【入試ルポ】千葉で第1志望入試、激戦始まる…国府台女子
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千葉県内の私立中学校の第1志望者向け推薦入試や第1志望入試が12月1日、解禁され、2020年度募集の入試が15の私立中学校で行われた。国府台女子学院中学部(市川市)でも推薦入試が行われ、募集定員約50人に対して182人が出願して倍率3倍以上の厳しい戦いとなった。受験生・保護者たちの一日の表情をリポートする。
合格へ向けて、塾の先生の激励と祈り

市川市の朝の最低気温は5度。まだ薄暗い午前6時30分に一番乗りで応援に駆け付けたのは、栄光ゼミナールの先生たちだ。7時までには、次々と他の塾の先生たちも到着し、校門から校舎まで通路の両側にズラリと並んだ。
この日の推薦入試は募集定員約50人に対して182人が出願、倍率3倍以上の厳しい戦いとなった。
栄光ゼミナール行徳校の
開門・受付開始は7時30分からの予定だったが、7時10分には最初の受験生と保護者が到着した。その後もちらほらと受験生たちの姿が現れ始めた。
「あ、先生だ!」と受験生が声をあげる。保護者も「先生、わざわざありがとうございます」とお辞儀をしながら、一緒に塾の先生の前に駆け寄った。
先生「おはよう、昨日は眠れた?」
受験生「はい!」
先生「朝ご飯は食べられた?」
受験生「はい!」
先生「よし、大丈夫だ、いってらっしゃい!」
先生は両手でしっかり生徒の手を握り、肩をポンとたたいて、受験生を見送っていた。
「はい、これ。休み時間に食べてね」と、キャンディーを渡していたのは、茗渓塾小岩教室の塚田峰子先生だ。キャンディーには縁起をかついだメッセージが記されており、受験生は「先生、ありがとう」と大事そうに受け取って、試験会場へ向かっていった。
「あー、松岡先生!」。早稲田アカデミー海浜幕張校の松岡里衣先生を見つけた受験生が声を上げ、先生と両手を合わせてぴょんぴょん飛び跳ねた。
先生「ちゃんと寝た?」
受験生「うん、寝た!」
先生「よし、大丈夫! 頑張っておいで!」
松岡先生は、「3年間指導してきた生徒なんです。よく夜更かしする生徒なので、ちゃんと寝なさいよと、前の日に伝えていたのです。第1志望ですから、ぜひ合格してもらいたいです」と祈るように話した。
校舎前で受験生は保護者と別れて、いざ試験教室へ

7時50分頃には、受験生たちの到着がピークを迎えた。校門を通って校舎の前に来ると、右側の入り口に「受験生」、左側の入り口に「保護者」と、大きな貼り紙がしてある。同校の先生が、「ここでお別れになります。受験生は右手に、保護者の方は左手にお進みください」と声をかけ、手伝いの在校生が「こちらです」と受験生を試験教室のある校舎へと案内していった。
案内係をしていた中2の生徒は、「2年前を思い出します。受験生のみなさんが、2年前の自分に重なって見えて、懐かしいです」と話した。
試験教室では8時20分に出欠の点呼が始まり、同50分に試験が開始された。受験生たちは、わずかな休憩を挟みながら午前11時40分まで、国語・算数(各100点)、理科・社会(各50点)の4科試験に挑戦する。
保護者は待合室となっているホールへ案内された。すぐに平田史郎学院長が現れ、「皆さん、おはようございます。朝早くからありがとうございます。本日は交通機関の遅延もなく、欠席者もおりませんので、予定通りのスケジュールで進めます」とあいさつ。保護者らも少し和らいだ表情を見せた。暖房が利いて暖かなこのホールのほか、図書館、カフェテリアも開放されており、保護者らの多くが試験終了までの時を過ごした。
推薦入試は基礎的な学力を測る設問が中心

平田学院長に、受験生たちへ送るメッセージを聞いた。「推薦入試の問題は基礎的な学力がしっかり身に付いているかを測る設問が中心となっています。本校で夢をかなえようという皆さんには、ぜひ一人一人が主体的で積極的に活動しつつ、皆で協調・協働し、励まし合って、それぞれの夢に向かって歩みを進めるような学校生活を過ごしていただきたいと思います。女子校ならではの温かい雰囲気、学校の中心に図書館がある教育環境の中で、それぞれの夢に向かって自己実現を果たしてもらいたいと考えています」
サピックス教育事業本部長の広野雅明さんは、12月の千葉の推薦入試について、「受験生にとっては第1志望校合格のチャンスが1回増え、また学校にとっては志望順位の高いお子様の入学が望める入試になっています。倍率が高く、狭き門となる場合もありますが、学校によっては、志願すれば合格の可能性がかなり高くなります」と分析する。
また、国府台女子については、「入試問題はオーソドックスですので、基礎学力をしっかりと身に付け、過去問の学習をしっかり行い、6割強の得点を取れるように練習することが大切です。国府台女子は、朝の漢字・計算・英単語の小テストなど、丁寧な学習指導をしていて、図書館を有効に活用した調べ学習も特徴的です。仏教校で、宗教色が特に強いわけではありませんが、お子様の心の成長において、宗教教育の持つメリットをお感じのご家庭は増えているように思います」と語る。
女子校という点についても、「男子の目を気にせず過ごせるので、理系科目について男子に劣等感を抱く必要がなく、理系を選択しやすくなります。大学受験校の選択も女子校の生徒のほうが果敢に難関大にチャレンジする傾向にあります」とメリットを指摘する。
試験2日後の12月3日には、合否にかかわらず郵便で合格内定通知が全受験生に届く。一人でも多くの受験生に夢をかなえてもらいたい。
(文・写真:小山美香)
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