子供の能力は褒めてこそ伸びる…開成・柳沢校長の教育論

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

東大生の82パーセントは褒めて育てられている

 以前、東大生184人を対象に「賢い子が育った家庭の中身」というアンケートの監修をしたことがあります。たとえば、「親は自分の話を聞いてくれましたか」という問いに対し、9割以上の東大生がYESと答えています。また、「よく褒めてくれましたか」という質問では、82パーセントの東大生がYESと答えています。

 つまり、褒めて育てられた子が伸びるというのは、ある程度説得力があると考えてよいのではないでしょうか。

自信に満ちあふれたアメリカの学生

 私は37歳のとき、ハーバード大学に呼ばれ、家族を伴って渡米しました。つまり、アメリカ人に囲まれた環境で仕事をし、子育てをしたのです。アメリカの学生や子供たちを見てまず驚いたのが、彼らがみな自信に満ちあふれていることでした。彼らは授業の際、積極的に発言します。たとえその答えが間違っていようが、自信満々です。一方、日本人の子供はどうでしょう。小学校低学年くらいでは「ハイ! ハイ!」と手を挙げますが、学年が上がるに比例して、どんどん静かに、消極的になっていきます。

 この違いはなぜか。それは、褒められて育ったか否かなのです。誰だって、叱られるより褒められた方が気分がいいですし、頑張ろうという気持ちになります。子供だったらなおさらでしょう。しかし、日本の親御さんたちは褒めることには消極的で、むしろ「どうやって叱ったらいいか」ばかりを考えている気がします。

 それは、「褒めることは甘やかすことだ」と誤解しているからでしょう。

褒めることで子供は伸びる

「叱って伝えるか、褒めて伝えるかで、その子の将来には大きな差が出る」と語る柳沢校長
「叱って伝えるか、褒めて伝えるかで、その子の将来には大きな差が出る」と語る柳沢校長

 たとえば、子供の音読を親が聞くというシーンで、「ちょっと声が小さいな」と感じたとしましょう。そのとき、「ダメダメ、もっと大きな声を出しなさい」と、否定的な言葉で伝えるのと、「上手に読めたね。もう少し大きな声で読むと、もっと良くなるよ」と褒めるのでは、どうでしょう。どちらも、「大きな声で読んだ方が良い」という親からのアドバイスですが、受け手である子供の気持ちはまるで違うはずです。

 ダメと言われれば自信をなくしますし、たとえ次に頑張ったとしても、それは叱られないためなので、モチベーションは消極的です。しかし、上手に読めたと褒められた子供はうれしくなり、もっと褒められたいとさらに頑張るでしょう。それは、積極的な子供の意思です。音読自体が楽しくなってどんどん実力をつけていくかもしれません。

 つまり、伝える内容は同じであっても、叱って伝えるか、褒めて伝えるかで、その子の将来には大きな差がでてしまうのです。

褒めることは親の価値観を伝えること

 また、褒めることは子供のモチベーションを上げるだけでなく、親の価値観を伝えるという、大切な役割を担っています。

 たとえば、子供が家の手伝いを率先してやってくれたとき、「ありがとう。お母さん忙しかったから、本当に助かった。進んでお手伝いしてくれるなんて、偉いね」と伝えたとしましょう。それは、「進んで家族の手伝いをするのは良いことである」という親の価値観です。また、「惜しくも優勝は逃したけれど、毎日本当によく頑張ったね。その努力は宝物だと思うよ」と伝えれば、それは、「結果よりも大切なことがある。努力は尊い」という親の価値観を伝えるのと同じなのです。

 口で、「進んで手伝いをしなさい」「目標に向かって努力しなさい」と言って聞かせるよりも、褒めて伝えた方が子供の心に響きます。

 しかし、注意しなくてはならない点もあります。たとえば、「いつも100点で偉いね」という褒め方は、ともすると「100点さえ取れていればいい」「100点以外はだめだ」という価値観になりかねません。少し工夫をして、「いつも100点をとるなんて、なかなかできないよ。頑張っているね」という言い方なら、褒めるポイントが結果ではなく過程の部分なので、子供の意欲を上手に育て、親の価値観をまっすぐに伝えることができるのです。

叱るというより、「課題を出す」という考え

 子育ての中で叱ることをゼロにはできません。子供たちは日々、とんでもないことをやらかしますから、必要に応じて毅然(きぜん)と叱らねばならない時もあるでしょう。また、いかに褒めるのが良いことであっても、褒めっ放しではせっかくやる気を出した子供を放っておくことになります。

 そこで、「課題を与える」のが、親の大切な役割になります。たとえば、水泳を始めたとき、まずは水に顔をつけられたら、「上手に顔をつけられたね」と褒めます。それと同時に、時期を見て「今度は水の中で目を開けてみようか」と、課題を与え、成長を促します。それができたら褒めて、また折を見て次の段階へ、というようなリズムができあがると、子供は自信をつけていくため、ものごとに積極的に取り組むようになります。

 ただし、忘れてはいけないのが、「子育てを急ぎすぎない」ことです。水に顔をつけられるようになったら、すぐ目を開ける、目が開けられたら今度は、体を浮かせて前に進んでみるなど、次々に課題を与えるのは性急です。急がせすぎてうまくいかないと、子供は自信をなくしてしまうからです。

 なかなかうまくいかない時も、あせらずその子のリズムに合わせてやるのが「課題を出す」上で大事なことです。

指示待ち人間は大人が作る

 子供を大切に育てるあまり、何かと禁止事項を増やす親御さんがいます。やる前から「あれはやめておいたほうがいい」「それは危ないからダメ」と進路を絶ってしまうのです。そうすると、子供は親に禁止されない方法を探しますが、ある時気付くのです。「そうか、ダメだと言われないためには、親が言うことだけをやればいいんだ」と。これが、指示待ち人間です。

 また、失敗がいけないことだという価値観の下に育つと、子供はリスクの低いことだけを選ぶようになります。結果として、失敗は少ないかもしれませんが、頑張って乗り越える達成感も得られないため、自信がつかず、自己肯定感の低い子供になってしまいます。

 子供にとって失敗や挫折は成長のチャンス。必要以上に親は手を出さず、安全に配慮しながら見守る気持ちが大切なのです。

無断転載禁止
923520 0 トピックス 2019/11/29 09:31:00 2019/11/29 09:31:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191128-OYT8I50030-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ