【特集】縦のつながりの中で多様性を学ぶクラブ活動…三輪田

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 三輪田学園中学校・高等学校(東京都千代田区)は、クラブ活動を通して「徳才兼備」の女性の育成を目指している。生徒たちは週4日の限られた時間を生かし、クラブ活動の中で縦のつながりや多様性を学び、人間性を育んでいる。東京パラリンピック出場を目指す浦田愛美さん(高3)の所属する水泳クラブにスポットを当てて、クラブ活動の意義や指導方法を担当教諭に聞くとともに、生徒たちの声を紹介する。

クラブ活動は、多様な生徒が輝ける場

クラブ活動や学校行事の意義について話す塩見牧雄中学教頭
クラブ活動や学校行事の意義について話す塩見牧雄中学教頭

 同校は「誠実で、だれとでも『つながる』ことができ、自らの人生を切り(ひら)いて生きる、『徳才兼備』の女性」を育てることをディプロマ・ポリシーに掲げている。「徳才兼備」は、学園創立者の三輪田眞佐子が唱えた教育理念であり、「豊かな人間性と高い学力を併せ持つ」ことを意味する。

 塩見牧雄中学教頭は、「クラブ活動も、この考えを基本にしつつ、中高生が共に活動することで、縦のつながりを感じながら豊かな人間性を培う場です」と話す。同校には運動系クラブ8、文化系クラブ17、特別委員会2の計27クラブがあり、それぞれに活動を繰り広げている。

 「たとえば、文化祭では実行委員がリーダーとなり、他の生徒が支える。音楽会では音楽関連のクラブの生徒がリーダーシップを発揮し、他の生徒が支えるなど、多様な場所で多様な生徒が輝ける場を作り、リーダーシップとフォロワーシップの両方を育てたいと考えています」

 中高合わせて約70人が在籍する水泳クラブも多様なメンバーが輝きを見せる部活動だ。コロナ禍で全体練習を休止していた水泳クラブが再開したのは7月からだった。7月16日、同校を取材に訪れると、校舎6階の室内プールでは生徒たちがのびのびと泳いでいた。

水泳クラブの顧問を務める余川巧教諭
水泳クラブの顧問を務める余川巧教諭

 水泳クラブでは毎週月曜、顧問の余川巧教諭が1週間分の練習メニューを発表する。生徒たちはそれを見て、おのおのが「なぜその練習を行うのか、どうしたらもっと強くなれるのか」を考え、目的意識を持って練習に臨むという。

 同校ではクラブ活動の限度を週4日と定めている。余川教諭は、「限られた時間で少しでも成果を上げるには、頭を使うことが大切です」と話す。「1週間分の練習メニューを予習し、それぞれが心構えをもって練習に臨むのと、その場で言われた練習を何となくこなすのとでは成果が全く違います。これは学校の授業や、生活のすべてにつながることです。料理にたとえると、練習メニューや最新の練習道具といった材料は私がそろえますが、それをどう料理するかは生徒それぞれが考え、行動に移すということです」

 また、余川教諭は試合の出場選手など、あらゆる決定を生徒たちに委ねている。今回、取材を受ける部員も生徒たちで決めたという。「クラブ活動は社会としては小さいですが、全員をまとめ上げるのは大変です。クラブ内で意見が割れた時は、問題が解決するまで練習を行わず、徹底的に話し合わせることもあります。教師が解決したら、生徒は成長の機会を逃してしまいます」

上級生や外部の人との関わりから学ぶ

水泳クラブの練習
水泳クラブの練習

 部員同士がまとまっているだけでなく、卒業生とのつながりも強い。水泳クラブでは合宿に卒業生が参加し、部員をサポートするのが恒例だ。「生徒には常々、『自分が先輩にしてもらったことを、お返しするのは当たり前』と話しています。合宿では卒業生が自らローテーションを組み、練習のサポートや部員のマッサージを担当します」と余川教諭は話す。

 上級生との関係について、中学部長の山口真裕さん(中3)は「もともと人とコミュニケーションを取ることが得意ではありませんでしたが、上級生との関わりを通して、スムーズに話せるようになりました」と話す。「入部したとき、先輩方から『みんなが泳いでいる時は声をかけ合って』と指導されたこともあり、今では自分から声を出して、クラブの雰囲気を盛り上げるよう心がけています」

 生徒は試合の際、入場券の受け取りや撮影許可証の配布、プログラムの販売、掃除といった開催の手伝いを経験する。数年前には、全国障害者スポーツ大会の手伝いを経験したこともあった。そのとき、恐る恐る出場選手の車椅子を押していた生徒が、「大丈夫、自信を持ってやっていいのよ」と、逆に選手に励まされたという。余川教諭は「試合を行うには、どれだけ裏方がいて、どんな仕事があって、どう成り立っているかを知らなければなりません。こうした学びも、すごく大切だと思います」と話す。

 クラブ活動での多様な経験を通して、下川心花さん(中2)は、「もともと消極的な性格でしたが、水泳クラブに入って進んで物事を行うようになり、クラスでも積極的に行動できるようになりました」と話す。「休校中はオンラインでクラブ活動がありましたが、余川先生に『何かをやってマイナスになることはないから、この期間に工夫してできることを自分で探して』と言われたことが印象的で、今でも家でできることを頑張っています」

練習を通し、互いに刺激し合って成長する

「このクラブで強くしてもらったと思っています」と話す浦田愛美さん
「このクラブで強くしてもらったと思っています」と話す浦田愛美さん

 同校の水泳クラブには、東京パラリンピックへの出場を目指す浦田愛美さん(高3)が在籍する。浦田さんは2歳のとき、病気で左脚の膝下を切断した。小学生の頃から水泳を習っていたが、入部当初はなかなかみんなについて行くことができなかった。余川教諭は自分の脚を縛ってバランスの取り方などを研究し、浦田さんに泳ぎ方をアドバイスした。現在では、他の部員と同じメニューで練習を行い、互いに刺激し合い、共に成長しているという。

 浦田さんは水泳クラブでの活動について、「このクラブで強くしてもらったと思っています」と笑顔を見せた。「余川先生は、助言が必要と判断された時は的確な助言をしてくださり、逆に自分で考えて強くなるべきだと思われるところでは、まったくお話をされません。例えば、試合前に私が緊張している時は強い言葉をかけてくださいますが、合宿の練習など、自分で山場を越えなければならない時は、じっと見守ってくださいます。パラリンピックは高い壁ですが、ここにきて1年猶予ができたので、絶対に強くなるという気持ちで頑張ります」

 同校ではクラブ活動だけでなく、文化祭などの学校行事も生徒が中心となって運営し、多様な生徒が多様な場で活躍している。その中で、生徒たちは日々、自主性や協調性、リーダーシップやフォロワーシップを学んでいる。塩見教頭が今、これに付け加えたいと考えているのは「やり抜く力」だという。

 「生徒たちは将来、予想がつかない時代の中で、自分で自分の人生を切り開いていかなければなりません。私たち教員は、人生を自らの手で切り開く『剣』と自身を守る『盾』、そして、それらを使いこなす『知恵』を生徒に与え、豊かな人間力を育てたいと思っています。クラブ活動や授業、学校行事を通して、『自分の力でしっかりやり抜いた』と思える経験をすることが自信につながり、自分の人生を生き抜く力になるのではないでしょうか」

 (文・写真:籔智子)

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1449820 0 三輪田学園中学校・高等学校 2020/09/03 05:22:00 2020/10/27 10:01:18 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200902-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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