新緑の山荘で聖書読み、友と語る「修養会」…東洋英和

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 東洋英和女学院中学部・高等部(東京都港区)は毎年5月、中高6年間のキリスト教教育の集大成として、静岡県伊豆市の山荘で高3全員が参加する2泊3日の「高3修養会」を行っている。新緑に包まれた自然の中、聖書の言葉に耳を傾け、友と語り合う。巣立ちの時を前に、自分と向き合うかけがえのないひとときとなっているようだ。

「伊豆の踊子」舞台の峠近く、チャペルに響く賛美歌

朝礼拝で賛美歌を歌う生徒たち
朝礼拝で賛美歌を歌う生徒たち

 柔らかい朝の日差しが漏れるチャペルに、200人近い女子生徒たちの賛美歌が響きわたった。川端康成の「伊豆の踊子」の舞台である天城峠へ続く山道沿いにたたずむキリスト教研修施設「天城山荘」。ここで東洋英和の「高3修養会」が、5月15日から17日までの3日間行われた。同校の記録に残る最初の修養会は1922年で、1世紀近く続いている伝統行事だ。

 高3の井上真博(まひろ)さんは、修養会2日目の朝の礼拝で、説教台に立って話をする大役を任された。若きイエスとブッダが都内の安アパートで共同生活をする漫画「聖☆(セイント)おにいさん」を例に引き、「この修養会では、宗教の違いを認め合うように、友達同士でお互いの賜物(たまもの)を見いだし、補い合っていけるようになりたい」と語りかけた。

 中3のとき、自宅近くの教会で自分の意思で洗礼を受けたという。「みんなを前にとても緊張した」という井上さんは、「さあ、これからというとき、お日さまの光が強くなって、『大丈夫だよ』と励ましてくれた気がしました。小さな出来事の中にも、見守ってくださる神さまの導きを感じます」と、礼拝後ほっと胸をなで下ろした。

 キリスト教の「修養会」は、もともと英語の「retreat(退却などの意味)」を訳したもので、あわただしい日常から離れ、静かな自然の中で、神と自分に向き合い、祈る集いを意味する。同校では、卒業を前にした高3の生徒たちが、新緑に包まれた伊豆の山深い宿で、講師の牧師から聖書に基づいて、これからどう生きるかを考える話を聞き、同級生と語り合って3日間を過ごす。

朝礼拝に聖書の授業で「敬神奉仕」の心を学ぶ

キリスト教教育について語る高橋宗教部長
キリスト教教育について語る高橋宗教部長

 同校は1884年、カナダ・メソジスト会婦人伝道会から派遣された宣教師によって創設され、今もキリスト教を教育の柱にしている。「赤毛のアン」の翻訳者として知られる村岡花子の母校でもあり、2014年に村岡らをモデルにした朝のNHK連続テレビ小説「花子とアン」が放映され、一躍注目を集めた。

 実は井上さんのように、洗礼を受けているクリスチャンの生徒は多くはなく、同校によると「1学年に5、6人ほどでは」という。しかし、キリスト教の教えは中高の6年間ずっと身近にあり、生徒たちの心に深く染み込んでいくようだ。

 同校では、朝の礼拝で一日が始まる。生徒たちは聖書と賛美歌集を抱えて講堂に集まり、パイプオルガンの音色に合わせて賛美歌を歌う。そして、教会の牧師や教師らがひもとく聖書の言葉に耳を傾け、祈りを(ささ)げる。

 同校の宗教部長で牧師でもある高橋貞二郎教諭は、「あなたがたは神さまに愛され、一人一人がかけがえのない存在です。その思いはどんな時も、自分を支えてくれる一生の心の(つえ)になる。礼拝などを通して、生徒たちにはそのことを伝え続けています」と、キリスト教の教えの根本について語る。

 「聖書」の授業も中1から高3まで週1回行われる。イエスの生涯や教えを学び、人間の罪深さにも目を向ける。高校生になると、現代社会の問題にも向き合い、キリスト教の教えを踏まえて何をすべきか考え、将来の自分の生き方にも重ね合わせるという。

 「ディアコニア(人に仕えるという意味のギリシャ語)」と名付けられた伝統のプログラムでは、点字や車椅子体験、施設訪問などを通して、助けを必要とする人に寄り添うことを学ぶ。神を敬い、人を愛し、奉仕するという同校の建学の精神「敬神奉仕」を、生徒たちは自然と身に付けていく。

神からの賜物生かす「人生の舞台」を探して

修養会初日の夜、グループ討論をする生徒たち
修養会初日の夜、グループ討論をする生徒たち

 そうした中高6年間のキリスト教教育の、いわば集大成として行われるのが「高3修養会」だ。同校の聖書科の宿泊行事としては、「中1オリエンテーション」「高1カンファレンス」があり、「高3修養会」はその締めくくりのイベントでもある。

 今年は修養会委員の生徒11人が、高2の1月から準備を重ねてきた。その一人、秋山舞衣さんは「大学受験という大きな山を前に、友だち同士、心が離れることもあるかもしれません。この節目の時期に、自分の気持ちを一度整理して、ともに前に進んでいけるような『まとめの会』にしたい」と話した。

 今年の修養会のしおりの表紙には、パイプオルガンや礼拝の説教台、お弁当など、なじみ深い品々とともに、セーラー服の生徒が手をつなぎ、人生に見立てたらせん階段を上る姿が描かれている。「私たちみんなが助け合うチームになれたら、という思いを込めました」と作者の毒島(ぶすじま)美空(みく)さん。

 今年の修養会のテーマには、「人生(いきる)~伝説になれ~」が掲げられた。もうすぐ同校を卒業し、歩んでいく自分たちの「人生」を見つめ、語り合おう、そしてキリスト教の根本にある「隣人を自分のように愛しなさい」という隣人愛の教えを、自ら実践することで「伝説」になろう……。そんな思いを込めたという。

 同校の修養会では、招かれた牧師がその年のテーマに沿って語り、その話を受けて生徒たちはグループ討論をする。今年は同校の近隣にある鳥居坂教会の野村稔牧師が3日間、毎日1時間ほど講演を行い、生徒たちは6、7人ずつに分かれて、「将来」「愛」「友情」などについて語り合った。

 野村牧師は、静岡県浜松市にある聖隷三方原病院のホスピス(緩和ケア病棟)で、死期に近い患者らの礼拝奉仕をした体験を踏まえ、「貴重な時間を大切に使って」と語りかけた。そして、新約聖書の「タラントン(古代ギリシャなどの貨幣単位で、英語のtalent=才能の語源)のたとえ」などを引き、「神さまから一人一人に与えられた賜物を生かし、あなたを必要とする舞台を探してください」とメッセージを送った。

新緑に包まれた「天城山荘」の大チャペル
新緑に包まれた「天城山荘」の大チャペル

 新緑に包まれた山荘でのゆったりした時間は、生徒たちの心を少しずつほぐしていくようだ。修養会2日目の昼には、木々の緑のトンネルをくぐり、近くの名所・浄蓮(じょうれん)の滝へ散策。水しぶきを浴びながら、名物わさびソフトクリームを頬張った。

 その日の夕食後は「キャンドルサービス」だ。入学以来の懐かしい写真などがスクリーンに映し出され、みんなで輪になって「花子とアン」の主題歌「にじいろ」を合唱した。東洋英和での日々を思い返し、涙があふれる生徒も少なくなかったようだ。そして夜のチャペルで、ろうそくの火を見つめながら、教師や友人の話に耳を傾け、静かに祈った。

 高3の担任として生徒たちを引率した福本久子教諭は、同校の卒業生で、20年ほど前に修養会に参加した。当時の同級生たちにフェイスブック上で修養会の印象を聞いたところ、「強烈な思い出」としてそれぞれの胸に刻まれていたという。

 「牧師さんのお話も、その時の自分の気持ちも鮮明に覚えています。グループ討論では、みんなで欠けているところも言い合いました。でも、神さまの言葉を聞いた後に語り合い、相手を思いやる気持ちも伝わるから、素直に受け入れられた。自分と向き合い、生き方にも影響した貴重な時間でした」と語る。

 もうすぐ通い慣れた学び()を巣立ち、それぞれの道を歩んでいく。しかし、新緑まぶしい伊豆の山荘で、聖書の言葉に励まされ、友と語り合った3日間は、かけがえのない思い出として生徒たちの心に残っていくに違いない。

 (文・写真:武中英夫)

 東洋英和女学院中学部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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839084 0 東洋英和女学院中学部・高等部 2019/10/11 05:21:00 2019/10/11 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191010-OYT8I50004-T.jpg?type=thumbnail

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