沖縄「留学」で高1全員の海外留学に備え…武蔵野

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 武蔵野中学高等学校(東京都北区)は、今年度から、高校1年生のニュージーランド留学を全員参加とした。この助走となるように、中3生向けに沖縄で「クロス・カルチュラル・プログラム」と呼ぶ国内留学プログラムを準備し、同校の教育理念である「他者理解」と英語教育を実践している。7月28日に行われた中学校説明会で、中学3年生が体験内容や成果を報告した。

「国内留学」で海外留学への不安を軽減

 7月28日に行われた中学校説明会は、台風の接近で前日まで開催が危ぶまれたが、説明会には約30組の親子が参加し、教育理念の説明や生徒たちによる活動報告に耳を傾けた。その活動報告の中で、中3生から同校独自の「クロス・カルチュラル・プログラム」についての報告があった。

ニュージーランド留学との連携について語る浅見副校長
ニュージーランド留学との連携について語る浅見副校長

 今年度で2回目となる「クロス・カルチュラル・プログラム」は、沖縄で実施する中学3年生を対象とした4泊5日の異文化体験プログラムだ。前半の2泊は宮古島の日本人家庭に、後半の2泊は沖縄本島の外国人家庭に滞在する。宮古島での民泊を通して、他者への気遣いを学ぶとともに、沖縄の伝統、文化に触れる。また、外国人家庭では、英語でコミュニケーションしながら、英語を話したいというモチベーションを高める狙いがある。このプログラムは中学の修学旅行も兼ねていて、2年目となる今年は6月18~22日に行われた。

 このプログロムは同校が行っている高1対象の3か月間のニュージーランド留学と連携している。ニュージーランド留学はこれまで希望者だけが対象だったが今年度から、内部進学生の全員参加に踏み切った。「生徒の多くが留学に興味を持っているのに、実際に参加するのは帰国子女や英語の得意な子ばかり。なかなか勇気を出せない生徒を後押しするために、全員参加に踏み切りました」と浅見尚次郎副校長は明かす。

クロス・カルチュラル・プログラムについて報告する生徒たち(左端)
クロス・カルチュラル・プログラムについて報告する生徒たち(左端)

 全員参加となると、英語でのコミュニケーションに自信のない生徒もいる。生徒や保護者の不安を和らげるために、まず「国内留学」させ、ストレスの少ない環境で海外生活を疑似体験させようと、考案したのがこのプログラムだ。

 ニュージーランド留学への助走とするため、プログラムの内容はハードルを低めに設定し、段階を踏むことを重視した。そのため、まずは日本語が通じる宮古島で初めて会う人たちとの生活に慣れてもらい、その後に英語でのコミュニケーションが必要な外国人家庭で過ごす構成をとった。ニュージーランドでは1家庭に1人がホームステイをするが、このプログラムでは1家庭に複数の生徒が滞在するのでさらに安心感が高い。

親切にされることで「他者理解」の意味を知る

 「クロス・カルチュラル・プログラム」は、同校が創立以来100年近い歴史の中で教育理念として掲げている「他者理解」を実践する場でもある。

 「他者理解」とは、相手の立場に立って考え、行動することだという。観光業や農業・漁業を生業とする人が多い沖縄は、自然との距離感や生活スタイルなど、生徒たちが暮らす東京近郊とは大きく異なる。そこで、相手の立場で物事を考えるという中学での学びを実践するのにふさわしい土地だと判断した。また、同校は1972年の本土復帰前から毎年、高校の修学旅行で訪れている縁もあったという。

 「他者理解」は、生徒たちが現地の人々を理解することだけでなく、自分たちが理解されることをも意味する。沖縄本島でも宮古島でも、滞在先では自分たちと違った考えや価値観を持った生徒たちを理解し、受け入れようと努める現地の大人たちと接することになる。「その姿勢の尊さを肌で感じることが大切です。普段から親御さんがやっていることですが、身近な人だと気付きにくいもの。慣れない土地で他人の優しさに触れて、初めて親御さんの思いやりに気付く生徒も多い。親御さんや友だちへの理解を深めるきっかけにもなるはず」と浅見副校長は話す。

 円滑なコミュニケーションに語学力が欠かせないのはもちろんだが、相手の気持ちや価値観を尊重する姿勢があれば、語学力の不足を補うことができる。同校は、このプログラムによって姿勢の重要さを理解すれば、より積極的な気持ちで留学に臨めるものと考えている。

体験を通じた学びが生徒の成長の糧に

 中学3年生を代表して「クロス・カルチュラル・プログラム」について報告した2人の生徒に話を聞いた。

ニュージーランド留学を楽しむ生徒たち
ニュージーランド留学を楽しむ生徒たち

 3年B組の英真実さんは、宮古島で8人の大家族にお世話になった。美しい海を眺めたり、地元のお菓子「サーターアンダーギー」を作ったりして楽しく過ごした。最初は、0~8歳の子供が4人もいることに戸惑い、接し方が分からなくて困ったというが、それも徐々に慣れたという。「ニュージーランドのホームステイ先に小さな子がいても平気」と話す。

 沖縄本島ではインド人の家庭に滞在した。インターナショナルスクールに通う高校生の娘さんに校内を案内してもらった。外国人教師によるオールイングリッシュの授業「LTE(Learning Through English)」で学んだ英会話が通じたことがうれしかったという。相手の言葉が聴き取れなくて悩んだこともあったというが、「来年の留学までに英語力を磨いて、もっとスムーズに会話できるようになりたい」と話していた。

 語学以外でも学んだことがあった。一緒に滞在していた同級生が、朝食時に出された牛乳を飲めずに残したことがあった。同級生に悪気はなかったが、ホストマザーの悲しそうな表情に胸が痛んだ。「食べ物の好き嫌いなど必要なことは、言いにくくても最初に言わないといけないと思った」という。

 3年B組の兒嶋きらさんは、宮古島で老夫婦が2人で暮らす家に滞在した。雄大な自然にも驚いたが、それ以上だったのは島の人たちの親密な付き合いだったという。近所の人はみな顔見知りで、家の鍵をかけない。一声かけるだけで家に入って来るおじさんがいたり、畑でマンゴーをもらったりすることもあった。「その場で皮をむいて食べたもぎたてのマンゴーは、めちゃくちゃおいしかったです」

 沖縄本島のホストファミリーは、米国人男性とフィリピン人女性の夫婦だった。フィリピン人の留学生もいて、英語を教えてくれた。観光名所の「アメリカンビレッジ」へ出かけ、家ではカードゲームなどを楽しんだ。「普段、英語で話すのはLTEの先生だけだから、初めて会う外国の人と話すだけでも新鮮だった。最初は不安だったが、聞き返せばゆっくり言い直してくれたし、私の(つたな)い英語も一生懸命理解しようとしてくれて感動した」という。

 兒嶋さんは「リスニングは比較的できたが、スピーキングが思うようにできなかった」と反省も交え、「ニュージーランド留学までにスピーキングの力を磨くつもり」と話した。

 2人とも「お世話になった沖縄の人たちの思いやりを見習いたい」と話していた。体験を通して学んだことが、心に深く刻まれたようだ。

 (文・写真:佐々木志野 一部写真:武蔵野中学高等学校提供)

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45081 0 武蔵野中学高等学校 2018/10/18 05:20:00 2018/10/18 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181015-OYT8I50018-T.jpg?type=thumbnail

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