自然科学のリテラシーを養う理数教育…成城学園

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 成城学園中学校高等学校(東京都世田谷区)は、大学で専攻する学問や社会人としての教養の土台となる理数教育に力を入れている。実験と観察を重視する体験型の授業から、リポート課題を通して高度な思考力・表現力を求める授業まで段階的にレベルアップするカリキュラムで、文系進学者にも特別な授業が用意される。こうした理数教育の狙いや特色について理科担当の網干守教諭に聞いた。

実験と観察を重視する理科、どの科目でもリポート課題

実験・観察を重視している中学の理科教育
実験・観察を重視している中学の理科教育

 同校校舎には八つの理科実験室からなる「サイエンスゾーン」がある。5台のドラフトチャンバー(局所排気装置)も備えるなど研究所並みの本格的な施設だ。このうち4室が中学用で、すべての生徒が実験に参加できるよう、設備や器具を充実させている。ここを拠点とする中学の理科教育では、3年間の授業の約半分が実験・観察にあてられる。

 「理科教育については、まずは生徒の興味関心を促し、発達に応じて基礎から応用へと学びを深めていくことが大切です」と、理科を担当する網干守教諭は話す。特に中学生になったばかりの時期は、原理や法則といった抽象的な学習内容を難しく感じやすいことから、実験や観察からアプローチする理科の授業が有効だという。

 さらに、実験と観察にあたっては広く事例にあたることが大切だという。例えば生物の実験では、動物から植物まで幅広い対象を取り扱う。「実験材料の準備は、外来生物の使用の制限などがあり、苦労していますが、中学校の段階では生徒が実際にさまざまな動植物を見て触れて学ぶことが大切だと思います」

 実験と観察を重視する授業に対する生徒の反応について、網干教諭は「どの生徒も、器具の操作や観察、実験の結果の議論について積極的です」と話す。クラス全体で学び合う雰囲気もあり、おもりを使った実験の時に、先に成功したグループの生徒が、できなかったグループの生徒をフォローする姿もあったそうだ。

 女子生徒の中にも、こうした体験型の授業で理科の面白さに目覚め、理工系大学への進学を志望する生徒は少なくないという。「本校の女子生徒は、理科の実験に積極的な生徒が多いです。高校の理系コースの男女比率が半々になるのは、本校の特徴だと思います」と網干教諭は話す。

「火山灰の鉱物を調べる」というテーマで高3生が取り組んだ地学の課題リポート
「火山灰の鉱物を調べる」というテーマで高3生が取り組んだ地学の課題リポート

 同校の理科の授業では、生徒の将来を見据え、どの科目でもリポートの提出を課している。リポートや論文の作成は、論理的思考力や表現力の養成に役立ち、大学での学びや社会に出てからのキャリア形成にも好影響を与えるからだ。

 例えば、「火山灰の鉱物を調べる」という授業は、中学校の理科と高校3年の地学でそれぞれ行われ、国内各地から集めた火山灰を観察させてリポートを提出させる。

 この授業では、元となるマグマの違いによって性質が異なる4種類の火山灰を顕微鏡で観察する。中学校の授業では、観察後、用意されたプリントを埋める形で観察結果を書き込むだけのリポートだが、高3ではリポートの書き方も高度化する。顕微鏡の接眼レンズにスマホのカメラを近づけてサンプルを撮影し、その画像を活用しながら観察結果と考察をリポート用紙にまとめるなどしていく。

 このリポート作成を通して、学びへの意欲と自信を高める生徒もいるという。「ペーパーテストの成績が良くない生徒が、正しい観察力と考察力を発揮して質の良いリポートをまとめ、教員から高い評価を得ることがあります」

 網干教諭によると、同校の卒業生は、大学に進学後、リポートを課されても苦にならないそうだ。中学高校を通してリポート作成を学んでいることのメリットと言える。

大学の人文・社会科学系の学びを見据えた理数教育

理科を担当する網干守教諭
理科を担当する網干守教諭

 高3の文系コースでは、6年前から成城大学の人文・社会科学系の学部に進学する生徒を対象に、学校設定科目として数学に「総合特講」という科目を設けた。

 この科目は、高1の数学1、数学A、数学2、数学Bの4科目の中から、大学の経済学や法学、統計を扱う社会学などを理解する上で必要とされる単元を中心に構成されている。経済学のデータ解析や社会学の統計学の科目では数学の素養が必須であり、法学でも、法理論の理解には数学的な思考力が必要になるからだ。

 網干教諭によると、数学の「総合特講」の教育効果は成城大学の教員にも歓迎されているという。「本校から進学した卒業生は、『他の学生に比べて、パソコンを利用した統計にすぐに慣れるようです』と高く評価されるようになりました」。今後も成城大学と連携して、人文・社会科学系の学部志望者に有効な数学教育について検討していく方針だ。

 数学だけでなく理科でも、文系志望の生徒に基礎的な科学の教養を身に付けてもらうために「科学基礎」という科目を設けている。

 対象は進学先が決定した高3生で、授業は3学期に実施される。「科学基礎」の内容は化学、物理、生物の3科目から構成され、授業時間はそれぞれ3コマずつ。化学の授業を例に取ると、1コマ目は、人類学と理科の学びをテーマとした講義。例えば「燃焼」が、人間の営みと社会の発展にどのように影響したかを学ぶ。

 2コマ目は、自然科学にまつわる時事問題をテーマに対話形式で行われる。例えば1986年のチェルノブイリ原発事故について、医学や化学の観点から人体への影響を考えたり、政治学の観点から関係国のロシアやヨーロッパ諸国の対応を検討したりする。

 3コマ目は、研究テーマが三つ示され、生徒は一つを選択して自分の考えをノートに書き込むというものだ。

 「自然科学に関するニュースは、高校の教科書程度の知識が情報リテラシーとしての武器になります。言い換えれば、その程度の知識がないと情報を正しく読み取れないのです」と網干教諭は話す。「この『科学基礎』の授業を通して、高校までに学んだ理科が身近な生活や社会の課題に密接につながっていることに気付いてほしいです」

質問しやすい雰囲気が生徒の学力を支える

 網干教諭によると、こうした大学受験対策にとらわれず、将来の役に立つ理数教育が可能なのは、同校の校風のおかげだという。「本校では中学校から高1までの4年間、毎年クラス替えをしており、いろいろな教員とのかかわりや生徒同士の情報交換ができています。それだけ生徒同士の仲がよく、生徒と教員の距離も近いのです」

 このため、同校では中高を問わず、生徒は自分が教わっていない教員にも気軽に質問できる雰囲気があるという。空いている実験室など校内のいたるところで、生徒と教員が1対1で話している光景が見られるそうだ。

 これからの時代は、理系文系を問わず、一定の理数系の教養が求められる。本物に触れる観察・実験から、思考力と表現力を磨くリポート作成に進む同校の理数教育は、きっと生徒の将来を支えるものとなるだろう。

 (文・写真:三井綾子)

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888700 0 成城学園中学校高等学校 2019/11/12 05:22:00 2019/11/12 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191108-OYT8I50050-T.jpg?type=thumbnail

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