潜在能力に注目「アクティブ入試」新設…武蔵野

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 武蔵野中学高等学校(東京都北区)は今春、教科以外の活動にいかに取り組んだかを評価する「アクティブ入試」を新設した。受験者に得意分野をアピールさせ、伸びしろを見極める入試だ。この新入試の背景には、生徒一人一人の個性を大切にし、潜在的な力を伸ばそうとする同校の教育方針がある。新入試で今春入学した生徒や、生徒の個別指導を担当する卒業生チューターらの話から検証していく。

頑張ってきたことを生かせるアクティブ入試

「アクティブ入試」について説明する浅見尚次郎副校長
「アクティブ入試」について説明する浅見尚次郎副校長

 新設された「アクティブ入試」は、小学校時代に力を入れて取り組んだことを書く「アクティブシート」と面接、国語あるいは算数の筆記試験から成る。既存の「4科入試」「2科入試」とは違い、教科以外の得意分野を生かせるのが特徴だ。学力試験だけでは見極めにくい潜在能力を評価し、豊かな伸びしろを持つ生徒に来てほしいと考えて導入した。浅見尚次郎副校長は「一つのことに打ち込める子は、きっかけさえあれば他の分野でも力を発揮できるはずですから」と説明する。

 取り組んできた活動の分野は問わない。バレエでも空手でも英会話でもいい。成果や成績にかかわらず、取り組んできた中で自身がどう成長したかを伝えられるかどうかが評価のポイントだという。「自分が頑張ってきたことを、失敗も含めてきちんと振り返られる子は、その後も自信を持って続けていけるものです」

 この入試を突破して入学した中1の男子生徒は、5歳から続けている競泳にいかに力を入れてきたかをアピールした。母親から「これまで頑張ってきたことを生かせる試験」と聞いて、自分向きだと思ったという。筆記試験が、自分の得意な国語1科目で勝負できるのもよかった。受験の時期も塾に通い、スイミングスクールにも通い続けたという。「アクティブ入試じゃなかったら、水泳を休まなければいけなかったかもしれない」

 男子生徒は小学校時代にスイミングスクールの先生に勧められ、バタフライを中心に練習してきた。3年生の後半から4年生の前半にかけてタイムが伸び悩んだが、やめようとは思わなかった。スイミングスクールが終わると市民プールへ行き、さらに練習した。「必ずタイムを上げて、将来は日本代表選手になる」という明確な目標と強い気持ちがあったからだ。

 初めて実施される試験なので過去問などはなかったが、「アクティブシート」を書くのは簡単だったという。大好きな水泳のことなので、すらすら書けた。アクティブシートの内容について掘り下げる15~20分の面接では、入学後の目標に勉強と水泳の両立を挙げ、「電車の中でも勉強するなど、時間を有効に使う」と自分なりに考えた方法を答えた。

 入学後はもちろん水泳部に入部した。スイミングスクールも続けている。当面の目標は、全国中学校水泳競技大会への出場だ。「絶対に出たい」と語る強い口調に、並々ならぬ思いが感じられた。将来の夢はオリンピック出場だという。「そのためにはまず、日本代表選手になること」と明快なビジョンを口にした。

憧れや愛着が理解への情熱を生む

「武蔵野進学情報センター」でチューターを務める田澤有里朱さん
「武蔵野進学情報センター」でチューターを務める田澤有里朱さん

 一人一人の個性に注目し、潜在能力を伸ばそうとする教育は新しい入試ばかりではない。同校の敷地内にある「武蔵野進学情報センター」でチューターとして生徒の個別指導にあたっている立教大学3年生の田澤有里朱(ありす)さんは、海外研修が生徒の「理解したい」という情熱を育み、能力を高めるきっかけになるという。

 生徒にとって年齢が近いチューターは、勉強や進路の相談ができるだけでなく、生活面のことも相談しやすい存在だ。田澤さんは2年前からチューターを務めていて生徒のさまざまな相談を受けるうちに、「好きな人や好きなものへの情熱が、生徒たちの学習意欲を上げる」ということに気付いた。

 例えばK-POPが好きだから韓国語を勉強する、好きな人が留学するから英会話に興味を持つ、というように、強い憧れや愛着が「理解したい」という気持ちを生み、学びを後押しするという。

 海外研修もその一つだ。同校は1999年から海外研修の制度を導入していて、現在は内部進学の高1生が全員参加する3か月間のニュージーランド留学、高1~3生が参加できる2週間のカナダ海外研修及び1週間のフィリピン・セブ島語学研修の3種類のプログラムを用意している。

「セブ島語学研修」に参加した生徒たち
「セブ島語学研修」に参加した生徒たち

 田澤さんは主に特進クラスの高3生4人に対し、毎週マンツーマンで英語を中心に指導している。このうち3人が昨夏、セブ島語学研修に参加したが、研修後、1人の女子生徒が見せた変化に強い印象を受けたという。研修前と比べ、明らかに勉強へのモチベーションが高まっていた。以前は放課後学習を終えるとすぐに帰宅していたが、帰国後は自習室に残って自主的に勉強するようになった。

 その生徒は帰国直後、英語でメッセージが書かれた小瓶を持ってきて、「何て書いてあるか教えてほしい」と聞いてきた。現地で通った学校の教員にもらったものだという。「知らない誰かではなく、お世話になった先生が送ってくれたメッセージだから、内容を知りたくなったんだと思います」。その先生との心の交流が英語学習のモチベーションを上げるきっかけになったのでは、と田澤さんは見ている。

 田澤さんは、生徒たちはそれぞれ集中力もキャパシティーも覚え方も違うという。学力の差ではなく、生徒によって理解の仕方が違うのだ。教える側になって初めて「これが個性というものか」と痛感したそうだ。同校の卒業生でもある田澤さんは、母校の教育理念である「他者理解」の精神を思い起こし、一人一人に合わせた指導に注力しているという。

生徒一人一人に自信の持てる瞬間を作る

「ニュージーランド留学」を経験する生徒たち
「ニュージーランド留学」を経験する生徒たち

 浅見副校長は、海外研修の主な役割について、「自立心を育て、モチベーションや語学力を向上させること」としながらも、「とらわれたイメージから脱するチャンス」という側面を強調する。

 今春、ニュージーランド留学から帰ってきたある男子生徒が、留学前と比べて驚くほど表情が豊かになっていたそうだ。浅見副校長が話してみると、現地の学校で、勉強に真面目に取り組む姿が高く評価され、表彰されたのだという。

 「彼はこれまで内気で寡黙という見方をされることが多かった。別の見方をされて、自分を縛るイメージから解放されたのかもしれません。自分らしく頑張ったことを高く評価され、大きな自信にもなったのでしょう。自己肯定感や自信があれば、卑屈になったり、過剰な苦手意識を抱えたりせずに頑張れる。眠っている力を引き出すためには、まず生徒一人一人に、自信を持つ瞬間を作ってあげることが大事なんです」と浅見副校長は強調する。

 武蔵野中学高等学校には、教師にもチューターを務める卒業生にも、生徒一人一人の個性を大切にし、潜在的な力を伸ばそうとする思いがある。好きなことに取り組んできた情熱や努力を評価する新しい入試の先には、のびのびと学びたい子供たちにとって得難い日々が待っていそうだ。

 (文:佐々木志野 写真:中学受験サポート)

 武蔵野中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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793888 0 武蔵野中学高等学校 2019/09/18 05:21:00 2019/09/18 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190913-OYT8I50006-T.jpg?type=thumbnail

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