英語で欧米の文化としての数学を学ぶ…國學院久我山

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 國學院大學久我山中学高等学校(東京都杉並区)は、グローバル教育やCLIL(内容言語統合型学習)などの考え方を組み合わせた特別講座「Math in English(英語で数学を学ぼう)」を実施している。夏休み中に中学生を対象として行われた講座を取材し、担当教員と受講生徒に話を聞いた。

「英語の方が伝わりやすいこともある」

「Math in English」を導入した経緯を話す川本ゆり子教諭
「Math in English」を導入した経緯を話す川本ゆり子教諭

 「昨年度まで校長を務めた今井前校長は、大学時代に英語で数学を学ぶ経験をし、『数学の用語や定義は、曖昧な日本語より英語の方が伝わりやすいこともある』と感じたそうです。そこで英語で数学を教えるオリジナルの教材を作り、授業で使っていました。それを学校全体に広げようと、2013年から始めたのが『Math in English』なのです」。「国際教育推進委員会」の主任を務める英語科の川本ゆり子教諭は、特別講座を導入した経緯をこう話す。

 同校は現在、6月中に1日、8月中に3日連続、11月中に1日、それぞれ2時間ずつこの講座を行っている。対象は、グローバル教育に力を入れる女子部CCクラス(Cultural Communication Class)の中1、中2生それぞれ40人と、中学男子部を含む他クラスの希望者だ。講師を務めるのは、中学・高校の英語教育や講師向け研修などに力を入れている英会話教室の主宰者ブライアン・ショウさん。ショウさんが監修した英語版数学問題集「SHIN-CHU-MON(新中問)」(教育開発出版)を主な教材に使っている。

 今回の講座は夏休み中の8月19~21日の3日間行われ、140人が参加した。

 初日の19日、会場の小講堂に集まった生徒たちには、事前に問題集「SHIN-CHU-MON2年版」と、数学の授業で使う用語や対話文の日英対照表が配られた。

「Math in English」を指導するブライアン・ショウさん(奥)
「Math in English」を指導するブライアン・ショウさん(奥)

 この日の午前10時半、講師のショウさんがにこやかに登壇して講座が始まった。ショウさんはまず、ウォーミングアップとしてスライドショーを使って欧米の数学の基礎知識を紹介した。

 五つずつ数をまとめて数える方法を「tally marks(画線法(かくせんほう))」ということ、その際、日本では「正」の字を並べ、アメリカでは縦線4本に斜め線1本を重ねて「5」を表すこと。さらに指で数を数える方法の違いやローマ数字の記数法、四則演算の英語表記などを紹介。途中、生徒たちと英語で対話しつつ、日本の人口など億単位の数を数字で読ませたり、数字を果物の絵に置き換えた「Fruit Algebra(覆面算の一種)」を解かせたりした。

 ウォーミングアップの後はこの日のメインテーマだ。カードゲームの「UNO」に図形や計算の要素を加えたオリジナルのパズル「Math UNO」を使い、クイズのような学習が始まった。

 「Math UNO」で使うカードは5色あり、それぞれに正方形や円、台形、ひし形などの基本図形と、整数や分数、小数、数式などが書かれている。

 スライドを使ってショウさんが最初に見せた問題は、横一列に並んだカード6枚分のスペースのうち、左端に「△」と「2+3×4」の式が書かれた青いカード、右端に「□」と「2×3×4」の式が書かれたオレンジ色のカードがあり、真ん中の4枚分は空白というものだった。これを左端からスタートして右端まで、地の色か図形か式の数値が左隣と共通するカードを探してつないでいき、右端へゴールする。

ネイティブの講師も思わず「スゴーイ」の声

オリジナルの「Math UNO」問題を作る
オリジナルの「Math UNO」問題を作る

 講座の前半はこの横一列の問題で練習し、後半はもっと難しい横5枚×縦3枚のマス目状の問題に取り組んだ。今度はすべてのマス目がカードで埋まっていて、左上の「Start」から、右下の「End」まで、間をつなぐルートを探すのが課題だ。

 ここで数人の男子が席を立った。壇上のホワイトボードに投影されたスライドが見えにくいのか、天井から下がっている鮮明なモニターの前に集まって、手分けしてカードの数値の計算やルートの相談を始めた。ショウさんも席に戻らせるということはしない。

 ショウさんは始めに「正解のルートは三つあります」と説明したが、生徒たちはその他にも次々とルートを発見した。最終的に三つの「正解」が追加され、これにはショウさんも日本語で「スゴーイ!」と感嘆の声を上げた。

 最後の20分ほどは「Team Challenge」を行った。長机に座った2~4人でグループを作り、自分たちオリジナルの「Math UNO」問題を作る。この作成途中で、初日の2時間は終了した。「明日はこの続きから始めます」という川本教諭のアナウンスに続き、生徒たちは「振り返りシート」に講座の感想を記入して小講堂を出た。

 2日目、3日目は問題作りの続きに加え、覆面算や配られた問題集に取り組んだ。

 川本教諭によると今回の目標は、問題を解いていく筋道を英語で説明できるようになることだという。「数学の理解と英語の実践力を高めることに加えて、英語で思考する力やプレゼンテーション力を磨く狙いもあります」

 毎回、「Math in English」に参加した生徒の反応は良いという。振り返りシートには数学嫌いの生徒が「よく理解できた」と書いてくることも多く、今回の講座後には「私、結構しゃべれたでしょ」と自慢する生徒もいたそうだ。「その気持ちを学びの弾みにしてほしい。今後は英語での対話とグループワークを強化したい」と、川本教諭は新しい目標を語った。

 特別講座の後、中2CCクラスの生徒に感想を聞いた。「外国の文化に興味がある」という山岸夕蘭さんは「数の数え方が日本と欧米で違うのが面白かった。もっと違いが知りたい」と目を輝かせた。オリジナルの「Math UNO」を作る課題では、クラスメート2人の身長を「Start」と「End」にして、間のカードにメートルやマイルを組み合わせる工夫をしたそうだ。

 生物学者を志望する中藤吹樹子さんは、「数学は答えが一つという快感があるけど、今回はいろんな答えが見つかるのが面白かった。これから、もっと簡単な解き方がないかなど、自分の答えを一度疑ってみたいと思います」と、数学の新しい魅力を見つけた様子だった。

英語力だけでなく心のグローバル化も大切に

國學院大の留学生を案内して寺院や史跡を巡る「英語で地域探訪」
國學院大の留学生を案内して寺院や史跡を巡る「英語で地域探訪」

 國學院久我山は数年前から、海外の中高生や留学生などとの交流を深めることに取り組んでいる。英語を使って欧米の文化としての数学を学ぶ「Math in English」も、広い意味で国際理解教育の試みの一つだ。

 ほかにも「Cooking in English」という活動で、ネイティブの講師と一緒にお菓子などを作ったり、「英語で地域探訪」という活動で、國學院大学の留学生を案内して学校周辺の寺院や史跡を巡ったりしている。いずれも英語でコミュニケーションしていくところに意義がある。

 また、海外から研修旅行に来た生徒の受け入れにも積極的で、年に何度か外国人の中高生が教室に加わって授業を受ける。

 「最近は久我山生もおもてなしに慣れ、折り紙やけん玉といった日本の遊びを教える時も、『すごろくは難しいかな』など加減を考えながら交流を楽しんでいます」と川本教諭は話す。

 海外の生徒が披露する文化も良い刺激になっている。インドネシアの生徒はイスラム圏での祈りの仕方を生徒に教えてくれた。ロシアのバレエスクールの生徒たちは、華麗な舞を披露し、大勢の生徒が見学して盛り上がったという。

 「教員が促さなくても、生徒たちは漫画やアニメなど共通の話題で外国の人たちと盛り上がります。物おじしない、オープンマインドは、グローバル社会を生きる大切な素養です。英語力ももちろんですが、こうした心のグローバル化も大切にしたい」と川本教諭は話した。

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:國學院大學久我山中学高等学校)

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894850 0 國學院大學久我山中学高等学校 2019/11/15 05:21:00 2019/11/15 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191112-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

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