「智慧」と「慈悲」を備えた女性を育てる…国府台女子

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 来年、創立95周年を迎える国府台女子学院中学部・高等部(千葉県市川市)は、仏教の精神を礎としながら、男子に頼ることなく社会で活躍できる女子の育成に一貫して注力してきた。その一方で時代のニーズを読み、女子の特性に注目して、早くから高校に英語科を設け、普通科内に美術・デザインコースを設置するなど、柔軟な教育を行っている。同校の目指す女子教育のあり方について平田史郎学院長に聞いた。

女子の特性に着目した英語教育や美術教育

女子教育にかける思いを語る平田学院長
女子教育にかける思いを語る平田学院長

 全国で共学化の進む中、国府台女子は千葉県では数少ない中高一貫の女子校だ。「本校は女性の地位向上が唱えられた大正デモクラシーの時代に、日本の女性に活躍の場を与える教育を行うために設立されました。時代は変わっても、その原点を大切にしていきたいと考えています」と、平田学院長は話す。

 同校は1926年、山口県出身の僧侶であり、千葉女子師範学校で教鞭(きょうべん)を執っていた平田華蔵(けぞう)氏が、「自らの理想とする女子教育を実践したい」と、「万葉集」にも登場する歴史ある市川の土地に開校した。3代目となる平田史郎学院長は、平田華蔵氏の孫に当たる。

 同校の教育の特色の一つは、高校に普通科のほか英語科があることだ。「『英語科』は『女子にとっての普通科』であると、私たちは考えています。女子生徒は一般にコミュニケーション力が高く、外国語や留学に高い関心を持っています。自分のやりたいことを学び、伸ばしたい力を伸ばしてほしい。そのために、早くから実用英語の強化に取り組んできました」

 同校が、海外へ目を向けることの必要性に気付いたのは早く、外国語教育が制限されていた第2次世界大戦中も、英語の授業を続けていたという。高校に「英語科」を創設したのは84年だ。数学や理科の授業の代わりに英語の時間を増やしたカリキュラムとなっていて、現在、英語科の高3では週13時間と豊富な時間が英語の授業に充てられている。

運動会の名物となっている仮装行列
運動会の名物となっている仮装行列

 女子の繊細な感性を生かす教育という点では、67年に高校普通科に設けられた「美術・デザインコース」も注目される。このコースでは普通科の授業に加えて、デッサンや油絵など芸術系の実技の時間を豊富に盛り込んだカリキュラムを実施している。東京芸術大学など美術系大学への進学者を例年のように送り出す一方、近年は医歯薬系、看護系学部の志望者も増え、一人一人に丹念な進路指導を行っているそうだ。

 「女性が社会で活躍するための土壌は、まだ完全に整っているとは言えません。男女共学の場合、女性はどうしても男性にリーダー的役割を譲ってしまいます。例えば、本校では運動会の仮装行列が名物となっていますが、女子が大工道具を手に見事な仮装を作り上げています。『男子に頼らず、自分たちの力で成し遂げる』という姿勢は、社会に出て企業で男性とともに働くようになってからも、必ず生かされるものと思います」

国際社会で生きる素養としての仏教と「言葉の力」

釈迦の誕生日を祝う「花まつり」
釈迦の誕生日を祝う「花まつり」

 同校は、親鸞が興した浄土真宗の教えを教育に反映させており、平田学院長自身、浄土真宗本願寺派の僧侶でもある。週に1時間「仏教」の授業があり、釈迦の誕生日「花まつり」のお祝いや盂蘭盆会(うらぼんえ)(お盆)には読経を行う。仏教の授業ではキリスト教やイスラム教など他の宗教についても取り上げると同時に、脳死・臓器移植、宗教間紛争といった時事問題も扱うそうだ。

 「将来社会に出れば、さまざまな宗教的背景を持つ国の人と出会うことでしょう。知識がないと、思い込みで行動したり、余計な偏見を抱いたりすることになりかねません。相手の宗教に対する理解を持ち、日本文化の礎である仏教について正しく説明することができるのも、国際社会で生きる上で非常に大切な素養です」

 平田学院長は自身、生徒に法話を説いて聞かせることもあるといい、「言葉の力」を重んじている。「日本語は、平仮名・片仮名・漢字を持つ、難しいけれども非常に豊かな言葉です。例えば、漢字で『広島』と書いた時とカタカナで『ヒロシマ』と書いた時では、受ける印象が異なります。『ヒロシマ』の場合、やはり原爆投下が思い起こされるでしょう。このような日本語の特色を上手に使いこなす力を付けてほしいと考えています」

書店のような楽しさを演出した図書館
書店のような楽しさを演出した図書館

 「言葉の力」を養う目的で2011年にオープンしたのが新図書館だ。約5万冊の蔵書のほとんどを開架式で扱っているという。「書棚は生徒の目線に合わせて低めに設定し、本を選ぶことを楽しめる書店のような図書館を目指しました。中央の展示コーナーでは、その時々の社会の話題に合わせた特集を行っています」と平田学院長は話す。7月31日に取材で館内を見た時は、「GoToキャンペーン」をもじった「GoTo 本の世界」と題したコーナーが設けられ、夏休みのお薦め図書が並べられていた。

 図書館全体で、年間3000~5000冊の本が貸し出されているという。館内で配布している「図書館通信」には、「今まで名前も知らなかった、私の好みど真ん中のお話を書く作家さんに出会えました」「授業では、なんだか難しいと思っていた内容が写真や図で説明されており、スーッと頭に入ってきました」などの生徒の感想がつづられていた。

 「できるだけ多くのジャンルの本を読み、さまざまなことに興味を持って、自分が究める道を見つけてほしいと思います」と平田学院長は話す。「本校の教育理念は、仏教の教えである『智慧(ちえ)』と『慈悲』です。あらゆることに関心を持ち、より深く学ぼうとする『智慧』を得ることで、他者を理解し、思いやる『慈悲』が身に付きます。高い教養と深い思いやりを持った女性に育ってほしい。それが、私たちの大きな願いです」

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:国府台女子学院中学部・高等部)

 国府台女子学院中学部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1485138 0 国府台女子学院中学部・高等部 2020/09/18 05:21:00 2020/09/18 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200917-OYT8I50038-T.jpg?type=thumbnail

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