他者と共生するためのグローバルプログラム…清泉女学院

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 清泉女学院中学高等学校(神奈川県鎌倉市)は、価値観や文化の異なる世界の人々との共生を考えるために、独自の「異文化体験・国際理解」プログラムを展開している。その中でも、近年始まった「ベトナムスタディツアー」と「ボストンカレッジ夏季研修 Ever to Excel」は、参加した生徒たちに世界の中での自分のあり方を考えさせるものとして注目されている。二つのプログラムについて担当教諭の話を聞き、参加した生徒の声を紹介する。

世界の今を肌で感じ、自分に何ができるかを考える

「ベトナムスタディツアー」で訪問した小学校
「ベトナムスタディツアー」で訪問した小学校

 スペインの修道会を設立母体とする清泉女学院は、1947年の創立当初からグローバルな視点での教育プログラムに力を入れてきたという。「本校のグローバルプログラムはコミュニケーション能力を高めるための『語学教育』『異文化体験と国際理解』の機会、そして地球市民として成長するための教科を超えた『リベラルアーツ』の学習など多岐にわたっており、生徒が自分に必要だと思う体験を選べるように年々拡充を図っています」。進路指導研究部の芝崎美保教諭はこう話す。

 これらのグローバルプログラムの中で「異文化体験と国際交流」は、文化や風習、価値観などの違いを理解することで他者に共感することを目的としており、真のグローバル精神を養うために国内・海外で行う多くのプログラムを用意している。特に、生徒たちに世界の中での自らのあり方を深く考えさせる機会になるとして近年、力を入れているのが、「ベトナムスタディツアー」と「ボストンカレッジ夏季研修 Ever to Excel」だ。

「ベトナムスタディツアー」を引率している小野教諭
「ベトナムスタディツアー」を引率している小野教諭

 第3回となる「ベトナムスタディツアー」を初回から引率している倫理科主任の小野浩司教諭は、「ベトナムは経済成長が著しい反面、貧富の差も激しい。その現実を見て、体験して、倫理の授業のテーマでもある自分・他者・世界とのつながりを考えることが狙いです」と語る。「ベトナムの今を肌で感じ、アジアの活気、暮らしぶりや考え方の違いに直面することで何かを感じてもらいたい」

 2019年度の「ベトナムスタディツアー」は8月19~23日の日程で実施され、高1生17人が参加した。現地では、同校の母体である聖心侍女修道会が支援する小学校を訪問してボランティア活動を行い、ベトナム戦争の激戦地を見学し、戦争の爪痕の深さや平和について考えた。

 ツアーに参加した石本(のどか)さん(高1)は現地での体験をこう話す。「小学校ではボーリングや輪投げ、折り紙などで遊びました。子供たちはとても人懐こく、抱きついて歓迎してくれましたが、午後に彼らの自宅を訪問した際はショックを受けました。路地に入ると、今まで嗅いだことのない匂いがしました。家は暗く狭く、そこで小さな兄弟たちが仕事から帰る両親を待っていました。学校で見た彼らの笑顔と、この現状が頭の中で結び付かず、小学校は子供が子供らしくいられる数少ない場所なのだと知りました」

 生徒たちは初日の夜、自主的に反省会を開き、子供たちともっと良い接し方ができないか話し合ったという。石本さんは「私に何ができるか答えは出ていませんが、この現実を多くの人に伝え、知ってもらうことから始めようと思っています」と話す。

 「現地の子供たちと過ごし、境遇を知ることで生まれた葛藤が、他者に寄り添う姿勢に生かされることを願っています。このツアーは今後も継続していく予定です」と小野教諭は話す。18年度のツアーに参加した生徒たちは、その後、自主的に募金を開始した。また、生徒会も何か協力したいと、全校に呼びかけて英語の絵本を集め、寄贈をしている。

リーダーシップ研修で、世界中に仲間を作る

「ボストンカレッジ夏季研修」では芝生に座って同世代と意見を交わした
「ボストンカレッジ夏季研修」では芝生に座って同世代と意見を交わした

 「ボストンカレッジ夏季研修 Ever to Excel」は、今年で2年目になる。芝崎教諭によると、このプログラムは米マサチューセッツ州にあるイエズス会系のボストンカレッジで行われているリーダーシップ研修で、アメリカの各州やアイルランド、ベネズエラなどから200人近い高校生が参加し、無償の愛、友情、奉仕とは何かを深く考える内容となっている。このプログラムに日本から参加している学校は、近隣校の栄光学園と清泉女学院だけだという。

 「決して堅苦しいものではありません。生徒たちは、緑豊かなキャンパスのあちこちで芝生に輪になって座り、同世代の仲間と意見を交わす経験はとても楽しかったと言っていいます。地下の聖堂でろうそくの光を見つめながら一日を振り返るミサも、生徒たちに強い印象を残したようです」

 2019年は7月27日~8月4日の9日間で行われ、高2生6人、高1生4人の計10人が参加した。

 参加した瀧川遥菜さん(高2)は「現地では、毎日講義でテーマを与えられ、その後10人くらいの小さなグループでディスカッションをしました。ネイティブの英語のスピードには少し苦労しましたが、大学生のメンターがとても親切にサポートしてくれて、次第に自分の意見を言えるようになりました」と話す。

グローバルプログラムを進める小川教頭(左)と、進路指導研究部の芝崎教諭
グローバルプログラムを進める小川教頭(左)と、進路指導研究部の芝崎教諭

 瀧川さんが、言葉に詰まったとき、「調べてもいいですか」と尋ねたところ、逆に「分からないことをうやむやにしないのは偉い」と励まされ、人の温かさを感じたという。レクチャーやディスカッション以外にもコンサートや夕食に出かけたり、ボストン観光を楽しんだりして、交流の輪を広げた。

 「滞在中はずっと温かい雰囲気に包まれ、自分は受け入れられていると実感しました」と瀧川さんは振り返る。「知り合った人たちは、『日本に行くことがあったら必ず連絡する』と言ってくれました。SNSでのやり取りも続いていて、近況をアップするとコメントを寄せてくれます」

 第1回の研修を引率した小川幸子教頭は「大学生たちはとても献身的にサポートしてくれて、生徒たちは大切にされていることを肌で感じ、勇気をもって一歩踏み出すことができました」と話す。

 清泉女学院には大切にされている「10の価値」があるという。その中で中心となるのは「愛」だといい、自己受容と他者への奉仕とも言え換えられている。これらの「異文化体験・国際理解」プログラムを通して生徒たちが学んでいる多文化共生も、この「愛」の実践にほかならないのではないだろうか。

 (文・写真:山口俊成 一部写真提供:清泉女学院中学高等学校)

 清泉女学院中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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