戦争理解について考える、コロンビア大グラック教授の特別授業…東洋英和

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 東洋英和女学院中学部・高等部(東京都港区)で11月5日、アメリカ・コロンビア大学のキャロル・グラック教授による特別授業が行われた。高校3年生を対象に、第2次世界大戦を中心に日本の現代史について再考することを目的としたものだ。授業の模様を取材し、グラック教授や受講した生徒たちの話を聞いた。

高3を対象に、コロンビア大と同形式の対話授業を行う

第2次世界大戦について生徒と語り合ったグラック教授
第2次世界大戦について生徒と語り合ったグラック教授

 会場となった東洋英和女学院中高部のマルチラーニングルームには、高3の2クラスの生徒計41人が集まり、キャロル・グラック教授の登場を待っていた。

 グラック教授はコロンビア大学歴史学部の教授で、日本の近現代史や国際関係史を専門としている。コロンビア大学で太平洋戦争などの理解について学生と対話形式の授業を行い、その内容は『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義 学生との対話』(講談社現代新書)という著書になっている。

 グラック教授は、東洋英和女学院の学院創立135周年・大学開学30周年の記念講演会のために来日したが、「コロンビア大学と同じ対話形式の授業を、日本の高校生を相手に行いたい」と希望し、中高部での特別授業が実現した。同校高等部卒業生で、今回の来日講演実現に尽力した彦谷貴子(ひこたにたかこ)コロンビア大学准教授も同席した。

 グラック教授が席に着くとまず、生徒たちの自己紹介が行われた。「tea ceremony(茶道)のクラブに所属しています」「明治維新に興味があります。新しいことをどんどん取り入れようとしていたところがワクワクする」などと、生徒たちは英語と日本語を交えながら思い思いに自分が興味を持つことについて話した。グラック教授は「皆さん、いろいろな部活動に参加し、とても活気ある学校生活を送っていますね」と、英語に流ちょうな日本語を交えて返し、生徒たちとの語らいを楽しんだ。

家族から聞いた戦争の実体験を語る生徒たち

高3生との対話形式で進められた特別授業
高3生との対話形式で進められた特別授業

 自己紹介が終わると、「第2次世界大戦について、皆さんの知っていることを教えてください」とグラック教授から問いかけがあり、生徒たちが発言した。

 「長崎に原爆が落ちたときに祖父が被爆し、原爆症が原因で亡くなりました。祖父は家族にあてて『戦争に人生を狂わされた』といった手紙を残していたんです」

 「曽祖父が、その日長崎に行くはずだったところ予定が変わり、軍艦の上から長崎上空に立ち上るきのこ雲を見て、『自分もあの下にいたかもしれないと思った』という話を聞きました」

 他国では、家庭で原爆の実体験を聞くということはないため、グラック教授も感銘を受けた様子で「家族から戦争の話を聞くということは、本を読んだり学校で学んだりすることよりも大切です。ぜひ皆さんが、その話を世界に広めていってください」と語った。

 グラック教授はさらにこう語った。「第2次世界大戦というと、やはり皆さんは太平洋戦争や原爆投下を思い起こすと思います。しかし実際には、日本が中国に侵略して起こった日中戦争が大きな意味を持ち、それが現在の日中関係・日韓関係の問題につながっています。日本はこれから戦争の見方を変えていく必要があります」

歴史について自分の考えを持つことの大切さに気付く

東洋英和出身でコロンビア大学で教える彦谷准教授
東洋英和出身でコロンビア大学で教える彦谷准教授

 約2時間の講義の後、グラック教授、彦谷准教授、東洋英和中高部日本史担当の瀧川徹(たきがわとおる)先生、生徒の村越真美(むらこしまなみ)さん、持田礼菜(もちだれいな)さんが、座談会の形でこの日の講義への感想を語り合った。

 村越さん グラック先生のお話を聞いて、自分の戦争に対する認識が甘かったことに気付きました。日本にとって第2次世界大戦は中国から始まったということを、ほとんどの生徒は理解していません。海外から見るとどのような戦争であったのか、もっと知っておく必要があると思いました。

 持田さん オーストラリアに留学したとき、テレビのドキュメンタリー番組を見て、戦争について日本で学んできたのとは異なる見方があるということが分かりました。まだまだこんなに知らないことが多いのかと、恥ずかしく思いました。

 グラック教授 恥ずかしがる必要はありません。太平洋戦争とは、主にアメリカが作ったストーリー。戦後はアメリカとの関係が大切だったので、大方の日本人もそれを受け入れてきたのです。アジアとの関係が重要になってきた今、日本はアジアで起こった戦争の意味も理解していかなければなりません。

 彦谷准教授 グラック教授や私が教えているコロンビア大学には、中国や韓国からの留学生が多いのです。彼らにとって、20世紀後半の歴史は日本からの解放の歴史。日本人の学生の意識とは大きなギャップがあるように思います。日本の学生も、「もし自分が中国や韓国の学生だったらどう考えるか」という視点を持つといいのではないでしょうか。

「戦争への理解を深めてほしい」と話す瀧川先生
「戦争への理解を深めてほしい」と話す瀧川先生

 瀧川先生 今の生徒にとって、やはり戦争は遠い時代の出来事になりつつあります。しかし、本校の生徒は好奇心が強く、知識がないということを苦にせずどんどん質問してくるタイプ。この特別授業をきっかけにさらに多くの情報を得て、戦争への理解を深めてほしいと思います。

 村越さん 学校の日本史の授業は、ただ聞いたことを書いてそれを暗記すればよいものと思っていました。今日の特別授業で、歴史について自分の考えを持ち、それを発言することが大切なのだということが分かりました。

 持田さん 歴史というのはあらかじめ決まったものではなく、人によって見方が変わる、そしてその見方によって異なる意味が出てくるものなのですね。

 グラック教授 皆さん非常に積極的で、自分の考えをしっかり持っていますね。臆せずどんどん発言していってください。自分の考えをはっきり言えること、それはこれからの人生で一番大切なことです。

 彦谷准教授 私が生徒だった頃から、東洋英和には自分から行動を起こすことを奨励する校風がありました。人に話を聞き、博物館などに行って資料を見て、理解を発展させていってほしいと思います。

 瀧川先生 歴史の研究は、これまで書かれたものを読むことが中心でしたが、最近は人の話を聞くことも重視されていますね。

 グラック教授 オーラル・ヒストリーも、重要な資料として認められるようになってきています。文書だけでなく、人や物、建物などから分かることすべてが、歴史の理解につながるのです。

 村越さん・持田さん 今までで一番楽しい授業でした。グラック先生、本当にありがとうございました。

 (文・写真:足立恵子)

 東洋英和女学院中学部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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944866 0 東洋英和女学院中学部・高等部 2019/12/12 05:21:00 2019/12/12 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191211-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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