国際科学コンテスト入賞 後輩に探究心伝授…佼成学園

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 佼成学園中学校・高等学校(東京都杉並区)を今春巣立った卒業生が、世界最大規模の高校生らの科学コンテスト「インテル国際学生科学技術フェア2018」(ISEF)で優秀賞に輝いた。植物に寄生するアブラムシの種分化について、高校時代に地道に取り組んだ研究を英語で発表し、評価された。後輩の生徒たちにも、探究心の大切さを伝言として残したようだ。

アブラムシの葉の好み 屋上ビオトープで発見

ISEF優秀賞をたたえた文部科学大臣からの表彰状を手にする井川君とサイエンス部顧問の上野教諭
ISEF優秀賞をたたえた文部科学大臣からの表彰状を手にする井川君とサイエンス部顧問の上野教諭

 この卒業生は慶応大学環境情報学部1年の井川恭平君。同コンテストは世界81か国・地域の約1800人の高校生らが参加し、今年5月に米国ペンシルベニア州ピッツバーグで開催された。この3月に佼成学園高を卒業した井川君は「アブラムシの種分化と寄主植物」(英文タイトル「Evolution of aphid species due to host plant preference」)と題した研究論文を英語で発表。動物科学部門優秀賞3等を受賞した。

 研究のきっかけは高校1年の夏。同学園のサイエンス部に入っていた井川君は、校舎屋上に設けられた人工水辺空間「ビオトープ」で、ガマの葉に集まったアブラムシを駆除していたときに、同じものが隣のキショウブにはいないことに気づいた。

 「なぜだろう」と疑問を抱いた井川君は、このアブラムシがガマに集まりキショウブを避ける理由を明らかにしようと、観察や実験をするとともに、それらの葉に含まれる成分を調べるなどの研究に取り組み始めた。

別種なのにほぼ同じ遺伝子配列 進化プロセスに着目

校舎屋上のビオトープ
校舎屋上のビオトープ

 ガマとショウブの葉には、それぞれ姿形が異なるアブラムシが寄生する。図鑑で調べると、ガマノハアブラムシとショウブアブラムシという別種に分類されていた。しかし、井川君の研究はそれに疑問を投げかけていく。

 井川君はインターネットで調べたアブラムシの研究者に連絡をとって、助言を仰いだ。中でも産業技術総合研究所つくばセンター(茨城県つくば市)の生物プロセス研究部門主任研究員が好意的に協力してくれて、専門的アドバイスを受けられたという。アブラムシの標本を作製して形状の観察を深める一方、遺伝子解析も行うことができた。

 その結果、別種とされていたガマノハアブラムシとショウブアブラムシの遺伝子の塩基配列がほぼ一致するという、予想外のデータが得られた。元々は同じ種だったが、ガマとショウブの餌のすみ分けを行う過程で、共通の祖先となるアブラムシから種分化しつつある途中段階である可能性が極めて高いという結論に至ったという。「インテル国際学生科学技術フェア2018」では、両者は別種というより亜種レベルの違いで、種分化の過程にあると発表した。

 井川君の研究は、アブラムシは植物の葉の成分に誘われ、すみ分けるという事実を明らかにするとともに、昆虫の進化のプロセスに着目して研究を進めることで、大きな実を結ぶことになった。

最初は学園文化祭 学生科学賞から世界の舞台へ

文化祭でのサイエンス部の展示
文化祭でのサイエンス部の展示

 高校1年の夏に始まった井川君のアブラムシ研究は、最初は秋の同校文化祭での展示発表だった。その後、産業技術総合研究所つくばセンターでのプレゼンテーション、生物の教師が集まる学会でのポスター発表を体験。さらに1都3県の中高生による「首都圏オープン生徒研究発表会」で最優秀賞を受賞した。「研究と発表がどんどん楽しくなっていきました」と井川君。

 そして、研究内容に磨きをかけ、高校2年のときには第60回日本学生科学賞(読売新聞社主催)の全国の中央審査で優秀賞に輝いた。さらに研究を深めて、翌年の高校3年のとき同賞に再度エントリーしたものの、東京都の審査で予選落ちしてしまった。「このときはショックだったようです」と、井川君が高校時代に所属したサイエンス部顧問の上野裕之教諭は話す。

 しかし、井川君はあきらめず、日本学生科学賞の代表の1人として、世界的な科学コンテスト「インテル国際学生科学技術フェア2018」への出場権を獲得する。プレゼンテーションも質疑応答も英語のため、当初は「そんな語学力はない」と不安でいっぱいだった井川君だが、研究助言をしてくれた大学教授や上野教諭、過去のISEF出場経験者、同校の英語担当教師らのアドバイスを受け、高校卒業後の今年5月、念願の世界の舞台に立った。

アブラムシ一色の高校生活 一時は成績不振に

中学の学年主任だった南井秀太教諭
中学の学年主任だった南井秀太教諭

 佼成学園での中高6年間について、井川君は「男子校なので、みんなとの距離が近くて人づきあいが楽でした。とくに文化祭の空気感が好きでした」と振り返る。部活動は鉄道研究部、バドミントン部、コンピュータ部と幅広く参加し、最後に熱中したのがサイエンス部だった。

 中学時代の学年主任だった南井秀太教諭は、井川君について、「物静かなタイプでした。同級生たちも彼の今回の受賞を聞いて、『どこにそんな才能が隠れていたのか』と驚いているようです」と話す。

 ただ、探究心は人一倍あった。サイエンス部顧問の上野教諭には、こんな思い出がある。あるとき、校舎屋上のビオトープで鳥の亡きがらが横たわっているのを見つけた井川君は、おもむろに部室に持ち帰り、死因などを調べ始めたという。「その行動力と探究心に可能性を感じました」と振り返る。

 実は井川君は高校時代、休み時間も授業中もアブラムシ研究のことが頭から離れず、没頭するあまり学業成績は伸び悩んだ。高校2年の三者面談では、成績不振を心配する井川君の保護者に、上野教諭が「勉強は僕が見ます。なんとか研究を続けさせてください」と頭を下げたこともあったという。

多様性受け入れる環境、生徒の個性伸ばす

 その後、アブラムシの研究を続けた井川君はサイエンス部の部長を務め、日本学生科学賞の実績も評価され、慶応大学環境情報学部のAO入試に合格した。井川君の探究心を大切にして、励まし続けた教師、そして生徒それぞれの多様性を認め合う同学園の環境が、井川君の個性を伸ばしたのだろう。

 「先生たちは、上から抑え付けるようなことはまったくしません。勉強で分からないことを質問に行けば、とことん教えてくれます。僕の研究でも、上野先生がとことんつきあってくれました」と井川君は感謝する。

 井川君は将来の夢について、「好きなテーマを見つけて研究ができ、それでご飯が食べられることです」と研究者の道を歩む自分を思い描く。

 世界的コンテストでの井川君の受賞は、後輩の生徒たちが「科学の目」を養う一つのきっかけにもなったようだ。大自然の中でフィールドワークを行う同校の「自然教室」では、そこで不思議に感じ、興味を持ったことを生徒たちがまとめ、それを総合的な学習につなげていく取り組みを始めたという。「生徒たちの探究力が育まれていくと思います」と上野教諭は期待する。

 自分の探究心を大切にして、世界の舞台で研究成果を披露した井川君。その姿を見て、「自分もいつかは」とあこがれる後輩たちが、また新たな一歩を踏み出していくに違いない。

 (文:田村幸子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:佼成学園中学校・高等学校)

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45132 0 佼成学園中学校・高等学校 2018/10/23 05:20:00 2018/10/23 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181018-OYT8I50011-T.jpg?type=thumbnail

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