放課後講座で鍛え、模擬国連国際大会で優秀賞…三輪田

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 三輪田学園中学校・高等学校(東京都千代田区)の高2生(当時)2人が、今年3月に開かれた「環太平洋国際模擬国連会議」で英語を駆使し、“Honorable Mention”という優秀賞を受賞した。2人は同校が放課後に開いている「模擬国連講座」を高1から受講し、スピーチ力や交渉力を鍛えてきたという。同校の模擬国連への取り組みと、2人の活躍ぶりを取材した。

意欲ある生徒の要望で講座スタート

「海外の大会に挑戦したい生徒も出てきました」と変化を語る内田教諭
「海外の大会に挑戦したい生徒も出てきました」と変化を語る内田教諭

 模擬国連は、学生や生徒が国連などの国際会議をシミュレーションして国際問題の理解を図る活動だ。参加者は一国の大使などの役で会議に臨み、立案した政策をスピーチし、「他国」と交渉し、「国益」を踏まえながら問題解決へ向けた決議案を作る。

 この活動に取り組む学校は、英語部やディベート部など部活動の一環として参加させるケースが多いが、三輪田学園では、国際問題や英語に関心を持つ有志生徒による参加という形で取り組んでおり、学校はその生徒たちを支援するために隔週で木曜日か土曜日の放課後に「模擬国連講座」を開いている。現在、50人ほどの生徒が講座に参加している。

 「開講のきっかけは、6、7年前に『模擬国連に出場したい』という生徒の相談を受けたことでした。当時は私も知識がなく、出場には至りませんでしたが、授業で取り上げたところ関心を持つ生徒が増え、2014年度からは各大会で1~2か月ごとに開催する練習会などに参加し始めました」と、講座を運営する世界史担当の内田美穂教諭は話す。

 生徒たちは、国内の中高生が参加する「全日本高校模擬国連大会」や洗足学園模擬国連部主催の「ジャパンメトロポリタン模擬国連大会」のほか、海外の中高生も参加して英語で議論する「環太平洋国際模擬国連会議(PRIMUN)」の大会や練習会などに次々と参加するようになった。 

 学校としても、教育指針である「世界に興味関心を持ち、学び続けるチカラ」「問題を解決する論理的思考力」「リーダーシップとフォロワーシップ」「対話するチカラと共感するチカラ」などの育成に寄与すると考え、17年度に講座を開始したという。

「野菜の国」で国際会議をシミュレーション

講座で担当国の特色をプレゼンテーションする生徒
講座で担当国の特色をプレゼンテーションする生徒

 この「模擬国連講座」を取材するため6月8日、同校を訪れた。

 この日に開かれた「会議」には約20人が参加していた。議題は「サラダづくり」。2人が議長役として前に座り、他の生徒は「大使」として1人1国を担当し、日本語で1分ほどのスピーチをしていく。

 大使役の生徒が代表しているのは実在の国ではなく食材だ。「キュウリ国」「トマト国」「生ハム国」などの大使として、「栄養豊富」「色が鮮やか」「味に癖がなく他の食材によく合う」などそれぞれの特色をアピールする。

 内田教諭はスピーチごとに、「順番待ちの間、人の発表を参考にスピーチメモを作ると良いよ」「マイクがない議場もあるから、できるだけ大声で」など簡潔にアドバイスしていく。

 一通りスピーチが終わったところで今度は全員が席を立ち、それぞれ交渉し合ってグループ作りを始めた。模擬国連は通常、利害の近い国々がグループを形成し、共同で決議案を作る形で進行する。「大使」たちは、「健康」「スタミナ」など作りたいサラダのコンセプトを提案し、交渉し合って自分の作りたいサラダに合った食材同士のグループを作っていった。

 内田教諭によると、大会や練習会の間、引率教員は別室で情報交換や勉強会などを行うという。この日のシミュレーションも、「その中で私がベテランの先生から聞いた方法です」とのこと。初心者に有効な練習法の一つだそうだ。

 講座では今後、練習会参加後の振り返りや世界情勢のレクチャー、さらに担当国の見解を表明する「ポジションペーパー」や決議案の書き方のレクチャーも行うという。

練習、準備、作戦でつかんだ入賞

今年3月に開催された「環太平洋国際模擬国連会議」
今年3月に開催された「環太平洋国際模擬国連会議」

 今年3月23、24日、川崎市の洗足学園中学高等学校で「第4回環太平洋国際模擬国連会議」が開催され、三輪田学園から参加した2人(当時高2)が、韓国、台湾、中国、カナダ、メキシコなどの中高校生を相手に、“Honorable Mention”という優秀賞を受賞した。

 2人が参加したのは中級議場(UNHCR)で、その時の議題は「難民支援に関する国別負担の不均衡の改善」。2人はインドを担当した。1日目は、各国に呼びかけて自国の主張に賛同する国を募ってグループを作り、その夜に共同で決議案を作成。2日目はグループ内で意見を調整して決議に臨み、参加40チーム中28チームの賛同を獲得した決議案で見事受賞した。両日とも午前8時台から午後5時台まで議論や交渉が続くハードな大会だったという。

 事前の準備も大変だったそうだ。担当国が通知されたのは一昨年12月。翌年2月には自国の主張をまとめた「ポジションペーパー」を英語で作成して提出しなくてはならない。実質的な準備期間は1か月ほどだ。しかもこの時期は、3学期の試験や卒業式の出し物の練習などが重なっていた。

 最も苦労させられたのは、「自国の決議案の文案を事前に準備・共有してはいけない」というルールだったという。「各国の目標が事前に共有できないため、交渉の時もまず相手国の関心事を探らなければなりません。なかなか本題に進めませんから、グループ作りも大変になります」

1か月あまりで準備する膨大な量の英語の書類
1か月あまりで準備する膨大な量の英語の書類

 幸い、2人は1か月前にルールの似た別の大会に出場していたため、他国の背景に基づいて主張を予想し、決議案の方向性を何パターンも用意しておく作戦で切り抜けることができた。準備する資料がその分大量になるため、5時間ほどしか寝られない日々が続いたというが、「この準備のおかげで、他国の主張をスピーチ原稿にする手伝いができ、賛同国を増やすのに役立ちました」と2人は楽しげに振り返った。また、過去の大会の振り返りを通して、互いの性格を理解していたことも有利に働いたようだ。

 受賞した2人はともに高1の時から模擬国連講座に参加している。一人は、商社マンだった祖父の影響で海外に関心があり、「講座のチラシを見てピンと来た」というのが受講の動機だ。もう一人は「友達に誘われて何となく」講座に参加したが、ある練習会で、他校の生徒が力強く会議をリードする様子に魅了され、活動にのめり込んだという。

 模擬国連は英語を多用するため、帰国子女など英語にアドバンテージを持つ参加者が多いと言われる。2人とも海外経験はないため、資料や原稿など文書の準備には学校のネイティブの講師の助けを借り、会議に頻出する言い回しを練習会などでコツコツと学んできた。

 日ごろの地道な練習と、綿密な準備、さらに機転を利かせた作戦が、国際大会での好成績を呼び込んだと言える。

自発性と学ぶ喜びにつながる活動

 内田教諭は模擬国連参加の教育上の効果について「正解や必勝法はないので、生徒が自分で調べ、考えるしかありません。講義型の授業ではなかなか得られない自発性と学ぶ喜びにつながっています。他校や海外の学生との交流による刺激も大きいですね」と指摘する。

 受賞した2人も、「必死に頑張った経験が財産になった」と口をそろえる。「行き詰まった時は、大会で作った資料を見て自分を奮い立たせています」とうなずき合った。

 模擬国連の活動を通して進路も見えてきたようだ。一人は「利害のある問題を考える大切さが分かった」と言い、公共事業や国際協力などの仕事に付きたいと考えている。もう一人は「大学で国際問題を改めて勉強したい」と言う。将来はメディアの仕事を目指すそうだ。

 この国際大会での受賞は学校全体への刺激となり、模擬国連講座の受講生も増えたという。「常勝校の層が厚い『全日本高校模擬国連大会』での入賞も目指したいですが、海外の大会を調べて『挑戦したい』という生徒も出てきました。今までにない変化です。出場を目指して私も英語を頑張らなければ」と内田教諭は笑顔を見せた。

 (文・写真:上田大朗)

 三輪田学園中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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708042 0 三輪田学園中学校・高等学校 2019/07/29 05:21:00 2019/07/29 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190725-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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