科学への好奇心を刺激する独自のサイエンスカフェ…麗澤

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 麗澤中学・高等学校(千葉県柏市)は、特別講座「麗澤サイエンスカフェ」を2017年度から続けている。大学院生や企業の研究者たちを招いて、広く理科への関心を高めるのが狙いだ。今回はカフェの試みとして行われた夏休みの「特別実験教室」を取材した。

大学院生ら講師に相対性理論や分子生物学も

「麗澤サイエンスカフェ」について語る目黒立真教諭(左)と重松雅治教諭
「麗澤サイエンスカフェ」について語る目黒立真教諭(左)と重松雅治教諭

 入試広報部副部長の重松雅治教諭によると、「麗澤サイエンスカフェ」が始まったきっかけは、2016年度に国立天文台の広報普及員で、「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)」会長の羽村大雅氏を招き、金星観測をテーマにした天文学講座「アストロトーク」を開催したこと。生徒と保護者合わせて約50人が参加した。「この講座が面白く、生徒の反応も良かったので、定期的に開催しようと思いました」

 「麗澤サイエンスカフェ」の運営を中心的に務めるのは、高校物理担当の目黒立真教諭だ。素粒子を研究していた大学院時代に、一般の科学ファン向けのサイエンスカフェを主宰していたという。その頃の人脈を基に、東京大学、東京工業大学、早稲田大学の大学院生などに講師を依頼し、17年度からスタートした。

 開催は、定期試験後と学年末の年5回。麗澤大学の多目的ラウンジなどを会場に、生徒、保護者を対象として自由参加で行われている。テーマはたんぱく質の形状を調べる研究やSF映画を素材とした相対性理論入門、ハエの脳をテーマとした分子生物学など幅広い。今年度は、学外にも場を広げようと、5月に清水建設の技術研究所の見学を行った。

 中高生の理解を超える内容も多いというが、重松教諭は「ちょっと背伸びをした知識に触れ、専門家と交流することは生徒の視野を広げ、勉学にも生きるはず。受験指導にとどまらないリベラルアーツ(教養)の養成という点でも有用と考えています」と強調する。

 保護者の関心も高く、生徒とほぼ同数が参加するという。

夏休みのカフェは実験を主体に実施

染色の実験について説明する中台文夫教諭(左奥)
染色の実験について説明する中台文夫教諭(左奥)

 この夏休み、初の試みとして、実験主体のサイエンスカフェを8月26、27日に実施した。

 プログラムでは、1日目が空気の重さや圧力、水の浮力をテーマにした実験。2日目が、伝統的な染色技法を通して酸化・還元やイオン化などの化学変化を学ぶ実験だ。参加者は中高生16人、保護者ら2人。講師は麗澤高校で化学を担当する中台文夫教諭が務めた。

 取材に訪れたのは2日目の27日。会場となった同校の化学実験室は、普通の教室で使う机、椅子や黒板のある講義スペースと、実験台が並ぶ実験スペースに分かれていた。「実験台にテキストや椅子などを置かずに済むので、効率的で安全。中学や高校でこうした造りになっている例はなかなかありません」と中台教諭は話す。

 最初に講義スペースで実験の説明を行い、その後に2、3人ごとの班に別れて実験台に移り、実験開始となった。

 メーンの実験は、2種類の伝統的な染色「藍染め」と「(あかね)染め」の再現だ。

 藍染めは、植物のタデアイに含まれるインジゴという染料を利用して布を青く染める手法だ。インジゴは水に溶けない性質だが、ハイドロサルファイトナトリウムという物質を加えて還元すると水溶性になる。布に染み込ませた後、空気にさらすと、酸化して不溶性のインジゴに戻り、水洗いしても落ちなくなる仕組みだ。

 インジゴは、還元された状態では黄色の液体だが、空気に触れると濃い青色が復活する。この変化が実験の面白さになっている。

布に溶液を染みこませた後に、水でよく洗い流す
布に溶液を染みこませた後に、水でよく洗い流す
茜染めは、アカネという植物に含まれるアリザリンという染料で赤く染める
茜染めは、アカネという植物に含まれるアリザリンという染料で赤く染める

 茜染めは、アカネという植物に含まれるアリザリンという染料で赤く染める方法。この物質は元々水に溶けるが、金属イオンを加えると不溶性の物質になり、水で落ちなくなる性質がある。金属イオンを加えるには、アルミニウムイオンを含むミョウバンを使用する。

 参加者は用意した綿のハンカチに、輪ゴムや割り箸を使って思い思いに絞り模様を付け、藍染めや茜染めに挑戦。うまく柄が出た生徒の周りでは「おお~」と言う歓声が上がり、記録係の教諭が記念撮影した。中台教諭は指導の合間に世間話やダジャレも挟み、楽しい雰囲気で実験は進んだ。

 藍染めの実験では、事前に準備したインジゴの分量が足りず、染液が少なめになるハプニングもあった。やむなく1人分の染液に2、3人が布を浸すことになったが、黄色い布が青く変わる過程はしっかり観察できた。逆に染液が少ないことによる染めムラも味わいとなったようだ。

 茜染めの実験では、染める素材によって色の濃さが異なることも分かった。「たんぱく質は濃く染まるよ」。中台教諭がウズラの卵を取り出して染色してみると、確かに綿のハンカチよりはるかに濃い赤に染まった。

 二つの実験の間に、酸化・還元を利用した手品風の実験も行われた。インジゴカルミンという着色料を使った「交通信号反応」と呼ばれる実験だ。インジゴカルミンと水酸化ナトリウム、ブドウ糖の混合水溶液を作り、ペットボトルに半分くらい入れる。これを激しく振ったり静置したりすると、液の色が緑、赤、黄色と変わっていく。振った時には空気に触れたインジゴカルミンが酸化して緑色になり、静置するとブドウ糖の作用で還元され、赤から黄色に変わるのだという。

 その他、いくつかのミニ実験を挟みながら、最後にはみんな、染めたハンカチを手にして記念撮影し、3時間余りのプログラムが終わった。

学びを通して社会とつながる

 終了後、受講した生徒に話を聞いた。

 自分の関心領域を広げたいとカフェに参加している高1の吉野百合子さんは、「伝統技術にも科学的な裏付けがあるんですね。昔の人はどこまで理解していたんだろう」と、新たな興味が湧いた様子だ。

 慣れた手つきで実験を進めていた中1の西脇暖人君は、自宅近くのサイエンスクラブにも通っているという。「紫キャベツの染色実験はクラブでもやったけれど、今回は化学的に色が変わる様子が面白かった」と話す。

 終了後のアンケートに目を通した目黒教諭は「自分で手を動かすのは、やはり楽しいようです。今後は実験も定期的に開催しようかと思っています」と手応えを感じていた。

 「麗澤サイエンスカフェ」について目黒教諭は「学力向上以外に、社会とつながる効果も期待できる」と話す。「このカフェで興味を広げ、地元のサイエンスクラブに通い始めた生徒もいるようです。そんなふうに、自分自身のアクションにどんどんつなげてほしい」

 今後の予定については、「5月にやったような企業関連の講座も増やしたい。その他、大学が実施している出前授業を活用したり、KSELとのコラボで、科学をテーマにした合宿をしたりするのもいいですね」と構想を広げている。

 授業の枠を超えた学びの機会を学校に取り入れることで、知識の充実に加えて社会とのつながりを育む。コミュニケーションや協働に重きをおく「21世紀型スキル」育成への、答えの一つかもしれない。

 (文・写真:上田大朗、一部写真提供:麗澤中学・高等学校)

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52078 0 麗澤中学・高等学校 2018/12/03 05:20:00 2018/12/03 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181129-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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