「好奇心の窓を開く」浦安人生学…東海大浦安

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 東海大学付属浦安高等学校中等部(千葉県浦安市)は6月29日、中学1年生向けに「生け花講座」を開いた。土曜日に開催している独自の教育プログラム「浦安人生学」の一環で、今回は生徒に日本の伝統文化を知ってもらうのが狙いだ。池坊の講師に手ほどきを受け、花はさみを手に自分のイメージを作品化する生徒たちの姿をリポートする。

今年から「土曜講座」に「社会文化学系」を新設

講師陣の実技に見入る生徒たち
講師陣の実技に見入る生徒たち

 週6日制を採用している同校は、土曜日の「総合的な学習の時間」に「浦安人生学」と呼ぶ独自の教育プログラムを実践している。その「入門編」として中学1、2年生向けに外部講師を招いての「土曜講座」を開いている。前期・後期に分けてさまざまな講座が用意され、生徒たちは受けたい講座を選択できる。

 内容は昨年まで「自然科学系」「比較文化学系」「健康医科学系」の3分野だったが、今年は「社会文化学系」の分野を新設し、前期講座として「生け花講座(日本の伝統文化を学ぶ)」を開いた。

 同校中等部の古瀬哲也副校長によると、「社会文化学系」という分野を新設したのは「比較文化学系で外国文化に触れる講座があるのなら、日本文化に触れる講座があってもいいのではないか」という声が教員の間で上がったからだという。同校は、中学3年生が全員参加する2週間のニュージーランド英語研修を行っている。その際、外国の文化に触れるだけでなく、日本の文化を発信できるだけの知識を持ってほしいという考えからだ。また、昨年、高校の同好会「茶華道教室」の部員が「Ikenobo花の甲子園」関東地区「北」大会で上位入賞し、校内で注目を浴びたこともあり、「生け花講座」を開くことになった。

講師のアドバイスで生徒の作品が見違える

生け花の骨組みとなる「真」「副」「体」を説明する山口講師
生け花の骨組みとなる「真」「副」「体」を説明する山口講師

 生け花講座の会場は同校中等部の物理実験室だ。池坊東京中央橘会支部から山口真利子さん、及川直美さん、福岡郁子さんを講師に招き、華道の歴史や基礎的な知識を学んだうえ、指導を受けながら実際に花を生けた。

 「質問はありませんか」「これ、知っていますか」「山やハイキングに出かけた時に見た花の質問でもかまいませんよ」。講座が始まると山口講師は、緊張の面持ちの生徒たちをリラックスさせるため、気さくに声をかけていった。山口講師は地元の東京・墨田区で小学生に華道を教えているため、子供たちの気持ちがよく分かるそうだ。やがて「なぜこの講座を受けようと思ったのですか」と質問を向けると、1人の女子生徒の手がパッと挙がり、「小さい時からやってみたかったんです」と朗らかな声を上げた。

 次いで華道の歴史や流儀についての基礎的な話があり、教室の雰囲気もすっかり和らいできたところで、山口講師と「茶華道教室」顧問の森田圭子先生による、生け花の実演が始まった。

 この日の花材はバラ、ヒマワリ、ソケイ、スターチス、ナルコランなど。花はさみを使って、違った長さに切り分けた花を、「(しん)」「(そえ)」「(たい)」という骨組みになるよう、黒塗りの花器に生けていく。

 講師たちの所作は一つ一つに緊張感があり、静かな教室に花はさみの音だけが響く。教室の後ろで講座を聴いていた男子生徒が、花器を置いた実験机の方へだんだん近づいていく。講座の後、「講義の中身はよく分からなかった」と話した女子生徒も、引きつけられるように見つめている。やがて山口講師がバラを生け、お手本を完成させた瞬間、生徒たちから「うわっ」と、ため息とも感嘆とも言えない声が沸き上がった。

一人一人に花の生け方を丁寧にアドバイスする山口講師(左)
一人一人に花の生け方を丁寧にアドバイスする山口講師(左)

 今度は生徒たちの番だ。山口講師は今回、花留(はなど)めとして剣山(けんざん)を用意した。初めて生け花をする場合、不注意から剣山の針でけがをしないように給水スポンジを使わせることが多いというが、あえて剣山を使うことによって集中力を高め、花と向き合ってほしいという考えからだ。

 生徒たちが剣山を置いた花器に水を注ぐと、水面からわずかに針先が見える。指で触れて感触を確かめている生徒の姿は、生け花の完成イメージを思い描いて没頭しているかのようだ。

 ただ、実際に花を生けてみると、なかなかイメージ通りにはいかない。「長さはこれくらいでいいの」「ここに刺していいの」と、生徒たちは確かめるように山口講師たちや森田先生に質問しながら作業を進める。質問に対して先生方も、「大丈夫、それで」と自信を持たせるように答える。

 一方、自力でどんどん生けていく生徒もいる。講師たちはそういう生徒に、どのように配置すればいいのか、どのように枝ぶりを変えればいいのかを、一言アドバイスする。ある生徒がアドバイスに沿って枝の向きを少し変えたところ、ぐっと引き立つ見栄えになり、山口講師と見合わせた生徒の顔に笑顔が(はじ)けた。

生け花を通して命の大切さを理解する

浦安人生学入門編の意義を語る古瀬副校長
浦安人生学入門編の意義を語る古瀬副校長

 約1時間の実習が終わった。実験机の上には、生徒一人一人のイメージを表現した花器が並び、生徒たちは互いの作品を鑑賞し合った。花はその後、剣山から抜き取って、生徒がそれぞれ自宅に持ち帰ることになっている。「自宅でもう一度生けてみる生徒もいるでしょうが、同じものにはなりません。そのことでむしろ、教室で花に触れ、花を生けた時間の大切さが分かってもらえるでしょう。命の大切さを理解することにもつながるのでは」と山口講師は話した。

 生徒たちの作品を見てまわった古瀬副校長は、「空間を自分で作りあげる楽しみを、生徒たちは少しでも感じ取ったのではないでしょうか」と手応えを話した。

 「浦安人生学入門編」の意義について古瀬副校長は、「好奇心の窓を開くことです」と話す。「今回の生け花講座を受けた生徒はおそらく、街中で『華道展』のポスターを見つけたら、これまでと違った目で見ることでしょう。その華道展に足を運ぶかもしれないし、わずかでも今までと違った自分を発見するかもしれません」

 「社会文化学系」の後期講座では、法リテラシーの専門科を招く予定になっている。生け花に比べると難しい内容になりそうだが、生徒たちには、また新しい「好奇心の窓」が開くことだろう。

 (文・写真:鶴見知也)

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876374 0 東海大学付属浦安高等学校中等部 2019/11/06 05:22:00 2019/11/06 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191101-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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