食堂は生徒の身体を作る「食育」の拠点…清風

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 清風中学校・高等学校(大阪市)は、自然栽培米をはじめ吟味した食材で30種類以上のメニューを提供する「清風食堂」を誇っている。生徒の健康を守り、クラブ活動や勉強に打ち込むためのエネルギーを提供する重要な施設として、平岡弘章副校長自ら生産者らと定期的に会議して仕入れを行っている。この食堂を見学するとともに、食堂運営を通じて取り組む「食育」についての考えを聞いた。

ワンコインで特盛りも食べられる価格設定

自然・有機栽培の野菜やオイルで作った焼き飯を手にする平岡弘章副校長
自然・有機栽培の野菜やオイルで作った焼き飯を手にする平岡弘章副校長
名物の清風ラーメン。注文の7割は特盛り(右)だという
名物の清風ラーメン。注文の7割は特盛り(右)だという

 清風中学校・高等学校は2016年に中央館を新築し、その1階に1945年の開校以来初めてとなる「清風食堂」を開設した。168席と厨房を収容するこの食堂は、平岡弘章副校長の発案によるもの。同校の「物事の根本を見定める」教育の象徴であり、「栄養を取り、免疫力を上げ、丈夫な身体を形成する」という「食育」の拠点となっている。

 平岡副校長の案内で食堂に入ると、12人掛けの真っ白なテーブル14卓が設置され、天井からの柔らかな照明に加え、側面の壁をいっぱいに生かした大きな窓から日差しが降り注いでいる。清潔で気持ちの良い空間だ。

 食堂のメニューは、常時30種類以上あるという。定番のうどん、そば、ラーメン、どんぶり、カレーライスだけでもバリエーション豊富で、たとえばカレーライスは、ビーフカレー(350円)、カツカレー、鶏唐揚(からあ)げカレー、コロッケカレー、揚げ餃子(ぎょうざ)カレー(いずれも390円)と5種類が用意されている。

 しかも、食べ盛りの生徒たちが満足できるように大盛り、特盛りを充実させているのも特長だ。名物「清風ラーメン」(290円)を注文する生徒の7割が、麺3玉分の特盛りを注文するというが、それでも390円。カレーなどを特盛りにしてもワンコイン以下となる。

 「食堂の運営会社から、『大盛り、特盛りをできるようにしましょう』と提案があり、お願いしました。特盛りを食べているのが、意外にきゃしゃな生徒だったりするのですよ」と平岡副校長はうれしそうに語る。

 せっかくなので「清風ラーメン」を試食した。具はネギともやし、肉、そして真ん中には「清風魂」と焼き印を押された色鮮やかな卵焼きが乗っていた。スープもコクがあって本格的な味わい。生徒たちの喜ぶ顔が見えるようだ。

 なお、授業の休憩時間に食券を買っておくこともできる。4時限目が終わる12時50分から45分間の昼休み時間中に、食堂は約3回転するという。

フードコートや売店も生徒をバックアップ

売店を併設したフードコート
売店を併設したフードコート

 食堂は放課後も重要な役目を果たす。午後5時まで営業しており、クラブ活動や、補習をしたり、自習室で勉強したりする生徒が、もう一頑張りできるよう、栄養面でバックアップしているのだ。100円メニューのたこ焼き、フライドポテトなどを食べながら友人同士で会話を楽しむ姿もある。食堂スタッフも「みんなでつまみながら楽しそうにしている様子を見ていると、うれしくなる」と笑顔で話す。

 食堂は、入学試験日には保護者の控え室として開放される。縁起をかつぐせいか食事時には学校名の入った「清風ラーメン」を注文する人が多いそうだ。

 なお、「清風食堂」のほかに、中央館2階には119席の「フードコート」がある。中央館2階と南館3階の売店で、オムそば(300円)やチキン唐揚げ丼(390円)などを購入し、ここで食べることもできるので昼食の楽しみはさらに広がる。

厳選した「自然栽培米」と「自然栽培と有機栽培の野菜」

売店で販売するテイクアウト品の数々と注文書
売店で販売するテイクアウト品の数々と注文書

 手ごろな価格でお(なか)いっぱい食べられるだけでも生徒たちにはとってはありがたい存在だろうが、「清風食堂」の特長は、むしろ選び抜いた食材という点にある。

 現在、食堂で使っている米は、岡山県倉敷市の生産者の手による自然栽培米だ。ジャガイモ、タマネギ、にんじん、味噌(みそ)、そしてオリーブオイルも自然栽培と有機栽培のものを使っている。ラーメンの麺に使われる小麦もよりいっそう安全、安心なものに変えたいと検討しているという。

 平岡副校長は、食堂の開設を決めた時から生徒の身体のために、どんな食堂にすべきかを考え抜いたという。それは20年にわたって生徒を見てきて、生徒の健康面に明らかな変化を感じていたからだ。たとえば、アトピー性皮膚炎やさまざまなアレルギーを持つ生徒が増えているという。

 さらに、食堂の設置を準備し、「食」について広く情報を集める中で、EU(欧州連合)では使用が禁止されているネオニコチノイド系農薬が日本では使われていることなどを知った。そこで、食生活が生徒の変化に影響している可能性を考え、安全、安心な食材を提供する食堂の仕組みづくりに全力を注ぎ続けた。

 安全、安心な食材を安定的に供給してもらうには、生産者や食堂の運営会社の理解が必要だ。そのために平岡副校長は、毎月行われる生産者の会議に参加し、栽培現場の課題や取り組みを共有するなどコミュニケーションを深める努力を欠かさない。

 仕入れの価格も大きな問題だ。農薬や化学肥料を一切使わない自然栽培や農薬や化学的に合成された肥料を使わない有機栽培は、手間がかかる分、量産できないために、どうしても単価が高くなる。

 「買える価格でなければ生徒に選ばれません。『これでお昼を食べなさい』と親に1000円もらったら500円でお弁当を買って500円を小遣いにするでしょう。ですから、食堂メニューは500円以下にしたい」。そう事情を話し、生産者と食堂の運営会社とともに、ワンコイン価格を実現するためにはどうしたらいいか、工夫と相談を重ねたという。

 「清風以外にもっと高く買ってくれる先もあるはずですが、本校の思いを理解してくれる生産者から『未来のある子供たちにこそ食べてほしい』という励ましの言葉を受けることもあります」と平岡副校長は話す。

 副校長付き秘書の梅野恭子さんも生産者との会議に同席すると、「立場が違うからこそ意見を聞きたい」と意見を求められることがあるという。「私自身、食に関して学んだことを、職員、そして保護者のみなさんにお伝えしていければ」と話す。

 「清風食堂」は、学校、生産者、運営者、そして周囲の多くの人たちの熱意で支えられている。「食」が生徒たちの健康と明るい将来に果たす役割の大きさを皆が真剣に受け止めているからだろう。

 (文・写真:水崎真智子)

 清風中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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661388 0 清風中学校・高等学校 2019/07/02 05:21:00 2019/07/02 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190627-OYT8I50011-T.jpg?type=thumbnail

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