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【特集】「空き家」問題の探究からSDGsの実践へ…晃華

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 晃華学園中学校高等学校(東京都調布市)は昨年度、地元の調布市と連携し、近年、問題化している「空き家」対策に取り組むプロジェクトに参加した。「ユネスコスクール」として国際理解教育を実践してきた同校が、世界の諸問題を地域の視点から捉え、行動につなげる「ESD(持続可能な社会の発展のための教育)」の新しいステップとして取り組んだという。プロジェクトを指導した教諭と参加した生徒たちの声を聞いた。

身近な地域で活動する良い機会に

国際理解教育を統括する宇野教諭
国際理解教育を統括する宇野教諭

 同校は、中高創立50年目を迎えた2012年に「ユネスコスクール」の認定を受け、地球規模の問題を中高生の立場で考えるさまざまな学習や活動を行ってきた。国際理解教育を統括する宇野幸弘教諭は、「ユネスコ憲章の前文にある『人の心の中に平和の (とりで) を築く』という理念は、本校の教育方針に合致するものです。国際的な視野に立ち、平和を願って行動する若者の育成に貢献したいと考えています」と説明する。

 生徒たちの国際理解が高まるなか、15年の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されると、生徒たちは積極的に活動に取り組み、校内に啓発ポスターを貼ることから始まって、委員会活動や個人の発案によるボランティア活動などにまで活動を広げてきた。18年には、環境省と文部科学省を母体とする「ESD活動支援センター」の地方活動推進拠点に中高一貫校として初めて指定され、外部団体との連携や交流を始めた。

 調布市と連携した空き家問題対策活動は、この支援センターで20年1月に開かれた活動報告会に同校SDGs担当の佐藤駿介教諭が生徒とともに出席し、発表したことがきっかけになった。

 佐藤教諭は、「調布市は空き家対策においては、東京都のモデル事業を展開するなど先進性があります。市の担当者は空き家問題の解決のためには、若い世代に『自分ごと』と感じてもらう必要があると考えていました」と言う。「SDGsの活動は『Think globally,Act locally(世界規模で考え、身近な地域で活動する)』を行動原理としていますが、学校のSDGs活動は知識を広げる『globally』にとどまりがちで、実践面の『locally』がなかなかできていない。そこで今回の連携は大変良い機会だと思いました」

大学教授や企業からのアドバイスに目を開かされる

チームに分かれて、空き家問題対策のアイデアを練る生徒たち
チームに分かれて、空き家問題対策のアイデアを練る生徒たち

 調布市の空き家対策事業は京王電鉄、三井住友信託銀行、LINEなどの民間企業と、共立女子大学、慶応大学が参画しており、同校での学習にも協力してくれることになった。予定では、昨年度当初から参画者とのワークショップや実地視察などを行う計画だったが、新型コロナウイルス感染対策の緊急事態宣言により、同校の校外活動は中止になり、活動開始は6月の休校明けにずれ込んだ。

 登校再開後に参加メンバーを募集したところ、約50人の生徒が集まった。まず、調布市によるオリエンテーションを7月1日に校内で実施し、空き家の問題点や現在の取り組み、課題を学んだ。

 「生徒にとっては、外部の大人が自分たちに事業を依頼しに来たことがインパクトだったようで、意気込みにつながりました」と佐藤教諭は振り返る。その後、5、6人ずつの9グループに分かれ、問題意識を広める方法を考える「普及啓発」班3チームと、空き家活用の方法を考える「まちづくり」班6チームに分かれ、最終プレゼンテーションに向けて、アイデアを練り上げていった。

 8月初めに各チームから企画骨子のプレゼンテーションを受けた佐藤教諭は、「この企画には、『指導』より、生徒が自主性を発揮し、自由に発想しやすくしていくことが重要」と考え、「学びの場づくり」に徹したという。「中高生なので、最初は『自習室を作る』など身近な視点のアイデアに偏りがちです。そこで、特徴ある展開ができそうな部分を見つけ、褒めた上でアイデアの深掘りを促す。例えば、ハザードマップを使いながら防災拠点化のプレゼンをしてきた班には、そのオリジナリティーを伸ばすよう伝えました」

 その後は毎月、大学教授や企業、市の担当者に向けてオンラインなどで中間プレゼンテーションを行い、アドバイスや要望を受けた。市長を経験したことがあるLINEの担当者から類似した取り組みのある自治体の例を紹介されたり、京王電鉄から同社のバス路線の活用法、銀行からはマネタイズ(収益化)など、それぞれの視点からアドバイスをもらったりしたという。

校内のホールで行われた最終プレゼンテーション
校内のホールで行われた最終プレゼンテーション

 特に、マネタイズの発想は多くの生徒にとってハードルとなったそうだ。空き家に新商品の試供品を置き、「広告スペース」とする提案をしたチームの生徒は、「最初は福祉寄りの案を考えましたが、『参与する企業のメリットがない』とのフィードバックを受けて再考を迫られました。SDGsの実践には多面的な視点が必要と分かりました」と漏らした。

 最終プレゼンテーションは今年2月6日、市やアドバイスを行った企業の担当者も参加して、学校のホールで行われた。アイデアの整合性の甘さを指摘したり、もう一歩の発展を望んだりする声もあったが、生徒たちの真剣なプレゼンテーションに対して「実践面まで考えてあり、本気度がうかがえた」「論理的なプレゼンで説得力があった」などの好評価も与えられた。

 防災拠点のアイデアを出したチームの一人は、「プレゼンの相手に合わせて内容を調整し、対等な意見と捉えてもらえるよう、自信を感じさせる話し方を心がけた」と話す。また、自習室や貸しオフィス、イベントスペースなどの複合施設化を提案した生徒は、「持続可能な社会を作るには若者の力が必要。問題意識の発信源となり、さまざまな世代に関心を広げたい」と決意を話していた。

「ダメだった」も大きな収穫

SDGs担当の佐藤教諭
SDGs担当の佐藤教諭

 佐藤教諭は「これまで、SDGsを『遠い国の話』と感じていた生徒も、今回の取り組みで『身近に課題がある』と気付いたと思います。まさに『Act locally』の視点が得られました」と成果を語る。

 達成感より挫折感を持った生徒にも、成長の兆しを見る。「最終プレゼン後、『どこがダメでしたか』と聞きに来る生徒がいました。半年間懸命に考えたのに、まだまだ足りないと痛感したのでしょう。学校の枠を一歩出て、実社会でどんな人がどんな活動をしているかを垣間見た経験は大きい」

 空き家に関連するプロジェクトは今後も続けたいという。生徒がさらに主体的に関わる仕組みとして、生徒自身によるワークショップ運営などを構想している。

 「ESDに欠かせないのは『GCED(地球市民教育)』と言う概念。学習者それぞれが現実の問題に向き合い、多様なステークホルダーを巻き込みつつ、変化へ向けた積極的な役割を担う考え方です。これも、『自分の力を誰かのために使う』という本校の理念に通じます」

 今回の提案は調布市のホームページに掲載されており、それを見ている生徒も少なくないという。「先輩の成果を見て『すごい。でも自分にもできるはず』と思う後輩たちが、さらにレベルの高いチャレンジをする。そうしたサイクルを作っていきたい」

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:晃華学園中学校高等学校)

 晃華学園中学校高等学校について、詳しく知りたい方は こちら

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2167313 0 晃華学園中学校高等学校 2021/07/02 05:01:00 2021/07/02 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210630-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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