教師たちが力を合わせて生徒の生き方をサポート…東星学園

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 カトリックミッション校の東星学園中学校・高等学校(東京都清瀬市)は、大矢正則校長が唱える三つの「C」を教育の根本としている。その目的を一言で言い表すならば、子供たちの心の成長を促すことだ。三つの「C」の意味や、それらをどう教育に生かしているのか、さらに、その根底にあるキリスト教の精神などについて大矢校長にインタビューした。

教育の柱となる三つの「C」

三つの「C」を提唱する大矢正則校長
三つの「C」を提唱する大矢正則校長

 東星学園中学校・高等学校は、三つの「C」を教育の柱に据えている。それは「Class=平常の授業」「Career guidance=生き方の案内」「Counseling=行動の変容を促す関わり」の三つの言葉を頭文字で表したものだ。この三つの「C」を提唱した大矢正則校長は、「2011年に校長に就任したとき、東星学園に対して感じたことが、この三つの『C』に集約されています」と語る。

 最初の「Class(クラス)」は学級ではなく、授業を意味しているという。少人数校のメリットを生かし、一人一人の習熟度に合わせ、質の高い授業を行うことは同校の教育の基盤だ。

 次の「Career guidance(キャリアガイダンス)」は「生き方の案内」を意味しているという。大矢校長は、自ら指導にあたった経験からこの言葉を説明した。「大学のネームバリューにとらわれ、進学後に何がしたいのかが明確になっていない生徒がいました。私は話を聞く中で、『この子は物事を考えることが好きなのではないか』と思い、一冊の倫理の教科書を渡しました。生徒は英文、神学、心理の学部で迷っていましたが、本の内容に感銘を受け、『自分のやりたかったことは、こういうことなのです』と哲学の道に進むことを決めたのです」

 「生活指導と進路指導は別物として考えている学校が多いですが、進路を決めることは、生き方を決めることでもあります。生活指導部と進路指導部、複数の教師が力を合わせて1人の生徒をサポートし、子供の人生を一緒に考えていく指導を実践しています」

 生徒各自の希望の進路を実現させるために、入試の形式にはこだわらず、AOや推薦にも力を入れている。少人数校らしいきめ細かさで、面接や小論文のサポートも手厚い。面接の練習には大矢校長も参加するという。校長先生を間近にして感じる緊張感をうまく利用して、本番に似た雰囲気を出そうという狙いだ。まさに学校一丸となった入試対策と言える。

 最後は「Counseling(カウンセリング)」だ。大矢校長は、「心理的な問題を抱えている生徒だけでなく、全ての生徒にとってカウンセリングは必要」と考え、大きく分けて1次から3次までの「援助サービス」と位置付けてカウンセリングを実施している。

 1次的援助サービスは「予防的カウンセリング」とも呼ばれる。心理学者の國分康孝氏が開発した「構成的グループエンカウンター」というカウンセリング手法を用いるのが特徴で、グループで一つの課題に取り組み、お互いが思っている素直な気持ちを語り合う中で自己や他者との深い出会いを達成する。「いわば心と心のキャッチボールです。これを通じて、子供たちは自己発見、自己理解、他者受容、感受性の促進、一つのことを成し遂げる共同体験などを学ぶのです」

 「適切なカウンセリングは、社会の一員として活躍するための対応力を身に付けるのに役立つだけでなく、学習面における内発的動機付けにも大きく関わります」と大矢校長は話す。そのため、同校では、各学年で定期的に構成的グループエンカウンターを学校生活に取り入れている。

 生徒が学力や友人関係などで悩みを抱えていることが分かった場合には、2次的援助サービスが行われる。まずは担任が相談に乗り、必要があれば養護教諭やカウンセラーへの相談を促す。同校では週6日、カウンセリングルームが開設され、4人のカウンセラーが在籍して、いつでも相談に応じられる環境が整っている。

 さらに、生徒が直面している悩みが深いと判断された場合は、3次的援助サービスに移行する。担任、養護教諭、カウンセラー、そして保護者がチームを組み、生徒が直面する課題を解決する環境作りを行う。

 このケースにあたるのは、例えばいじめをどう解決するかという問題だ。「『いじめた生徒が、ごめんと謝る。いじめられた生徒が、いいよと許す。それで解決』というのは、最も良くない解決法」と大矢校長は話す。「私たちのアプローチはまず、お互いの生徒にこれからも一緒に生活する仲間であることを理解させます。お互いが関わりながら一緒に成長していけるようにサポートをすることが大切なのです。社会に出て会社勤めをする中で、人間関係がうまくいかなくなったとき、『お互いが謝って解決』なんてケースはほとんどありませんよね。嫌な思いをしても、うまく折り合いをつけながら生きていく力を養うことが必要なのです」

ボランティアや学年縦割りの活動で心を育てる

東日本大震災で被災した人々への訪問ボランティア
東日本大震災で被災した人々への訪問ボランティア

 この三つの「C」以外にも同校は、生徒の心の成長を促すさまざまな取り組みを行っている。東日本大震災で被災した人々への訪問ボランティアや、病院を訪れた外国人を助ける医療ボランティア、老人ホームや幼稚園での実習など、多くのボランティア活動を行っているのもそうした意味がある。「ボランティアから戻った生徒の多くは、充実感にあふれた笑顔を見せてくれます。ボランティア活動を通し、人と関わることで、相手に大切にされる経験を積むのです。これは人を成長させる大きな要因となります」

高校生と園児がペアになって演技を行う
高校生と園児がペアになって演技を行う

 学年縦割りの活動を、日々の学校生活に数多く取り入れているのもそうした取り組みだ。毎日の掃除で、中学1年生から高校3年生までの縦割りグループが同じ場所を担当したり、体育祭で高校生と学園の幼稚園児がペアになって演技を行ったりする。「東星少年少女合唱団」も小学4年生から高校3年生までの9学年で構成されている。「上級生が下級生を大切にする、下級生が上級生に大切にされる経験は、子供たちの心に良い変化をもたらす」と大矢校長は話す。普段はおとなしい生徒がリーダーを引き受け、下級生に指示を出している姿などを見ると、その成長ぶりに感じる喜びはひとしおだという。

「そこがあなたにとっての一番の学校」

小4から高3までで構成される「東星少年少女合唱団」
小4から高3までで構成される「東星少年少女合唱団」

 生徒たちの心の成長を見守る大矢校長の姿勢には、カトリックミッション校としての同校の伝統が息づいている。

 「カトリック学校の使命は経済成長を前提とした国際的な競争社会、いわゆる、グローバル化社会において中心的な役割を果たす人材の育成ではありません。もし中心的な役割というものがあるとするならば、それは『周辺』と寄り添える役割を持った中心者とならなければなりません」

 そんな大矢校長が全国の受験生たちに伝えたいのは、「あなたが入学する学校、そこがあなたにとっての一番の学校です」というメッセージだ。

 「合格もあれば不合格もある。それが受験です。でも、4月に通うことになった学校、そこが一番の学校だと思ってもらいたいのです。東星学園に入学を決めた生徒にも、『あなたは私たちにとって一番の生徒です』と伝えています」

 話を聞いた部屋には、大学名だけの合格実績が貼り出されていた。ときおり大学名に目をやる大矢校長の表情を見ると、進学した一人一人の生徒の顔と名前が頭に思い浮かんでいるのだろうと感じた。

(文・写真:安達悠 一部写真提供:東星学園中学校・高等学校)

 東星学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

62896 0 東星学園中学校・高等学校 2019/01/21 11:23:00 2019/01/21 11:23:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190121-OYT8I50005-T.jpg?type=thumbnail

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