例はありますか。

 教科横断的な資料の使われ方が度々あります。先日、国語科の先生から「美術全集を教材に使いたい」と要望があり、図書館内で美術全集や画集を使って授業をされていました。どのような形に仕上がったのかは見られませんでしたが、面白い試みだと思いました。また高1の英語では、「地理学関連の本からある土地の写真を一つ選び、英語で説明する」という課題に取り組んでいました。先生方はさまざまな切り口で、生徒の印象に残る授業づくりを工夫しているようです。

 ――図書館で授業が行われることもありますか。

図書館で調べ学習をする生徒たち
図書館で調べ学習をする生徒たち

 総合学習や調べ学習では、資料をたくさん広げて作業することもあり、班ごとに作業できる広い机を置いています。一方、自学自習やじっくり本を読みたい生徒のためには、中央についたてを立てて集中力アップに配慮した机も置いています。

 9月の文化祭では、中学生はクラスごとに展示発表を行います。時事問題やスポーツ、アニメなどテーマは幅広く、その準備の作業が例年6月頃から、図書館で行われます。

情報リテラシーを磨く場、安らぎの場

 ――近年の教育の変化に伴って、図書館の役割も変わってきましたか。

 図書館自体の役割は、時代が変わったからといって急に変わるものではありません。近年盛んになってきたアクティブラーニングは、本校では従来から実施しており、生徒の「自学自習」をサポートする方針もずっと変わりません。

 ただ、生徒の学び方は変わってきています。今はネット検索が当たり前になり、求める情報がピンポイントで得られるようになりました。調べ学習のリポートも、ネットで情報やキーワードを集めて組み合わせることで、ある程度作ることができるでしょう。

 紙媒体の図書館は時代遅れの印象があるかも知れませんが、そうした状況だからこそ、むしろ図書館の役割は大きくなると、私は考えています。

 ――大きくなる役割とはどんなものですか。

クイズ形式でおすすめの図書を紹介する壁新聞
クイズ形式でおすすめの図書を紹介する壁新聞

 例えば、新聞を開くと、目当ての記事以外にもさまざまな見出しが目に入り、思わぬ情報や知識が無意識に頭の中に残ったりしますね。それが蓄積していくと、何かのきっかけで頭の中で結びつき、新たな発想や興味につながることもあります。

 図書館という空間も似た構造があります。目的の本の周辺には、同様のテーマを別の視点で捉えた本や、少し異なるジャンルの本のタイトルが並んでおり、それが新たなヒントになったり、異なる興味への入り口になったりします。このようなセレンディピティーの体験を積み重ねることで、生徒たちの情報を得る力、本当の意味での「検索能力」が付くと思っています。

 それから、近年、問題視されている「フェイク情報」へのリテラシーも磨けると考えます。ネットの情報に比べると、本は編集者や校閲の厳しい目を経ている分、情報の信頼性が高い。さらに図書館では「生徒に有用な本を」という観点で司書や教員が厳選します。そうした中から目的に合った本を探して読む経験を積むことで、資料や情報を見極め、選ぶセンスが育ちます。

 お茶の水女子大学のAO入試に、「大学付属図書館の資料を閲覧してリポートを作成する」という入試(新フンボルト入試)があります。トップクラスの大学がこうした取り組みを行うのも、的確な情報を見つける技術や、多様な資料から考えをまとめる力がこれまでになく求められているからではないでしょうか。

 さらに、図書館はホッと一息つける安らぎの場所でもあると思います。春に一人で図書館に来てずっと本を読んでいた子に、いつしか同好の士ができ、連れ立って本を読みに来る様子を何度か見てきました。

 ――学校図書館の今後の課題をどうお考えですか。

 今どきの生徒は忙しく、必要な時以外に図書館に来ない生徒も多い。でも図書館には今言ったような良いところがあり、人生を豊かにしてくれる場所です。ですから、もっと多くの生徒に利用してもらいたいですね。

 各クラス2人の生徒から成る図書委員も、図書館や本に興味を持ってもらう企画に取り組んでいます。おすすめ図書を紹介する壁新聞や、新入生に配るしおり作り、詩や小説を投稿する文芸コンクールなど。

 私としては、図書館での本の探し方をもっと浸透させたいと思っています。現在は入学直後に1度説明するだけなので、十進分類法の番号の知識もない子もいます。一方で、図書館に通っている子は資料を探すのがうまい。探すのがうまくなれば、学習が楽しくなるし、効率も上がるはずです。

 まずは図書検索の入り口として、指定されたタイトルの本を見つける「図書館クイズ」をやったらどうかと考えています。それから、目的もなく書架を見て歩くのも、新たな知識への入り口を見つける良い方法です。授業と連携して「図書館で1時間ぶらぶらしてみる」というような企画もやってみたいですね。本との出会い、現物を見られるということが大事だと伝えたいと思っています。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート)

 桐朋女子中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1218300 0 桐朋女子中学校・高等学校 2020/05/14 05:21:00 2020/10/27 09:46:39 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200513-OYT8I50021-T.jpg?type=thumbnail

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