小学に続き、中学にも国際バカロレア教育を導入…聖ヨゼフ学園

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 聖ヨゼフ学園中学・高等学校(横浜市)は7月、国際バカロレア教育のMYP(中等教育プログラム)候補校として認定された。昨年、学園の小学校は国内初のPYP(初等教育プログラム)認定校となっており、国際水準の教育体制が整いつつある。「信・望・愛」を校訓に掲げ、自分らしく輝ける人を育てるという同校の教育理念とIB教育との関わりや、来年予定している共学化について清水勝幸校長と武田けい子教頭に聞いた。

教育理念とIBの使命の共通性

清水勝幸校長(右)と武田けい子教頭
清水勝幸校長(右)と武田けい子教頭

 聖ヨゼフ学園は1953年、アメリカの男子修道会「アトンメントのフランシスコ会」によって横浜市鶴見区に設立された「鶴見聖ヨゼフ小学校」に始まる。清水勝幸校長によると「アトンメント(atonement)」という言葉には、「和解」や「一致」という意味があり、異なる考えを持つ人が歩み寄り、一つになるという考え方を示すという。

 同校が国際バカロレア(IB)教育を導入するに至ったのは、この精神と関わりがある。清水校長はこう説明する。「グローバル化が進む現代においてこそ、アトンメントの思いを受け継ぐことが大切だと感じています。『多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成』という『IBの使命』は、本校の教育と非常に共通点が多いことから、IB教育の導入を決めました」

 IBには、3~12歳対象のPYP(初等教育プログラム)と、11~16歳対象のMYP(中等教育プログラム)、16~19歳対象のDP(ディプロマ資格プログラム)の三つのカリキュラムがある。

 聖ヨゼフ学園では、中学・高等学校に先駆けて、5年前から小学校でPYP認定の準備を進め、2018年1月、国内の小学校として第1号の認定校になっている。今回、中学・高等学校がMYPの候補校になったのは、小学校のPYP認定に加えて、数年前からクリティカルシンキングや「論理エンジン」などの国語教育と、伝統的な英語教育を中心とした言語教育の充実に力を注いできたことが評価されたとみられる。

 教員たちもIB教育の研修を受け、ワークショップに参加し、先進校を見学するなどして、準備を進めてきた。体育教員でもある武田けい子教頭は、IB教育先進校の一つである札幌市立札幌開成中等教育学校を視察した印象をこう話す。

 「生徒全員が生き生きとした表情で授業を受けていました。授業では、『どうしたらいいと思う』『どうすればうまくいくと思う』『そうやって解決したんだ』『それは先生も気づかなかったな』と頻繁に声かけが行われていました」

 この経験から武田教頭は、「教員の役割は教えるのではなく、考えを促すこと。本校でも以前からそうした問いかけは意識してきましたが、評価を明文化するなど、見える化することが必要でした」と振り返る。

 清水校長も「私が感銘を受けたのは、別の授業で高3の生徒が中1の生徒の発表に対して敬語で質問していたことです。発表の内容は高3生から見れば幼いはずですが、だからと言って下に見るようなことはなく相手を尊重していた。それはまさにIBの基本精神だと思いました」と語る。

プロセスを重視の授業で誰もが達成感

IB教育の研修を受けて準備を進める教員たち
IB教育の研修を受けて準備を進める教員たち

 IBは、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与えるためのルート作りを目的としているが、決まった教材はないので、教員、学校ごとに授業の中身は異なる。聖ヨゼフ学園では2019年秋からIB教育に基づいた授業を開始する予定だが、その授業は具体的にどのように進められるのか。

 武田教頭は体育科で試行したリレーの授業を例に説明する。「リレー競技は、各自のタイムを単純に合計したより、記録が良くなるところに面白さがありますが、走るのが好きな子もいれば、苦手な子もいるので、チーム分けには苦労していました。そこでグループのプラス効果が実感できるように、バトンゾーンだけを取り上げてみました」

 まず、各自が自由に走ったタイムを計り、次に走る順番を変えたらどうなるか、バトンゾーンのどの位置でパスをすればタイムが短縮できるか、どちらの手で受け取ると速いか、などを生徒同士で探求させた結果、どのグループも最後には大幅にタイムを縮めることができたという。

 タイムそのものをグループ間で競うのであれば足の速い生徒がいるグループが勝つ。しかし、各グループ内でタイム短縮のための工夫をしていくプロセス重視の授業では、誰もが達成感を得られる。「これがまさにIB教育で、リレーの授業は面白かったという感想が多く集まりました」と武田教頭は話す。

 同校はこうした方法をさまざまな教科で取り入れる方針だ。IB教育は一度作り上げたら終わりではなく、毎年更新していくという。教員も試行錯誤しながら授業を作り上げていく必要がある。

 基礎学力ももちろん重要であり、教科ごとに工夫しながら基礎を学ぶ時間を確保し、基礎学力の底上げも図らなければならないが、その点、同校には少人数教育の伝統があり、教員全員で生徒をフォローする体制が整っているので、IB教育を導入しやすい環境だと言える。

 清水校長は「教員にとっては大変ですが、生徒が授業に意欲的に参加し、その成長を実感するための努力であれば、やりがいも大きいはずです」と期待を込めた。

共学化によってIB教育の効果はさらに高まる

来年共学化を予定し、中学にも国際バカロレア教育を導入する聖ヨゼフ学園
来年共学化を予定し、中学にも国際バカロレア教育を導入する聖ヨゼフ学園

 同校は、2020年に共学化というもう一つの大きな改革に取り組む。これについて清水校長は「共学化は神奈川県内のカトリック校では初めてのことですが、IBは異なる価値観を受け入れる多様性が基本です。生徒が互いに尊敬し合い、協力し合って学び、成長するIB教育は、共学化によってさらに効果が高まると期待しています」と話す。

 同校は今後、MYPの認定からさらにDPの認定を受けることを計画している。PYPからMYPは原則全員が履修し、DPは15~20人の選抜になる予定だ。これが実現すれば同校はPYPからDPまでを継続して学ぶことができる国内でも数少ない学校になる見込みだ。

 清水校長は「もちろん本校はIB教育だけではありません。伝統の人間教育の下で、自分らしい進路、自分らしい人生を歩んでいけるよう、生徒一人一人をサポートしていくことに変わりはありません」と話す。

 同校の教室には、「自分を大切に生きる」という教育目標が掲げられている。自分の価値を認め、大切にすることができる人は、他者の価値を認め、思いやる心を持てるようになるという思いが込められているそうだ。こうした同校の教育は、IB教育を取り入れることによって、さらに輝きを増すことだろう。

 (文・写真:山口俊成 一部写真提供:聖ヨゼフ学園中学・高等学校)

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908859 0 聖ヨゼフ学園中学・高等学校 2019/11/22 05:22:00 2019/11/22 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191120-OYT8I50020-T.jpg?type=thumbnail

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