【特集】アウトプット型の学習で実践的な英語力を磨く…千葉日大一
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千葉日本大学第一中学校・高等学校(千葉県船橋市)は3年ほど前から、国際社会に通用する実践的な英語力を養成するためにアウトプット型の英語教育に力を入れている。スピーキング力を身に付けることが英語力向上のカギと考え、スピーチコンテスト、オンライン英会話、留学生との交流会など、さまざまなプログラムを用意して生徒に英語で発信させている。その取り組みと成果を英語科の担当教諭に聞いた。
スピーチコンテストで表現力とモチベーションが上がる

「私は33歳ですが、自分が中学校で受けてきたような英語の授業では、もはや今の時代に対応するのが難しくなってきました」と英語科の堀部佳孝教諭は話す。「かつての授業は、単語や文法を頭に入れるインプット型であり、表現する機会が少なかった。私たちが目指すアウトプット型の授業では、生徒に外に向かってどんどん表現してもらっています」
同校が、アウトプット型の英語教育に重心を移し、そのためのさまざまなプログラムを充実させてきたのは約3年前からだ。同校の英語科教員たちは、現代では、国際化社会に進んで飛び込んでいける、実践的な英語力が求められていると感じ、いかに英語によるコミュニケーション力を鍛えるかを議論してきたという。「もっと楽しく、英語を学んでもらいたい。そのためには、まずは英語で表現する力を身に付けてもらいたいと、考えたのです」とアウトプット型教育の着想を堀部教諭は話す。
「話すことに抵抗がなくなれば、生徒の英語力は飛躍的に向上します。英語で発言する機会を与える本校の数々のプログラムはその手助けをするものです。自信を付けて、英検の申し込みをする生徒が急増しており、成果は着実に上がっていると思います」
まず、目を付けたのは英語スピーチコンテストの拡充だ。それまで中学1~3年だけで行ってきた英語スピーチコンテストの対象を3年前から高2までに拡大した。

中学生はレシテーション(暗唱)とスピーチの2部門があり、高校生は与えられたテーマについて自ら原稿を作成した上でスピーチに臨む。中1から高2まで、各クラスでスピーチを競い、クラス代表の生徒によるスピーチコンテストが1、2月に校内の多目的ホールで行われる。コンテスト結果は全学年の生徒による投票で決まる。スピーチを聴く側だった生徒は「いつか自分も」と、意欲を抱くようになるという。
「コンテストを通してスピーキング力だけではなく、表現力も磨かれます。出場者は皆、英語を学ぶモチベーションを上げているようです」
生徒たちは着実にスピーキング力を伸ばしており、日本大学の付属校が一堂に会する「日本大学付属高等学校等英語スピーチコンテスト」でも、入賞の常連校となっているそうだ。また、地元・船橋市主催の「市中学校英語発表会」でも毎年入賞を果たしているという。
中学生には、英会話を学ぶだけでなく、教える立場に立つ機会もある。生徒は、隣接する系列の千葉日本大学第一小学校で、英語講座のチューターを務めることができる。ただし、チューターになれる条件は、英検3級以上だ。
「小学生に質問されて答えられないと恥ずかしい。本当の英語力がないと小学生には教えられないと気付くようです。チューター経験のあと、さらに上の英検に挑戦する生徒が多くいます」と堀部教諭は話す。
留学生との交流授業で多様な文化、価値観に触れる

2018年からは中3生を対象とする留学生との交流会も実施されている。日本の一流大学に在籍する各国の留学生たちを招き、中3生6人に1人の割合でグループを作って交流する授業だ。留学生たちは英語圏からだけでなく、アフリカ、南米、アジアの出身者も多い。英語を使うことで英語圏以外の人とも交流できることを、生徒たちは実感できる。それぞれの国の文化、習慣などを聞き、多様な価値観に直接触れて「英語をもっと話したくなった」「日本と違う文化があると知って驚いた」と話す生徒も多いという。
昨年は、5月に行われた京都・奈良への修学旅行のあと、中3生は名所を紹介するパンフレットを作成し、7月の交流会で留学生を相手に「1日ツアー旅行」のプレゼンテーションを行った。英語で日本文化を紹介する視点で修学旅行前から事前学習を行い、旅行中も現地の外国人旅行者に英語で話しかけて取材するプログラムも取り入れた。パンフレットは6人ほどのグループごとに作成し、その中でメンバー各自の担当箇所も決めた。当日の交流会では、約60人の留学生が参加してグループを回り、生徒たちはパンフレットの担当箇所ごとにツアーのポイントを1人ずつプレゼンテーションしたという。
オンライン英会話やフィリピン語学研修の導入
同校は、3年前から「オンライン英会話」も試験的に導入している。オンライン会話ツールを使ってフィリピンの先生にマンツーマンでレッスンを受ける。同校のプログラムでは、英検で自分が目指す級を取得するための対策にもなっていて、長期休暇中などに家庭学習の一環として、年間60回のレッスンが受けられる。
さらに今年度は、学校として1クラス分の台数のiPadを導入することから、まず高1の3学期に授業の一環としても「オンライン英会話」を取り入れる予定だ。また、来年度以降は、他の学年にも「オンライン英会話」の授業を広げたい考えだという。
このオンライン英会話が一つのヒントになって、2019年から、中3の希望者を対象とする1週間のフィリピン語学研修が始まった。スピーチコンテストや留学生との交流会で鍛えた英語力は、海外研修で試される。従来から用意されているオーストラリアとイギリスへの本格的な語学研修の前に、もう一段、英語力に磨きをかけるためのステップを設けようという狙いだ。
昨年3月に実施されたこの研修には、「使える英語を身に付けたい」と32人が参加した。語学学校の寮で生活し、マンツーマンの個人レッスンとグループレッスンで1週間英語漬けの日々を送る研修だ。最終日にはフィリピンと日本の文化の違いについて英語でプレゼンテーションを行った。20年3月は高1にも対象を広げて60人が参加予定だったが、コロナ禍の影響で見送りとなった。
フィリピン語学研修を体験したあと、高1、高2で英検準2級程度の力を持つ希望者を対象として実施されるのが、16日間のオーストラリア語学研修だ。シドニーから車で2時間ほどのニューカッスルの街で、ホームステイをしながらの研修を行う。
さらにオーストラリア研修の参加者から、日本大学の全付属高校の生徒を対象とした約3週間のイギリス・ケンブリッジ大学短期語学研修に参加する生徒もいる。定員は春休み実施のイースタープログラムが3人、夏休み実施のサマープログラムが2人で、筆記試験と面接で選抜される。期間中はケンブリッジ大学の教授による講義を受け、大学の寮に滞在する。同大学の学生が学習をサポートする密度の高い語学研修だ。
「いろいろなプログラムを始めて3年ほどですが、英検を自分から申し込む生徒が増えてきています。中学生で2級を取る生徒も10人ほどいるし、海外の大学を目指そうとする生徒も出てきました」と堀部教諭は手応えを語る。「英語でアウトプットする機会を一つでも多く準備することが本校のグローバル教育の役割と考えています。そのために、これからもプログラムの数を増やしていきたい」
(文・写真:水無瀬尚 一部写真提供:千葉日本大学第一中学校・高等学校)
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