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【特集】サイエンス分野の探究授業で「志」を育てる…山脇学園

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 山脇学園中学校・高等学校(東京都港区)は、中学1~3年を対象に必修の探究授業を設定している。理数分野の授業では、観察、討論、発表などを通して思考力と表現力を鍛え、さらに社会との関連の中で思考の幅を広げていく。最終的には生徒に自らの生き方を考えさせることで「志を育てる」という教育理念の実現に結び付けるという。この授業を取材し、同校のサイエンス教育を紹介する。

観察から思考、討論、発表へ

ホウセンカの茎などを顕微鏡で観察し、図を描く生徒たち
ホウセンカの茎などを顕微鏡で観察し、図を描く生徒たち

 同校は三つの探究学習施設を備えている。思考の場「サイエンスアイランド(SI)」、判断の場「リベラルアーツアイランド(LI)」、表現の場「イングリッシュアイランド(EI)」だ。

 このうちSIの施設を活用した探究授業として、2011年度から中1、中2を対象とする「サイエンティストの時間」、昨年度から中3を対象とする「探究基礎」が実施されている。

 探究・校外学習主任で生物科担当の大島悠希教諭によると、「サイエンティストの時間」は、理数分野のさまざまなテーマを切り口とする探究活動の入門編であり、「探究基礎」は中1、中2で学んだことに社会領域のテーマを関連させて研究する応用編だ。

 大島教諭は、「中1では、思考のベースとなる観察力を育てるのが主目的です。書けることが理解の一歩。対象をありのままに見て、スケッチし、文章にする練習をします」と話す。

 9月4日に、同校を訪ねて授業を見てきた。1年生は「サイエンティストの時間」に、ホウセンカの茎とタマネギの根を顕微鏡で観察し、図に描く作業を行っていた。黒板には、担当の井上健介教諭が書き込んだ「輪郭を明瞭に書く。曖昧な線を書かない」「細胞の形の違いが役割の違いに対応」などの注意事項が並んでいる。

 生徒たちは真剣に顕微鏡をのぞき、注意深く鉛筆を動かしている。なかには隣の生徒と自分の描いた細胞の形が異なることに気付き、互いの顕微鏡をのぞいて意見交換する姿もあった。

 中1では、こうした動植物標本の観察のほか、屋外観察場の小川で採取した生き物を調べたり、シャーレの寸法を精密に測って円周率を求めたりと、多様な観察に取り組む。

 同じく「サイエンティストの時間」でも、中2では、グループで観察や討論を行い、ポスター発表にも取り組む。発表では情報の伝わりやすさを工夫したり、評価し合ってノウハウを共有したりと、協働作業の要素が加わる。

 中3の「探究基礎」も見てきた。この授業には大島教諭とLIを担当する社会科教員が共同で携わる。

 「一つのテーマを自然科学、社会科学の2方向から探究して思考の幅を広げます。現在は人体を共通テーマに、私が担当するSIの授業で『DNAの最適な抽出方法の発見』に取り組み、LIの授業では『脳死』について考えています」

中3の「探究基礎」の授業で行われたキュウリのDNAの抽出
中3の「探究基礎」の授業で行われたキュウリのDNAの抽出

 この日、SI内の「継続実験室」で行われた授業は、5回シリーズの2回目だった。第1回の実験で学んだDNA抽出の手順を踏まえ、2人1組で材料や抽出の際の薬剤濃度・温度などを検討し、出来るだけ多くのDNA抽出に挑戦する。

 「前回の実験で、理科の授業でも習ったように『DNAは細胞の核にある』という知識を確認しました。それに基づき、各自仮説を持って実験を行います。その思考過程と検証結果を来週からの3回でポスターにまとめ、発表します」

 生徒が持参した材料はキュウリ、キャベツ、タマネギなどの野菜や、魚の切り身、数品種の米などさまざまだ。実験中、大島教諭は各テーブルを回り、生徒の質問に答える。

 皆手際よく実験を進めたが、時間内に検証しきれないチームもあった。大島教諭は「次週も実験を続けていいけれど、5週目で発表できるよう計画を組み直すように」と指示。さらに「常に『なぜそうすることが必要か』『なぜそうなったか』を考える。興味だけでなく、根拠を持つのが探究です」と話し、授業を終えた。

 12月から3学期にかけては、まとめのグループ探究を行う。基本テーマを基に自分たちで課題を設定し、解決法を探る。

希望選択制のクラスで一層の科学研究

 自然科学の分野に関心の高い生徒が、さらなる探究活動を深める場も用意されている。中3の希望選択制クラス「科学研究チャレンジプログラム(科チャレ)」では、生徒は生物、PC、ロボットの3班に分かれ、火曜、木曜の放課後を中心に関心のある問題の探究に取り組む。

 活動拠点となる「継続実験室」には、研究成果のポスターや製作物が数多く展示されている。「サボテンの光の当て方による育ち方の違い(生物班)」「APP Inventorによる校舎案内アプリの作成(PC班)」「ギター演奏ロボット(ロボット班)」など、多様な研究が並ぶ。

沖縄県の西表島を訪ねての自然調査
沖縄県の西表島を訪ねての自然調査

 「科チャレ」クラスでは毎年5月、沖縄県の西表島を訪ねて自然調査をしたり、大学教授によるセミナーを受講したりする。今年度はコロナ禍のため3月に延期されたが、生徒たちは楽しみにしているという。

 さらに、部活動にも「SI部」があり、部員たちは自主研究して外部コンテストに参加するなど、意欲的に活動している。

 こうした探究心や科学の素養を持つ生徒を集めるために、同校は今年度から、「探究サイエンス入試」を導入した。

 試験科目は、基礎知識を問う「理科」(30分)と、科学的な姿勢を評価する「課題研究」(60分)だ。今年度の「課題研究」の問題は、「おもり入りのサイコロを作り、出る目の傾向を予想・検証してポスターにする」だった。

 昨年の学校説明会で「入試体験」を実施したところ、多くの受験生が関心を持ち、入試当日は定員10人に対して32人が受験し、7人が入学した。

 「既に合格が確定した生徒が『サイエンス入試を受けたい』と申し出る例もあり、終了後は『楽しかった』という声が多く聞かれました。入学者は将来をしっかり意識している生徒が多く、学年全体の刺激になるでしょう」と大島教諭は期待を込めた。

探究授業を楽しむ意欲的な生徒たち

探究・校外学習主任の大島教諭
探究・校外学習主任の大島教諭

 探究授業のあと、生徒たちに話を聞いた。「サイエンス入試」で入学した中1生は「『入試体験』で興味を持って受験した」と言う。「『サイエンティストの時間』は、実物を見ていろいろ試せるのが楽しい。興味が湧いて記憶にも残ります」。別の中1生も「サイエンティストの時間」は楽しいと言う。「実際に観察すると、教科書に載っていないことも分かり面白い。顕微鏡など、本格的な器具が使えるのもうれしい」

 中3生は、「探究基礎」の授業について、「理科や社会科の知識を組み合わせて考えるのが面白い」と話す。この生徒とペアを組んでいた生徒は、「科チャレ」生物班にも所属しているという。「『科チャレ』で生物への関心が高まり、将来の目標が見えてきました。ここが始まりだと思っています」と意欲満々だった。

 「本校の教育は『志を育てる』がキーワードです。知識・技能の習得に加え、これら得たものを使っていく活動を通して、自分のあり方や生き方を見出すことを目指しています」と大島教諭は語る。「『探究基礎』やサイエンス入試の導入により、生徒の『志』を育てるサイエンス教育プログラムは一通り整いました。今後は、美しさや感動などの感性を育むことも大事にしたい。また、EIとのコラボレーションも考えていきたい」

 「生徒には、何があるか分からない世の中を生き抜く力を付けてほしい」と大島教諭は話す。「自分のやり方で社会に貢献し、さらに楽しめることが理想。そのためにこそ必要な自分軸が『志』です。人生100年の中で、核となる考え方を6年間で身に付けてほしいと思っています」

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート 一部写真提供:山脇学園中学校・高等学校)

 山脇学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1655272 0 山脇学園中学校・高等学校 2020/11/30 07:00:00 2020/12/04 10:03:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201126-OYT8I50030-T.jpg?type=thumbnail

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