【特集】図書館を活用した読書教育で学び続ける力を磨く…昭和秀英

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 昭和学院秀英中学校・高等学校(千葉市)は、図書館を活用した読書教育に独自の取り組みをしている。英語科では図書館に洋書の多読コーナーを設置して、生徒に年100冊を目標に読ませており、国語科では図書館の仕組みそのものの案内を授業に取り込んで、生徒たちの読書意欲を喚起している。両科教員と図書館司書の教諭に読書教育の取り組みを聞いた。

多読コーナーを設け、年100冊読ませる

(左から)染谷教諭、斉藤教諭、鵜澤教諭
(左から)染谷教諭、斉藤教諭、鵜澤教諭

 昭和秀英は創立以来、国語科を中心に「書く」ことに力を入れている。全学年で年に1回は課題に沿った800字以上の文章を書かせており、内容は生活作文から小論文まで多岐にわたる。発想のメモ作りから文章構成の仕方までを丁寧に指導し、提出された作文は国語科の教員が読んで添削する。優秀作は毎年発行する『葦牙(あしかび)』という文集に収録して全校生徒に配布している。

 同校は、こうした「書く教育」と対をなす、「読む教育」にも力を入れており、国語科や英語科が、図書館と連携して積極的な取り組みを行っている。

 英語科の鵜澤菜摘子教諭は、「大学入試の問題も長く複雑になっており、スピーディーに最後まで読み切る力が求められています。大学では英語の論文を読み、英語で論文を書くことも当たり前になっていくでしょう。将来に備え、今英語を読むことを習慣にする意義は大きいと思います」と読書教育の重要性を話す。

 鵜澤教諭によると、英語の本の「多読」は、英語力の向上に有効だという。ただし、ポイントがあって「辞書なしで80%以上理解でき、なおかつ興味のある内容で、楽しく読める本」でなければならないそうだ。

 「そういう洋書を生徒自身で選ぶのは簡単ではありません」と鵜澤教諭は話す。教諭自身、以前から学年にふさわしい図書を探し、折に触れて生徒に案内していたが、なかなか多読にはつながらなかった。そこで、図書館に相談し、生徒が自分のレベルに合わせた英語の図書を選べるようにと、2016年から設けたのが英語の多読コーナーだ。

自分のレベルに合わせた本を選べる洋書の多読コーナー
自分のレベルに合わせた本を選べる洋書の多読コーナー

 鵜澤教諭はこのコーナーを活用して、1年で100冊読むことを目標とした多読指導を行っている。生徒は読み切った本のタイトルと気に入った英文のセンテンスを抜き書きし、その理由をノートにまとめてリポートとして提出する。「教科書で学んだ文法が、ストーリーの中に登場すると、定着につながりますし、ライティングにそのまま使える英語もたくさん含まれています」

 「以前、中3の学年で実施した時は全員が目標を達成することができました。リポートを他クラスの生徒にも読んでもらうようにしたところ、紹介された本を読みあうという活動へと広がっていきました」と鵜澤教諭は話す。

 図書館司書の斉藤真奈美教諭によると、多読コーナーの開設時は、1学年全員が同時に借りても大丈夫なように約200冊を購入したという。「その後も鵜澤先生がアンテナを張って、学習に適した本をリサーチして提案してくれるので、年々図書数が増え、現在は約500冊になります」

 ストーリー性のあるもの、人気の映画タイトルや絵本、科学、料理、ノンフィクションなど、さまざまなジャンルの洋書があり、すべての生徒が興味のある本に出会えるように配慮している。多読用のシリーズ本もあり、7段階の難易度レベルから、生徒は自分のレベルに合わせ、読みたいと思うものを選べる。1冊を読み切ることで達成感や自信が生まれるそうだ。

本を選ぶ主体性が将来、自ら行動する力を育てる

図書館を利用する生徒たち
図書館を利用する生徒たち

 国語科の染谷智恵子教諭は、授業で実際に図書館を訪れ、その仕組みについて生徒に学ばせている。「図書館では知が分類されていること、そして分類そのものも学問であることを感じてほしい。そのために最初に図書館を案内する時は、『歴史は2番にあるよね、芸術美術やスポーツは7番、文学は9番。京都研修旅行の下調べで庭園を調べた時は何番だったかな』というように、本の分類や所蔵についての説明をします」

 生徒たちは、番号によって図書が分類されていることを知り、自分の読みたい本がどの分類に属するのかを意識するようになるという。そこで一通り案内した後は、図書館内を自由に歩かせる。

 「この子は意外に歴史が好きなのだなとか、環境問題に興味があるらしい、といったことが分かり、逆に、行く先が定まらない生徒は興味関心がまだはっきりしていないのだと見て取れます。このように教室では気付けない生徒の一面を垣間見ることができるのも図書館を案内する意味の一つです」

 染谷教諭によると、どの教科の教員も、読解力を身に付けることの重要性を認識しており、国語科としての責任の重さを感じるという。「もちろん大学入試に限らず、より良い生き方を探るという意味からも読書が大事なことは明らかです。リンダ・グラットンの著書『LIFE SHIFT』にもあるように、人生100年時代には生涯学び続けることが求められています。その基礎を築くのは、やはり読書です」

 読解力以前の問題もある。染谷教諭によると今の生徒たちは、例えば「客間」がどんなものかが分からなくなっているという。「文学に描かれている世界が常識として通用しない世代になっているんです」

 そのため染谷教諭は中1の朝自習で、生徒に近代文学を読ませる試みを始めた。「朝自習で紹介した本をきっかけに、図書館で本を選び、知の世界が広がっていくことを期待しています。読書に親しむことは、結局は人生を豊かにしてくれるものだということが伝わるとうれしいですね」。斉藤教諭も「興味関心を掘り下げるために本を主体的に選ぶこと、深く読むこと。それが将来世の中で何かを選び取る力、自分から行動する力を育ててくれると思うのです」と話す。

 5万冊以上の蔵書を誇り、今や読書教育の拠点として大きな役割を担っている図書館だが、毎年新しい本をそろえていく中で、書庫のスペース確保は段々苦しくなってきているという。

 「データ化も一つの解決策ですが、やはり紙の本の味わいは捨てがたいものがあります。せっかく授業で図書館の利用が勧められているので、生徒の広い嗜好(しこう)に応えられるように、文学賞の受賞作や映画化された作品、話題の本なども含め、今後もできる限り、蔵書の裾野を広げていく考えです」と斉藤教諭は語った。

 (文:山口俊成 写真:中学受験サポート 一部写真提供:昭和学院秀英中学校・高等学校)

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1456258 0 昭和学院秀英中学校・高等学校 2020/09/07 05:21:00 2020/10/21 16:31:30 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200904-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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