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【特集】生徒のコミュニケーションと行動を活性化する「ICTルーム」…麗澤

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 麗澤中学・高等学校(千葉県柏市)は今年度、2室あった「コンピュータ実習室」の1室をリニューアルし、「ICTルーム」として活用を始めた。システムエンジニアから転身した情報科担当教諭の発案・設計によるもので、生徒の発想や積極性を引き出す機能を盛り込んでいるという。同室で行われた高1の情報科の授業を見るとともに、担当教諭にリニューアルの狙いや構想を聞いた。

フリーアドレスオフィスにヒントを得たデザイン

「生徒の積極性をサポートしたい」と話す野口教諭
「生徒の積極性をサポートしたい」と話す野口教諭

 新しく誕生した「ICTルーム」は、デスクトップパソコンが並ぶ「コンピュータ実習室」とはデザインが大きく異なっていた。大きな窓を設けた明るい空間に、5、6人が座れる円卓がゆったりした間隔で8台並べられている。教卓はなく、前方の壁は全面がホワイトボード兼スクリーンとなっている。後方にはホワイトボードが3台、大型モニターテレビが1台あり、どの席に座ってどちらを向いても投映画面が見え、どの席からもホワイトボードが近い。

 この「ICTルーム」を発案・設計した情報科担当の野口紘司教諭は、「教室の『前・後ろ』をなくそうと思いました。どの円卓も議論の中心になり、気軽に席を立って隣の席にも話をしに行ける。教卓もなく教員も円卓の間を巡回できる。アイデアは手近なホワイトボードに書けばいい。席も座席指定せず自由席にしました」とデザインを説明する。ヒントになったのは、企業のフリーアドレスオフィスだという。野口教諭は大学卒業後、大手電機メーカーのフィールドSEとして5年間勤務し、その後、同校に赴任して9年目になる。

 「ICTルーム」新設の背景には、高校のプログラミング教育必修化の流れを踏まえた環境整備の狙いがあるという。「学習指導要領の改訂により、2022年度から高校でプログラミング授業が始まり、24年度の共通テストでは試験科目になる見込みです。本校ではそれを先取りして19年度に生徒のノートPC1人1台体制を整え、今年度から高1の全コースにプログラミング授業を導入しました。また、在学中に実務レベルのパソコンスキルを身に付けるため、『ICTプロフィシエンシー検定』の3級以上の取得にも挑戦させています」

 「生徒が日常的に自分のパソコンを普通教室で使う環境になると、従来の『コンピュータ実習室』はあまり存在意義がなくなる。そこでデザインツールやVR教材を備え、動画編集など高度な情報処理が可能な高性能パソコンを設置した実習室として1室を残し、もう1室はICTをベースとしたグループワークやプレゼンテーション用の教室にリニューアルすることになりました」

自由に円卓をまわって活発に意見交換する生徒たち

自由に円卓をまわって活発に意見交換する生徒たち
自由に円卓をまわって活発に意見交換する生徒たち

 8月27日、ICTルームで行われた高1の「情報の科学」の授業を見た。高入生クラス「叡智(えいち)スーパー特進コース」の2学期最初の授業で、初歩的な論理回路を製作する。

 1学期の授業ではコンピューターの基本知識を学習した。実習はこの日が1回目。AND、OR、XORなどのロジックIC(論理回路)を組み合わせ、演算回路の基本となる「半加算回路」と「全加算回路」を作るのが目標だ。

 野口教諭からの説明が終わると、2、3人ずつで円卓を囲んでいた19人の生徒たちは、配布されたブレッドボード(電子回路の実験・試作用基板)やIC、ジャンパーワイヤ、抵抗器などの部品を使って回路の製作を始めた。回路図は1学期に学習していて理解できているはずだが、実際に配線を再現するのはなかなか難しい様子。プロジェクターで投映された回路の見本と見比べながら取り組んでいた。

 見ていると、同じ円卓の生徒同士が互いに回路を見せ合ったり、数字と英字で表されている部品を挿す場所を読み合わせたりと、自然に協働作業が始まった。近くの円卓をまわってうまくいった生徒の回路を見せてもらったり、質問したりといった行動も頻繁に見受けられる。教員にも盛んに質問が飛び、誘い合わせて見本の回路を見に行く生徒がいるなど、通常の授業では見かけない活気が生まれていた。

教員に質問をしに行く生徒(左)
教員に質問をしに行く生徒(左)

 自由に動き回れる状況ながら、どの生徒も無駄話をしたり、手持ち無沙汰になったりすることなく、集中力を保って実習に打ち込んでいる。「必要な事をすぐにコミュニケーションできるからでしょう。従来の『コンピュータ実習室』はデスクトップPCが『壁』となり、生徒同士会話しづらい環境でしたが、この教室になってからは率直に質問してくる生徒が増えた実感があります。しかもこのクラスは高校からの入学生で、コロナによる休校期間が明ける6月下旬までは顔を合わせたこともなかった生徒たちなのに、もう気軽に協働作業をしている。空間の影響力の大きさを感じます」と野口教諭は手応えを語る。

 授業は2時間連続で行われたが、一部に部品の不具合もあったらしく、半数ほどの生徒が半加算回路を完成したところで終了した。「次回は全加算回路の製作からです。片付けにかかってください」。野口教諭の指示で、生徒たちは手早く片付けを済ませた。

 同じ円卓に居合わせたクラスメートと配線の確認をやっていた山本陽仁(はると)君は、「仲がいい友達と同じ席に着くので、気軽に教え合えるのがいい。普通の教室だと話しにくいですが、この教室だと向かい合うのも隣に来るのも自由なので、協働作業がやりやすいと感じます」と話す。

 理系科目が得意だといい、いち早く半加算回路を完成させていた高澤(こう)さんは、「回路図は授業で理解したつもりでしたが、実際の配線になかなか結びつかず、何度かやり直しました。情報の授業は初めて知ることばかりで、大変ですが好きです。先生に気軽に聞きに行ったり、自由に動き回れたりするこの教室も気に入っています」と話した。

多様な授業や生徒たちの自主活動にも活用

 野口教諭は、もっと多様な「ICTルーム」の活用をイメージしているという。「今回は作業が主でしたが、今後プログラミング学習に入ると、アイデアワークやプレゼンテーションを行う機会が増えていきます。動画や音声を組み合わせてプレゼンテーションを工夫したり、前のスクリーン兼ホワイトボードに投映しながら書き込んだりといったアクティブな使い方をしたい」

 学年後半では起業・商品開発のシミュレーションや、自分の将来を考えるキャリア教育も交えた授業を予定している。高3の「情報演習」の卒業研究では、小型コンピューター「ラズベリーパイ」を活用するプログラム製作もある。「その際にも、オープンな議論や多様なプレゼンテーションができるこの教室が役立つでしょう」

 情報科の授業以外にも、社会科や英語科、コミュニケーションを学ぶ「言語技術」「総合的な探究の時間」などのディスカッションやプレゼンテーションを伴う単元の授業で「ICTルーム」は活用されており、ほかにも自習や個別指導、面談など、多様な用途を見込んでいる。

ICTルームで活動しているSDGs研究会
ICTルームで活動しているSDGs研究会

 さらに、生徒の自主活動にも活用されている。例えば今年度発足した「SDGs(持続可能な開発目標)研究会」は、この部屋が活動拠点だ。「これまでも有志団体としてフェアトレード支援や小児がん患者支援などの活動を行っていた生徒達です。企画立案やプレゼンテーションなどを行う機会が多いので、ICTルームを提供することになりました」と野口教諭は話す。「ほかにも、模擬国連活動をやりたいという生徒有志がいますし、私自身もそのうちICT研究会を立ち上げたいと考えています。大学も主体的活動を評価する時代です。生徒の積極性をサポートする場として、大いに活用したいですね」

 新しいデザインの教室が新しい学びを生みだす。数年後には、多くの学校でこうした教室を取り入れているかもしれない。

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:麗澤中学・高等学校)

 麗澤中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1581012 0 麗澤中学・高等学校 2020/10/30 05:01:00 2020/10/30 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201027-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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