【特集】スタートから1年、見えてきたグローバルコースの個性…佼成学園

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 佼成学園中学校・高等学校(東京都杉並区)の「グローバルコース」が始動して1年が経過した。世界の諸課題をテーマに、教科を横断する授業やフィールドワーク、アントレプレナーシップ(起業家精神)育成プログラムなどに取り組む中で、生徒たちはリサーチ力やプレゼンテーション力が磨かれ、早くも学習姿勢などに変化が見えてきたという。同コースの英語の授業をリポートし、目的や特徴を取材した。

英語のみでトランスジェンダーの問題を考える授業

グローバルコースの目的について話す北野教諭
グローバルコースの目的について話す北野教諭

 「本校は『平和な社会の繁栄に役立つ若者の育成』を建学の精神とし、2021年に新設したグローバルコースでも、『世界平和実現のために貢献できる真のグローバルリーダー』の育成を目指しています。社会を知り、自分を知ることを突き詰めることで、さまざまな人の『困った』を解決できる人材を育てることが、このコースの狙いです」。グローバルコースプログラムディレクターの北野尚之教諭は、こう語る。

 そうした目標を達成するために、グローバルコースでは「協働できる人」「多様性を認め自己を表現する人」「批判的思考を持つ人」「グローバルな思考を持つ人」「開かれた思考を持つ人」「主体性のある人」という六つのコンピテンシーを備えた人物像を設定して育成に取り組んでいる。中学では、体験を通した気付きを重視し、高校では日々の授業を通して、六つのコンピテンシーを伸ばす工夫を盛り込んでいるという。

 北野教諭は、「高校での授業は基本的に世界の社会課題を中心に据え、解決に向けて探究する内容です」と語る。「生徒はリサーチをしてエビデンスを集めたり、ディスカッションで他者とアイデアを出し合ったりして、課題に対する自分なりの解決法を考え、ときにはチームでプレゼンテーションを行います」

 こうした教育方針が授業にはどう反映されているのか。昨年10月16日、高校のグローバルコース1年生の英語の授業を見てきた。グローバルコースには帰国生も多いため、一般クラスのほか、英語の運用能力の高い生徒を対象とした「SEクラス(Super English Class)」を開設している。

「SEクラス」の英語の授業では、小説を題材に英語で多様性について考えていた
「SEクラス」の英語の授業では、小説を題材に英語で多様性について考えていた

 「SEクラス」では、ネイティブの教員が約10人の生徒に英語のみで授業を行っていた。アメリカで出版されたアレックス・ジノの小説「GEORGE」を題材とした授業が昨年4月から続いており、この日は、トランスジェンダーの主人公や周囲の登場人物についてのキャラクター分析が課題で、生徒たちは2、3人のグループに分かれて活発に英語で話し合っていた。授業の狙いは、高い英語力に一層の磨きをかけるだけでなく、多様性について考えることにあるという。

 この授業に参加した帰国生の渡邉翔太朗君(当時高1)によると、授業では、主人公がトランスジェンダーであることを親友にカミングアウトした時の気持ちについてディスカッションしたという。グローバルクラスの授業については「英語に限らず、ディスカッションやリサーチをすることが多いので、リサーチ力が上がったと思いますし、授業で分からなかったことはロイロノートで質問するなど先生とコミュニケーションが取りやすいので、いろいろな知識が、英語だけでなく日本語でも身に付いていると感じ、とても楽しいです」と話した。

 一般クラスの教室では、アフリカの砂漠化や食糧難など環境問題をテーマにしたテキストを使って英語の授業が進められていた。この日は、ネイティブと日本人の教員がペアとなり、テキストに出てくる単語や熟語を教えていたが、今後は環境問題に関するディスカッションなどを行うという。

教科を横断して社会課題を探究するプロジェクト

「教科横断プロジェクト」で、社会の課題について議論する生徒たち
「教科横断プロジェクト」で、社会の課題について議論する生徒たち

 グローバルコースでは高校生を対象に毎学期2回、教科の枠を取り払った「教科横断プロジェクト」も実施している。その目的について、北野教諭は「社会の課題は教科でぶつ切りできるものではありませんし、各教科で進められる学びにも限界があります。そこで教科を横断して社会の課題を探究するプロジェクトを始めました」と説明する。

 国語と生物を結びつけたプロジェクトでは、国語の授業で日本の里山に関する文章を読み、生物の授業で生態系について学んだあと、校内で生徒たちによる「森林サミット」を開催し、人間と自然の共生について考え合ったり、世界の国々の森林伐採などの課題解決を提起したりした。また、国語の授業で命に関する倫理的な観点について学び、生物の授業でゲノム編集について学んだあと、「デザイナーベビー」について考え、最後にディベートを行うプロジェクトも進行している。

 北野教諭は「国語は思考を整理する際に不可欠ですし、生物学の知識がないと議論が上滑りしてしまいますから」と教科横断的な授業の意義を強調する。「教科横断プロジェクトを始めて1年ですが、すでに生徒の変化が見られます。『森林サミット』では、生徒が国語と生物だけでなく地理の教科書を使ってリサーチをするなど、自ら教科を横断し始めました。さらに、横断プロジェクトの波及効果で、各教科でのディスカッションも増え、生徒は人前で話すことに、かなり慣れたと思います」

 プロジェクトに参加した藤山慶人君(当時高1)は、「教科横断プロジェクトは、なかなか体験できない授業なので、やりがいがあって楽しいです。僕は中学の頃からザリガニの研究をしていますが、このプロジェクトで論文を探したり、問題を掘り下げたりする経験ができ、自分の研究にも役立っています」と話した。

米国の投資家へのプレゼンを目指す独自プログラム

 グローバルコースではこのほか、フィールドワークとアントレプレナーシップ(起業家精神)育成プログラムにも力を注いでいる。

 2021年度はコロナ禍の影響で実施できなかったが、中学では1年次にモンゴルで異文化体験、2年次にマニラで平和学習、3年次にはタイでのフィールドワークを行う。高校では、アントレプレナーシップの養成と社会課題の解決を主眼とする探究プログラム「Project:LEAP(プロジェクトリープ)」を実施する。このプロジェクトでは、1年次にベトナムへ研修に行き、現地の社会課題を見つけて解決策を考える基礎講座を開く。その後、応用講座として、生徒がグループごとに社会課題に関するテーマを決め、解決のための商品やサービスの開発、検証、モニタリングなどを行い、高2の3月にアメリカ・ボストンで現地の若手投資家にプレゼンテーションをする計画だ。

 このプロジェクトに参加する山手陽南太君(当時高1)は、「日本風のタコスを作って、世界にあまり知られていない日本の下町文化を広めたいです。また、タコスを通じて多様性について考えたいと思っています」と話す。「プロジェクトでは、スケジュールや予算など、一つ一つのプロセスをしっかりと考えて進めることが必要なため、段取り力が身に付きました。また、普段の授業でもプレゼンが多いので、友達の発表から学ぶことも多く、それがプロジェクトにも生かされています」

 日々の授業に始まり、教科横断プロジェクトやアントレプレナーシップ育成プログラムなど、グローバルコースでは六つのコンピテンシーを伸ばすためのユニークな教育が展開されているが、北野教諭は、「多様な視点を持った生徒が集まることそのものも、グローバルコースの特徴です」と語る。

 「グローバルコースは中入生と高入生の割合が半々ですが、中入生の中には、20年まで行っていた成績上位希望者を対象とした『グローバル・リーダー・プロジェクト』で、モンゴルやフィリピンで異文化を体験した生徒がいますし、高入生の中には多様な国からの帰国生がいます。そのためディスカッションをすると、いろいろな視点から多彩な意見が集まり、一つの課題に対する切り口がどんどん広がっていきます。そうした魅力的な環境を生かし、これからも六つのコンピテンシーを培うカリキュラムを進めていきたいですね」

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:佼成学園中学校・高等学校)

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