「灘中生らしさ」を探す旅の出発点…入学式

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 関西の名門・灘中学校高等学校(神戸市)で4月8日、入学式が行われた。新入生185人を待っているのは、校則のない環境で、自分たちが主役を務める自由な6年間だ。自ら考え、自律的に行動する生徒を育てるうえでキーワードとなるのは「灘中生らしさ」。入学式の様子を通じ、ユニークな校風の一端を紹介する。

講堂を埋める「小さな紳士たち」

正門には新入生を出迎えるように桜が咲いていた
正門には新入生を出迎えるように桜が咲いていた

 「合格して選ばれ、入学できたが、合格した者とそうでない者の能力の差は紙一重。もう一回、試験をすれば、この場にいる何十人かの生徒が入れ替わるであろう。灘校で勉強したかった人たちのためにも、精いっぱい充実した時間を送ってほしい」

 入学式のあいさつで和田孫博校長がこう呼びかけると、講堂を埋める新入生たちは、一様に表情を引き締め、言葉の重みを受け止めていた。灘校の「狭き門」をくぐるというのは、こういうことなのだ。

 入学式が行われた4月8日、校旗が掲げられた正門前に到着すると、小雨に打たれながらも桜の花が新入生を祝うように咲いていた。

 入学式は正門正面にある本館2階大講堂で行われる。この本館は1928年に完成した学校創立当時からの洋風建築で、2001年に国の登録有形文化財に指定された。鉄筋コンクリート造りだが、石積みを思わせる横目地の外壁デザインや、(とが)りアーチ状の飾り枠がついた縦長窓が風格を醸し出している。見とれながらも玄関ポーチをくぐって階段を上がり、入学式会場へ急いだ。

 講堂に用意された保護者席は既にいっぱいだった。祖父母らしい姿も多く交じり、後ろの方には立って参列する保護者らもいた。

名前を呼ばれ、元気よく返事をして起立する新入生
名前を呼ばれ、元気よく返事をして起立する新入生

 やがて入場が告げられると、保護者から拍手が湧き起こり、すぐに新入生たちがクラスごとに入場してきた。同校は制服の指定がないので、新入生たちの服装はとりどりだが、ほとんどがスーツ姿。ニットベストにネクタイという生徒もいて、さながら「小さな紳士たち」だ。首を伸ばしてわが子を探し、カメラに収めようとする保護者らも、ほとんどがフォーマルスーツで、和服姿の母親もちらほら見えた。服装については学校から、わざわざ新たに用意することはないと説明があったというが、厳しい受験競争を勝ち抜いて迎えたこの日、親も子も晴れの姿で臨みたいのは無理もない。

 新入生が全員着席すると、会場内はいったん静まり、厳かな雰囲気のなか入学式の開始が告げられた。大森秀治教頭が入学者の氏名を次々と呼び上げていく。緊張の表情で待っていた新入生たちは、自分の名前を聞くと元気良く返事をし、起立していった。

 新入生は185人。今年で75回生となる。全員の氏名点呼が終わると、和田校長は「入学を許可する」と力強く宣言した。生徒たちの表情が思わず緩む。これで正真正銘の灘中生である。見守る保護者たちも感慨深げだった。

二つの校是と灘中生らしさ

灘中学高等学校第8代校長の和田孫博氏
灘中学高等学校第8代校長の和田孫博氏

 続いて、和田校長らの式辞があった。式場となった講堂には、同校創立期の顧問を務めた講道館柔道の創始者、嘉納治五郎直筆の校是「精力善用」「自他共栄」の書が掲げられている。和田校長は、この二つの言葉の意味に触れながら、灘中生のありかたについて話した。

 「灘校には校則はないが、灘中生らしくという枠はある。先生の話をよく聞き、先輩の様子をよく見て灘中生らしく行動しよう。『精力善用』は、自分の力を知って発揮することだ。自分の行動を自分自身で点検しよう」

 「新しい環境で新しい出会いを通じ、新しい友達ができるが、内輪だけで仲良くし、外を排除するようなことをしてはならない。『自他共栄』とは、他人と協調して生きることだ。この校訓に反することなく、学校内外の人と仲良くしていこう」

 また、保護者に向けても一言あった。「灘校は生徒が主役の学校。教員、保護者は、子どもの先回りをするのでなく、自分のことは自分の責任でできるよう促す。家庭でも自立が進むよう努めてほしい」

 受験生と保護者は二人三脚で懸命に入試を乗り越えてきたが、そこがゴールではない。灘中生にふさわしい姿勢を身につけるために、新たな自覚と努力の日々が始まるのだ。

生徒と6年間一体の「担任団」

 式辞の後で、中1の担任団の紹介が行われた。担任団は、灘校の特徴的な仕組みだ。同校の1学年は4クラスで構成され、中1では各クラスに2人の担任が付く。計8人の先生で構成する担任団は、生徒の進級と一緒に学年を繰り上がっていく。

 もちろん、他教科の先生の指導も受けるが、生活指導などは担任団が受け持つ。中学入学から高校卒業までの6年間、担任団は生徒と一体だ。灘校が「中高6年完全一貫教育」というとき、「完全」というのは、この担任団制度の存在が大きな理由となっている。

 担任団一人一人の紹介が済むと、和田校長から「困ったことや相談したいことがあれば、クラス担任だけでなく学年の担任団のどの先生に声をかけてもよい。それは、生徒だけでなく保護者の方もそうです」と補足があった。保護者たちは、記憶に刻むように8人の先生全員に視線を向けていた。

新入生への三つのアドバイス

指導部の石木実教諭が新生活における注意を伝えた
指導部の石木実教諭が新生活における注意を伝えた

 続いて指導部の石木実教諭が、新しい学校生活について三つのアドバイスをした。まず、「家で過ごす時間より学校で過ごす時間の方が長いので、先生の話をよく聞いて行動する。個性の強い先生がたくさんいるので、楽しみにしてほしい」。

 続いて、「びっくりするような活躍をする先輩がいる。運動部、文化部など40以上ある。すべて生徒が中心で、生徒がリーダーシップを発揮している活動だ。見にいって憧れの先輩を探そう」。

 そして最後に、「自分がされたら嫌なことはしない。高校生になると問題はほとんど起きない。中1、中2によるSNSやLINEでの発言がほとんどだ。この文を読んだら嫌だなと思うことは流さない」と締めくくった。

 印象的だったのは、登下校時の注意として「学校の近所で万一、体やカバンが通行人にあたることがあったら、素直にすぐに謝ること。そうすれば灘校は素晴らしい学校だと褒めてもらえる。遠くの人には良い学校だと褒めていただくが、最近は近隣のみなさんにも灘校は素晴らしいと褒めていただいている」と石木教諭が話したことだった。

 灘校は校則がなく、自由な学校として知られている。その代わり、生徒たちは問題が生じる都度、立ち止まって考え、行動することが求められる。登下校一つとっても、求められているのはトラブルを恐れて身を縮めることより、それを積極的な評価のチャンスに変えてしまうような行動だ。同校は、勇気を持って自立していく生徒たちを、先生が先輩が見守ってくれる、そんな学校でもある。

 (文と写真:水崎真智子)

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199043 0 灘中学校高等学校 2017/05/31 05:20:00 2017/05/31 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20170529-OYT8I50093-T.jpg?type=thumbnail

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