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【特集】ハンドベル演奏が育てる仲間とのハーモニー…浦和ルーテル

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 青山学院大学系属浦和ルーテル学院中・高等学校(さいたま市)には、奉仕活動としてのハンドベルクワイヤーがある。1個1音のハンドベルで、呼吸を合わせてハーモニーを奏でる演奏を通し、協調性や思いやりの心が育つといい、生徒たちは特別礼拝や学校行事の際だけでなく、校外のさまざまなイベントに参加して地域の人々の耳を楽しませている。入学式に向けて練習する生徒たちと顧問の五十嵐依恵先生に話を聞いた。

奉仕活動としてのハンドベル演奏

「ハンドベルクワイヤーの活動を通して互いを思いやる心を育ててほしい」と話す五十嵐先生
「ハンドベルクワイヤーの活動を通して互いを思いやる心を育ててほしい」と話す五十嵐先生

 メトロノームのテンポを刻む音が鳴り始めると、隊長の岡本聖奈さん(現高3)が「いっとー、にーと、さんとー、はい」と声をかけ、隊員たちは一斉にハンドベルを演奏し始めた。太陽の光が射し込むチャペルに美しい音色が鳴り響く。取材に訪れた春休み中の3月17日は、入学式に演奏する予定の賛美歌「グロリアス(栄えに満ちたる)」を練習していた。

 「ハンドベルクワイヤーは、学院直属の宗教部の活動にあたり、一般の部活とは区別される奉仕活動の一環です。建学の精神『神と人とを愛する人間、神と人とに愛される人間』を具体化するものです。あくまで奉仕活動ですから、学校が強制しているのではなく、有志の集まりで自主的に活動しています」と、顧問の五十嵐依恵先生は説明する。

 ハンドベルクワイヤーは最初に、学院の小学校で1990年に結成され、その後、隊員の進学に伴って、中学高校でも結成された。そのため小学3~6年生のクワイヤーと中1~高3のクワイヤーがある。

 中高のクワイヤーは、校内だけでなく、校外でも演奏を行っている。クリスマスなど特別礼拝での賛美演奏を中心に、スクールフェア(文化祭)などの学校行事のほか、浦和駅前クリスマスツリー点灯式を始めとする、さまざまなクリスマスイベント、交通安全イベント、教会での奉仕演奏など、地域を中心に演奏奉仕活動をしている。

 2020年は新型コロナウイルスの影響で外部の演奏が全て中止になってしまったが、19年は彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)で行われた日韓文化友好コンサート「平和のリボン」や、川口総合文化センター「リリア」(埼玉県川口市)で行われた「クリスマスコンサート2019」など大きな舞台でも演奏を行ってきた。

困難の1年を乗り越えて個々が成長

5オクターブの鐘を使い、呼吸を合わせて演奏する隊員たち
5オクターブの鐘を使い、呼吸を合わせて演奏する隊員たち

 練習日は通常、火曜日と木曜日。隊員は現在、中1から高3までの16人で、少人数らしいアットホームな雰囲気で活動している。

 使用するハンドベルは1個1音であり、5オクターブに相当する60個をそろえている。1人が二つから四つのベルを担当し、全員で一つの曲を作り上げるという。鳴らし方には、マルテラート、シンギングベルなど、さまざまな方法がある。

 「ハンドベルは一見簡単そうに見えますが、とても繊細な楽器で、やればやるほど課題が見つかる、一番奥深い楽器だと思います」と岡本さんは話す。

 指南役の成海和花さん(現高3)も、「自分だけうまくできればいいのではなく、周りをよく見て合わせることが大事なのですが、これがなかなか合わないのです。ブレス(呼吸)を大切にするのが合わせるコツで、演奏するたびに新しい発見があります」と話す。

 岡本さんは浦和ルーテル学院小の3年生から、成海さんは同校に入学した中1からハンドベルクワイヤーの活動を続けてきた。昨年4月、高3の先輩が引退し、岡本さんたちが最高学年を務めるチーム体制となったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、活動の休止が続いた。

 「昨年はコロナで練習も発表もできない日が続きました。多くの団体が集まって演奏する全国ハンドベルフェスティバルにも出場できず、関東ハンドベルフェスティバルも中止になってしまいました。夏合宿もできず、スクールフェア(文化祭)自体も中止になってしまって、本当に悲しい思いでした」と成海さんは話す。

 やっと練習が再開できたのは8月下旬。9月から曲に取りかかり、12月のクリスマスツリー点灯式で初めて演奏を披露することができた。演奏したのは伝統的なクリスマス賛美歌「ザ・ホーリー・アンド・ザ・アイビー(ひいらぎとつたは)」だ。

 「このチームで初めて迎えた本番でした。やっと演奏できた、という喜びがありました」と岡本さんは振り返る。「自分が今まで先輩たちに教わってきたことを、最高学年になって、後輩たちに伝えたいと思っていましたが、その機会がコロナ禍で少なくなってしまいました。でも、私たちがそんなに言わなくても、後輩たちは各自頑張ってくれて、練習でも休憩は要らないと言われるほどでした。個人個人が成長した1年でした」

ハーモニーを作る仲間として互いに思いやる

陽光の射し込むチャペルで、週2回の練習に励む隊員たち
陽光の射し込むチャペルで、週2回の練習に励む隊員たち

 この日は話を聞けなかったが、2人と一緒に最高学年としてクワイヤーの活動をけん引してきた山本裕利(ゆり)さんも含め、五十嵐先生は、「3人とも本当に成長しました」と目を細める。「感心するのは、相手を認めながらより良くしていく力です。ハンドベルは自分が前面に出てもいけないし、かといって、引っ込んでいるだけでもいけない、謙虚さと協調性が大事な楽器です。コントロールの難しい楽器を、後輩たちのいい部分を認めながら教えることで、まとめていく。すばらしいと思います」

 岡本さんは「先輩たちから学ぶことが大きかったのです。思っていることは言わないと伝わらないと学び、積極的に周りを引っ張っていく力が付いたと思います」と話す。将来は英語教師を目指していて、ここで学んだリーダーシップを役立てたいという。

 成海さんは「クワイヤーの活動で、後輩がどんなふうに考えてやっているのか、違う人の立場だったらどうか、と考えるようになりました。思いやりや協調性が身に付いたと思います。それを今後の人生にも役立てたいと思っています」と話す。成海さんは将来、看護師を目指している。今は看護系大学への進学を目指して勉強中だ。

 高3生は、今春の入学式、イースター礼拝で演奏をし、活動から引退する。2人とも「後輩たちに何かしてあげられたかというと、まだまだかなと思う」と話したが、一方で、後輩たちは2人に対して、「すごく優しく教えてくれて、学ばせていただくことがたくさんある」「同級生の友達みたいに仲良くしてくれてうれしい」「先輩たちの素晴らしい技術をたくさん吸収して、下の代に伝えたい」と口々にその思いを語った。

 「ハンドベルという珍しい楽器に出会って、それぞれ特別な思いを抱き、ハーモニーを作る仲間と出会ったことを幸せだと思うのですね」と五十嵐先生は話す。「この活動の中で、先輩後輩でお互いを思いやる心を育て、さらには社会の人々とつながっていけるような子たちになってほしいと願っています」

 (文・写真:小山美香)

 青山学院大学系属浦和ルーテル学院中・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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2046343 0 青山学院大学系属浦和ルーテル学院中・高等学校 2021/05/14 05:01:00 2021/05/14 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210512-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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