25歳の自分を見据える「ヴァンサンカン・プラン」…東京家政大附

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 東京家政大学附属女子中学校・高等学校(東京都板橋区)は、生徒が25歳になった時の自分を思い描き、その実現を目指すキャリア教育「ヴァンサンカン・プラン」を行っている。学年に合わせて、なりたい自分に近づくために、今の自分を見つめ、目標をかなえる力や人間力を磨くプログラムだ。実際の取り組みと、プログラムを経験した卒業生の今を取材した。

25歳でなりたい自分を思い描き、今すべきことを考える

「家政探検」で校内の施設などを巡る中1の生徒たち
「家政探検」で校内の施設などを巡る中1の生徒たち
「職業研究」を通して「働くこと」について学ぶ中2生たち
「職業研究」を通して「働くこと」について学ぶ中2生たち

 「ヴァンサンカン」は、フランス語で「25歳」を意味する。多くの人が大学を卒業し、社会に出ている年齢だ。「ヴァンサンカン・プラン」は、その25歳になった時に、社会の中でどのように自己実現しているかを想像し、そのために今すべきことを考え、積み重ねていくキャリアプログラムだ。

 高校の総合的学習の一環として15年ほど前にスタートし、現在は中高6年間の中で、学年に合わせたさまざまな探求プログラムを用意している。

 中1では、まず校内の施設や併設する東京家政大学の博物館を巡る「家政探検」を行い、自主自律という建学の精神を肌で学ぶ。それと同時に、自分自身を深く知るために「自分史」の作成に取り組む。

 中2では、ボランティア体験や、働いている身近な人にインタビューする「職業研究」を通して「働くこと」について考える。特に、夏休みに全員が参加するボランティア体験は、働く現場を体感し、社会と関わりを持つ絶好の機会だ。「ボランティア先を探し、申し込むところから生徒が自主的に行います。夏休み前にスケジュールを立て、計画書を作り、体験後はリポートを作成して発表する機会もあります」と、中2の学年主任で入試・広報部の荒籾和成教諭は説明する。

「キャリアゼミ」では大学や学部について学ぶ中3生たち
「キャリアゼミ」では大学や学部について学ぶ中3生たち

 中3では進路を見据え、アクティブ・ラーニングのスタイルで大学や学部について学ぶ「キャリアゼミ」、そして、文化祭での発表を目標に、学部・学科の研究を行う。高校に進むと、東京家政大学と連携した模擬授業や、チームで企業から出された課題に取り組む「企業インターンワーク」など、将来の進路や目標を見据えたプログラムに取り組むという流れだ。

 6年間のプログラムの中で、中2、高1、高3の3回、「25歳の私」をテーマとして作文に取り組む。25歳の時に自分がどうありたいかを想像し、文章にすることで、学ぶことの意味を考え、学習へのモチベーションを高めていくのだという。

「食」をテーマにキャリアを作ってきた卒業生

ウェブサイトを立ち上げ、食と栄養の情報を発信している高橋菜里さん
ウェブサイトを立ち上げ、食と栄養の情報を発信している高橋菜里さん

 こうして描いた未来の自分を、卒業生たちはどのような形で実現しているのだろうか。管理栄養士の資格を持ち、現在、松下政経塾で学ぶ高橋菜里さんに聞いた。

 管理栄養士を目指したきっかけについて、高橋さんは「中2のとき、腹膜炎で1か月ほど入院したことから、健康のための食事の大切さを実感しました。患者さんによって出される食事が違うこと、また、回復するにつれて食事が変わっていくことを体験し、病院食というのは人に寄り添う仕事だと感じたんです」と振り返る。

 「栄養学を学びたい」と、共学の中学から東京家政大附属高校へ進学した。高1と高3の時に書いた「25歳の私」では、「とにかく仕事にバリバリ打ち込んでいる姿を描いていました」と話す。

 ただ、ヴァンサンカン・プランに取り組む中で、一時は進路について迷ったこともあったそうだ。「他の道をいろいろ知るうちに、『自分は本当に管理栄養士になりたいのだろうか』と。外部進学を考えた時期もありましたが、悩んだ末、やはり管理栄養士を目指そうと家政大に進学を決めました。『25歳の私』を書き、読み返すことで、自分の原点に帰りつつ、将来を考えることができました。いろんな将来の選択肢が見えたことが、結果的によかったと思います」

 高橋さんは大学2年のとき、東日本大震災を経験した。サークル活動で、宮城や新潟でのボランティアに参加した。

 「その時に、アレルギーのため救援物資を食べられない子供や患者さんがとても多いことを知ったんです。『支援していただいているのに、アレルギーで食べられないなんて言えない』と悩んでいました。アレルギー問題の現状を知り、衝撃を受けました」

 この経験をきっかけに、大学4年のとき、食物アレルギー対策や安全な食を考えるNPO法人を設立した。25歳の頃は、全国の大学が開発した食品を一堂に集めたイベントや、小学校での食育授業など、まさに自分がやりたかった食の活動に取り組んでいた。

 さまざまな活動に携わる中で、一つの大きな課題が見えてきた。「アレルギーなど食の問題を解決するには、現場だけでなく、政治や法律による制度の整備が不可欠」。そう痛感した高橋さんは政治・経済を学び直したいと思い、松下政経塾の門をたたいた。

 「25歳という年齢は一つの区切り。大学院に進んでいる人もいれば、転職を考える人、結婚して育児をしている人もいます。今思うと、高校時代に描いていた将来像も考え方も、人によってさまざまでしたね」

「ヴァンサンカン・プラン」の取り組みについて話す荒籾和成教諭
「ヴァンサンカン・プラン」の取り組みについて話す荒籾和成教諭

 荒籾教諭は、「一般的には4年制大学を出て3年たち、いろんな選択肢が出てくる年齢です。仕事に対してやりがいが出てくる人もいれば、次のステップを考える人もいます。25歳はゴールではなく、次を考えるスタートにもなるのだと思います」と話す。

 高橋さんは、現在28歳だ。今の自分について、「ヴァンサンカン・プランや、大学での学び、多くの体験が、すべて今につながっています。今でも、先を見越してプランを考え、そうありたいか、何をすればいいかを考える習慣が身に付いていますね」と語った。

 取材に訪れたのは6月24日。高橋さんは5月1日に、食と栄養の情報を発信するウェブサイト「しょくすり」を立ち上げたばかりだった。「食事は一番のくすりになる」をコンセプトに、食事の改善による健康作りを啓蒙(けいもう)していくのが目的だという。

 「一目で、食材とその栄養、選び方、食べ方、保存方法が伝わるよう工夫しています。まだ立ち上げたばかりですが、ウェブやSNSを通して広く発信し、健康を守るための食生活に役立ててほしいと願っています」

自立した女性が育つ女子校という環境

 高橋さんは、在学中を振り返ってこう話す。「男女共学の学校にありがちな女子のグループ化や、ぎすぎすした空気はむしろなかったですね。女性だけなので素のままの自分でいられましたし、いろんなタイプの子がいるので、必ず自分の居場所が見つけられるのも家政の良さだと思います」

 荒籾教諭も、「自主自律は家政の建学の精神。学校生活やイベントなどで、共学なら男子が受け持つ役割も女子が担うので、本当の意味で自立した女性が育つ環境だと思います」と力を込めた。

 国が女性の社会進出を推進している現在は、女性の自立とは何かが問われる時代だ。自分の課題を見つけて一歩ずつ進んできた高橋さんに、今後の目標を聞いた。

 「政治家になって食の問題に携わりたいと考えた時もありましたが、今はむしろ法律を現場から変えていかなければならないと思っています。食に携わる側から、いろんな問題について提言できる人材になりたいですね」

 さまざまな活動にチャレンジする中でも、高橋さんはぶれずに「食」という視点から社会と自分を見つめてきた。その土台作りに、同校のヴァンサンカン・プランが役立ってきたのは間違いないことだろう。

 (文・石井りえ 一部写真提供:東京家政大学附属女子中学校・高等学校)

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851744 0 東京家政大学附属女子中学校・高等学校 2019/10/21 05:21:00 2019/10/21 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191018-OYT8I50009-T.jpg?type=thumbnail

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