ワクワクの「実験」授業で理科的思考力を養う…専大松戸

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 専修大学松戸中学校・高等学校(千葉県松戸市)は、通常の理科授業以外に週1時間、中学1、2年生を対象とした「理科実験」の授業を設けている。実験を通して、早いうちに理科への苦手意識を克服し、興味を高めて理科的思考力を養ってもらうのが狙いだ。9月27日、家庭科と理科の教科横断型の授業を取材し、理科主任の井上結花先生に話を聞いた。

理科の知識を目の前の現象と結びつける

「炊飯実験」をテーマに行われた10回目の「理科実験」
「炊飯実験」をテーマに行われた10回目の「理科実験」
米粒や水の動きを1分ごとに記録する生徒たち
米粒や水の動きを1分ごとに記録する生徒たち
炊きあがると、うるち米にヨウ素液を垂らして色の変化を確かめる
炊きあがると、うるち米にヨウ素液を垂らして色の変化を確かめる

 理科室では2年B組の生徒たちが班ごとにテーブルを囲んで座っていた。テーブル上には、ガスバーナーや、米と水の入ったビーカーが準備されている。今年度10回目となる「理科実験」のテーマは「炊飯実験」だ。目的は二つある。一つは、米がどのように炊けるかを観察し、ご飯を炊く温度調節について学ぶこと。もう一つは、うるち米、インディカ米、もち米の違いを科学的に明らかにし、食べて味の違いを学ぶことだ。

 この日の「理科実験」は家庭科とコラボレーションした、2コマ連続計90分の授業。まず、それぞれの米のデンプンに含まれるアミロースとアミロペクチンの構成比率などを学び、炊飯実験の準備をする。うるち米と水を入れたビーカーにアルミホイルで蓋をし、そのホイルに温度計を刺す。金網を敷いた三脚にこのビーカーを載せ、その下にガスバーナーをセットした。

 先生の合図があって生徒たちは一斉にガスバーナーに点火した。点火後10分で水温98度前後にすることを目安に、火力を調整しながら炊いていく。1分ごとに温度を確認し、「曇ってきた」「泡が出てきた」など、米粒や水の動きを観察し、記録していく。

 うるち米が炊きあがると2、3粒をシャーレに取ってヨウ素液を垂らし、別に炊いておいたインディカ米やもち米と比較して色の変化や違いを確かめる。授業の最後には、3種類の米の比較分析と温度変化のグラフを提出した。

 授業ではさらに、3種類の米の食べ比べもした。ビーカーで炊いたのは、4月に生徒たちが植え、9月に刈り取ったうるち米だ。中2では田植えと稲刈りを体験する行事があり、この授業には稲刈りの事後指導という位置付けもあるという。

 実験の最中に、「どうやって水を抜くんですか」と質問する生徒がいた。「加熱すれば水は蒸発するという知識はあるんですが、目の前の現象と結びつけられないんです。でも、すぐに気付いて納得しますよ」と井上先生は話す。水分がある時は、加熱を続けても沸点以上にはならないと知りながら、温度上昇が止まった時に不思議がる生徒もいた。こういったことを繰り返すことで、理科の知識と実際の現象を結びつけて考えられるようになっていくそうだ。

 実験を終えた生徒たちに話を聞くと「赤くなったお米があって驚いた」「小学校のとき、でんぷんにヨウ素液を垂らすと青紫色になると習ったけど、やってみないと分からないなと思った」「炊飯器の中で起こっていることが分かって面白かった」など、生き生きした感想が返ってきた。

他教科とのコラボで多角的に物事を考える

 同校は2012年にカリキュラムを改定し、理科の時間を週1コマ増やした。そこで教員たちは話し合って、増えた1コマを「生徒がワクワクできる実験の時間にしよう」と決めた。それが「理科実験」だ。中学1、2年生の時期には、興味や意欲をかきたてるのが重要だと考えたからだ。井上先生は「受験勉強を経験し、中学入学時から理科に苦手意識を持っている生徒もいます。興味を持てないまま、難易度が上がっていく授業についていくのは大変です。実験を通して、早いうちに理科の楽しさを知ってほしい」と話す。

 中1では、簡単にできて「すごい」「面白い」と感じられる内容を心がけていて、特に初回は液体窒素を使ってゴムボールなどを凍らせ、バラバラに砕く実験で生徒の心をつかむという。中2では少しレベルを上げ、考察力を高められるよう表やグラフの作成も取り入れる。

 「理科実験」の内容は、洗剤の成分や働きを調べる、ペットボトルを使って顕微鏡を作る、イカを解剖するなど多岐にわたる。身近なものを素材に使うのもこだわりだ。井上先生は「日常生活で何げなく目にしたり使ったりしているものにも、理科の知識や現象が関わっていることを知ってほしい。生活に役立つものだと分かれば、親しみを持てると思います」と話す。

 「理科実験」の最大の目的は、少しでも生徒に理科を好きになってもらうことだ。各自が好きなテーマを決めて取り組む夏休みの自由研究は、生徒たちの興味を知る大事な参考資料になる。他教科とのコラボが生まれたのも、中1生の1人が行ったpH(水素イオン指数)の違いを調べる自由研究がきっかけになった。他の生徒も興味を持つだろうと、紫キャベツを使った冷やし中華作りを考えたそうだ。そのとき、家庭科の要素も多いと感じ、コラボレーションすることにしたという。

 保健体育と組み合わせて、タバコの害が分かる実験を行った年もある。教科横断型授業の数はまだ少ないが、今後も他教科とのコラボレーションを継続するという。人工衛星の太陽電池パネルにも使われている「ミウラ折り」を数学的に考察する授業も検討中だ。「他教科と合わせて学ぶことで、さまざまな現象を多角的に捉えられるようになるのでは」と井上先生は期待している。

正解が一つに決まらない問題で思考力を鍛える

「実験を通して早いうちに理科の楽しさを知ってほしい」と話す井上結花先生
「実験を通して早いうちに理科の楽しさを知ってほしい」と話す井上結花先生

 「理科実験」では、新聞紙を使ったより高いタワー作りや、生卵を割らずに2階の高さから落とす装置作りなど、さまざまな答えが考えられる課題にも挑戦する。「正解は一つだけだと思っている生徒が多いので、現実社会では答えは一つとは限らないと教えたい」と井上先生は話す。

 生卵を落とす実験は、生卵の代わりに粘土を使った予備実験も行い、2週にわたって実施する。「すぐに正解を知りたがる生徒にも、まずは何の手掛かりも与えずに自力で考えさせます。2週にわたって取り組むため、成功した時の喜びようは尋常じゃありません」こうした実験では、まずうまくいかないのが普通だという。「失敗から多くを学べるし、思考力が鍛えられます」

 「理科実験」は年々行うたびに内容を改良しており、生徒たちの姿勢も徐々に変わってきたそうだ。たとえば自由研究でも「インターネット動画やテレビばかりを参考にするのでなく、『理科実験』でやった内容を応用したり、オリジナルの実験を考案したりする生徒が増えています」。

 昨年は「科学の甲子園ジュニア千葉県大会」で、中2の女子チームが理科の実技競技で優勝した。学校でも「理科実験」の授業が待ちきれず、直前の休み時間に走って内容を聞きに来る生徒もいるという。「理科は苦手だけど、理科実験の授業は楽しい」「少し理科に興味を持てた」「これからは理科の授業を頑張ってみる」といった声も聞かれるそうだ。「その意欲を維持して勉強に取り組み、理系の進路を選ぶ生徒が増えればうれしい」。井上先生たちは今、生徒たちが理科実験を楽しんでいることを強く実感している。

 (文:佐々木志野 写真:中学受験サポート 一部写真提供:専修大学松戸中学校・高等学校)

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