IB中等教育プログラム、中1でスタート…聖ヨゼフ学園

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 国際バカロレア教育の中等教育プログラム候補校である聖ヨゼフ学園中学校(横浜市)は、今年度入学の中1生を対象に同プログラムによる授業をスタートした。目標と過程を生徒に理解させて進める授業方法や「グローバルな文脈」を意識した探究など、独特なプログラムについて聞き、授業の様子を紹介する。

目標と、そこに至る過程を理解してから授業に臨む

IBの導入について話す清水勝幸校長
IBの導入について話す清水勝幸校長

 国際バカロレア(IB)の導入について清水勝幸校長は、「本校の初代校長・勝野巌神父は、『私たちは、この世のさまざまな問題を他人事(ひとごと)にせず、自らの課題として積極的にとらえ、人々の真の平和と幸福を創り出す人を育てる教育を目指す』という言葉を残しています。この精神がIBの使命に一致することが、導入を決めたポイントです」と話す。

 IBは、国際的に通用する大学入学資格の付与を目的として、1968年にスイスで始まった世界共通の教育プログラムであり、「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を目標に掲げている。確かに初代校長の唱えた精神と目指すところは一致しているようだ。

 同校では、こうしたIBの理念を踏まえて、今年度入学の中1生に向けて、全科目、独自の授業を作り上げた。授業は「ユニット」という単元ごとに進められ、各教科の担当教員がユニットの構成や授業内容を計画する。

IBコーディネーターとして授業全体の調整を図る吉野英男教諭
IBコーディネーターとして授業全体の調整を図る吉野英男教諭

 IB推進部の吉野英男教諭は、「IBコーディネーターとして、各科目で探究する概念などに偏りがないか調整します。また、教員に研修を行い、保護者の理解を深める資料を配布するなど周囲の大人も生徒と共に考え、共にIBの目標に向かう環境を整えています」と話す。

 各ユニットの最初の授業では「ユニット概要説明書」を生徒に配布する。説明書には学習スケジュールや、ユニットで目指す「重要概念」「関連概念」「グローバルな文脈」「探究テーマ」などが記されていて、生徒はユニットの目標と、そこに至る過程を理解してから授業に臨む。さらに、各ユニットには発表などの最終課題と、それまでの学習を振り返る時間も設けられている。

 IBと従来の授業との大きな違いは評価の仕方にあるという。IBでは定期テストは行わず、ユニットごとに、最終課題とそこに至る過程を評価していく。「ユニット概要説明書」には評価基準が明記されていて、生徒はそれを踏まえて授業を受ける。

 清水校長はIBの評価方法について、「従来のテストでは、模範解答と異なると『×』がつきました。しかし、IBは最終課題に至る探究の過程を評価することが大きな魅力です」と話す。「生徒一人一人の考えを大切にしつつ、目標に向かうことがIBの面白さであり、そこに正しい答えはありません。それは社会も同じ。今回のコロナ禍でも、どう行動すべきか明確な答えはなく、おのおのが自分の判断を求められます。IBは、正解がなく、日々変化する社会にふさわしいプログラムだと思います」

クラスメートと意見交換して多様な視点を知る

「ガイドブックを作ろう!」をテーマに進められた中学1年生の社会科の授業
「ガイドブックを作ろう!」をテーマに進められた中学1年生の社会科の授業

 IBを導入して約1か月たった7月7日、中等教育プログラム(MYP)に基づく中1の社会科の授業を見てきた。ユニットのテーマは「ガイドブックを作ろう!」。18回の授業の中で、生徒は興味のある国を一つ選び、その国に関する情報を集め、「何を知り得たのか」を整理してポスター発表を行う。その過程で、「人間の生活空間は、与えられた環境によってつくられる」という探究テーマや、「時間・場所・空間」という「重要概念」、「アイデンティティーと関係性」という「グローバルな文脈」など、プログラムが定める目標を目指す。

 この日の授業はユニット1の6回目の授業だった。前回の授業では実際のガイドブックを見て、「ガイドブックとは何か、どのような工夫がされているか」などを考えた。今回はまず、その内容を振り返り、共有したうえで「ガイドブックのテーマとなる国を選ぶ」という新たな課題に取り組んだ。

 同校は中学1年生全員にタブレットを貸与し、グーグル社が提供する学習支援システム「クラスルーム」を使っている。それによって生徒は、自分の考えをタブレット上でまとめることができる。この日も「ジャムボード」という機能を使い、めいめい自分が探究したい国や、その国に引かれる理由、そこから連想される言葉を書き出していった。フランスを選んだ生徒は「おしゃれだから」、オーストラリアを選んだ生徒は「コアラが見たいから」、中には「ソ連」を選んで「スターリン」「共産主義」という言葉を書き出している生徒もいた。

 授業を受けた男子生徒は、「タブレットなら、言葉では表現できない考えを動画に撮って表現したり、アンケートを作って意見を集めたりできるので、自分の考えを相手に伝えやすいと思います」と話した。

IBを踏まえた社会科の授業を計画した春谷麻木教諭
IBを踏まえた社会科の授業を計画した春谷麻木教諭

 授業を担当した春谷麻木教諭は、「このユニットの目的は、ガイドブックを完成させることではありません。その過程の中で、一人一人が自分なりの考えをまとめ、クラスメートのさまざまな視点を知る。また、自分の暮らしや文化と、興味のある国を比較することで、何かを見つけてくれたらと思います」と話す。

 「自分の好きなアイドルやスポーツと結びつけて探究する国を選ぶと、『なぜ、あのアイドルは日本でも人気なのか』など、その国と日本との関係を考え、学習を深められます。生徒には、身近なものから学習できることに気付いてもらいたいですね」

 このユニットは、生徒にとって中学校での学習のスタートとなるため、まずは自分一人で調べ、情報を集めることを中心に行う。その後で自分の視点にとらわれないよう、クラスメートと考えを交換する。授業を受けた女子生徒は、「小学校の授業では、あまり友達と意見交換する機会はありませんでしたが、この授業では意見交換できるのが楽しいです。また、発言できなかったとしても、ジャムボードを使うと簡単に文字で表現でき、考えをまとめやすいです」と感想を話した。

他者との特性の違いを魅力的に感じられるように

 IBに基づく授業は始まったばかりで、生徒の変化が見られるのはこれからだ。清水校長は「IBでは教える側も教わる側も共に学び続け、生徒と教員が学ぶ面白さを共有することが大切です」と話す。国語科担当の熊澤正勝教諭は、「常に自分自身が情報をインプットしていかないと、新しい発想でアウトプットできません。新しい情報や考えを取り入れるため、読書量が増えました」と自身の変化を語った。

 今後の授業について清水校長は、「本校ではIB導入前から、生徒には『変わることを恐れないで』『自分や友達を決めつけないで』と伝えてきました。今後もIBの授業を通して、一人一人の個性を大事にしていきたいと考えています。といっても、個性だけをとがらせるわけではなく、他者との違いに違和感を覚える社会を乗り越えていくことが重要です」と語る。

 「現在に至るまで、世界では価値観の違いが争いの元になることもありました。しかし未来では、価値観の違いは大きな力になると思います。今後はIBを通して、生徒が『違う特性を持つ人が集まることは魅力的だ』と感じ、生徒も教員も『ヨゼフで共に学んでよかった』と思える輪が広がればと思っています」

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート)

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1451924 0 聖ヨゼフ学園中学・高等学校 2020/09/04 05:22:00 2020/09/04 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200903-OYT8I50023-T.jpg?type=thumbnail

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