【入試ルポ】先生が「花道」で受験生を出迎え…清風
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関西2府4県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀)の私立中学入試が1月13日、始まった。関西圏でも数年前から始まった午後入試はすっかり定着し、人気の進学校、清風中学校・高等学校(大阪市)でも午前入試に275人、午後入試はその2倍超となる654人が出願した。この日、同校の門をたたいた計1800人以上の受験生・保護者を、先生、生徒たちがどう迎えたかをリポートする。
「花道」を作って受験生を出迎え

開門30分前の午前7時半、同校に着くと、すでに正門前の歩道には受験生と保護者、塾関係者らが集まっていた。やがて校門が開き、一緒に本館に向かうと、玄関前に平岡宏一校長をはじめ、先生がずらりと並んでいた。受験生たちを迎える「花道」である。
入試総務渉外教頭の石井俊男教諭は「数ある学校の中で、本校を選んでいただいた受験生と保護者のみなさんを、きちんとお迎えしたいという校長の思いから続けている恒例行事です」という。冷え込みの厳しい朝だったが、どの先生もスーツ姿でコートも羽織ることなく、開門の8時から試験会場集合時刻までの約30分間、笑顔で立ち続けていた。
受験生は本館に入ると階段を上がり、3階から延びる陸橋を渡って南館に移動する。ここが学科試験会場だ。保護者控室となる教室は、本館側に用意されている。午後からは反対に、本館が試験会場となり、南館は保護者控室となる。この日、1800人以上を数えた受験生・保護者をスムーズに誘導するための施策だ。
放送で、きめ細かく案内

教室集合時間の8時半、保護者控室に校内放送が入り、平岡校長から「試験とみなさんとの一対一の戦い、日頃の力を出して頑張ってほしい」とエールが送られた。
この後も、受験生と保護者への指示は放送を通じて行われた。午前中の学科試験は、国語・算数・理科の3教科と、これに社会を合わせた4教科がある。いずれも試験後に、保護者は面接会場に向かい、受験生と一緒に面接を受けることになっている。もちろん、時間と場所を記した案内プリントは配布済みだが、保護者に無用な神経を使わせないよう、放送を使って細かく案内する。さらに校内各所に先生と在校生が待機し、案内にあたっているので安心だ。
校名を冠した「清風ラーメン」

本館1階の食堂も、保護者控室として開放されていた。「食育」は同校の教育の柱の一つだ。平岡弘章副校長は、「成長期の生徒たちに納得できるものを用意したい」と、自ら生産者と交渉し、自然栽培の米や有機栽培の野菜などを仕入れて提供している。そんな生徒への配慮を、保護者にも知ってほしいという思いからだろう。
生徒には「肉うどん」「担々麺」「カツカレー」など、肉の入ったボリュームたっぷりのメニューが人気だそうだ。この日も、こだわりの食材を使った「焼飯」や、生徒に人気の「鶏唐揚げ」などのメニューが並んだ。どれもおいしそうだが、保護者の多くは縁起を担いでか、校名を冠した「清風ラーメン」(290円)を注文していた。日差しが入る暖かい食堂で、保護者と一緒に早めの昼食を取っていると、3教科型受験生の面接の時間が近づいてきた。
面接は、個別でなく集団で

この日の面接は3回。本館3階の広々とした多目的体育館「
この面接は、集団で行われる。石井教諭によると、かつては個別面接を行っていたが、保護者の緊張をやわらげるために集団面接に切り替えたそうだ。「中学高校の教育は、生徒と学校だけのものでなく、保護者も含めた三者が一体で行うものであると本校は考えます。この面接は、本校の教育内容を確認する場ですから、リラックスして聞いていただきたいということです」
午前を大幅に上回る受験者で混み合う

午後入試の内容は国語・算数の2教科と面接だ。午後3時に開門し、午後4時に教室へ集合する。先生たちは、朝と同じように「花道」を作り、受験生と保護者を迎えた。
他校の午前入試を終えた受験生たちが、塾の先生たちに導かれて集団でやってくる。午後入試の出願者数は午前入試の倍以上なので、正門前は混み合って一時、足元が見えないほどだった。
近くの塾に集合し、列を作ってやってきた集団もあれば、学校に隣接する公園に集合し、直前の指導を受けている集団もある。校門前で「絶対合格するぞ」と
なお、同校は、午後4時の教室集合に間に合わない場合、事前に連絡すれば1時間遅れでの受験を認めている。午後3時50分までに受験番号と受験生の氏名を学校に連絡し、午後5時までに到着すれば、正門付近で待つ職員が試験会場へと誘導してくれる。
受験者が多ければ多いほど、トラブルは生じがちだ。さまざまな状況を想定して対応策を用意するのは学校にとって一苦労だが、人生の大きなチャレンジに臨む受験生にとってはうれしい心遣いだ。
(文と写真:水崎真智子)