宇宙物理学講義を理解できる英語力…浦和明の星

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 浦和明の星女子中学・高等学校(さいたま市)は6月22日、東京大学大学院で宇宙物理学を研究しているアンナ・リサ・バリー博士を招き、宇宙の成り立ちの謎や女性研究者としてのキャリアなどについて英語で講義を受けた。同校は受験対策にとどまらない英語力が身に付くよう指導しており、生徒たちは英語を使って学ぶさまざまな世界に親しんでいる。

宇宙物理学から女性研究者の生き方まで

バリー博士に英語で質問する生徒たち
バリー博士に英語で質問する生徒たち

 バリー博士はイタリア出身で、イタリア、アメリカ、イギリスの各大学や研究機関で宇宙物理学を研究してきた。現在は日本学術振興会(JSPS)のフェローシップ制度で招聘(しょうへい)され、東京大学大学院で共同研究をしている。JSPSは、このフェロー(外国人研究者)を高校に講師として派遣する「サイエンスダイアログプログラム」を実施しており、今回は参加を希望した同校での講義が実現した。

 会場となった講堂には高1から高3までの希望者約90人が集まっていた。講義の前に高2の生徒が、「世界的に活躍する研究者であるバリー博士から天文学を学べること、また女性でありながら学術研究の世界で活躍するお話が聞けることを楽しみにしています」と英語で歓迎のスピーチをした。

 バリー博士は「私の英語より素晴らしい英語で、とても聡明ですね」と驚きの表情で話し、「私は日本語ができませんが、どんな小さなことでも気軽に質問してください」と笑顔を見せた。

 講堂正面のスクリーンに、パワーポイントで「1.私の研究領域:恒星系力学 2.私の三つの大きな疑問 3.私の話 4.あなたの話は?」という講義概要が映し出され、バリー博士の話が始まった。

 まず、137億年前にビッグバンが起こって宇宙が誕生し、今も宇宙は膨張し続けていることを説明してから、三つの大きな疑問の話に入った。最初に「私の研究テーマの一つは、初期の宇宙において恒星系がどのように形成されたかを解明することです」とし、星群がぶつかり合って、一つの恒星系が形作られる動きなどを解説した。

 次に、2019年4月に研究者の国際チームが世界で初めて超大質量ブラックホールの撮影に成功したことに触れ、「科学者として衝撃でした」と語った。天文学の世界では、太陽の数倍から十数倍程度の質量を持つ恒星質量ブラックホールと、太陽の100万~100億倍に及ぶ質量を持つ超大質量ブラックホールの存在が確認されているが、それらの中間の質量を持つブラックホールの存在は確認されていない。「失われた鎖(ミッシング・リンク)」と呼ばれる、この中間質量ブラックホールは存在するのかどうか。これが、バリー博士のもう一つの研究テーマだという。

宇宙物理学について講義を行ったバリー博士
宇宙物理学について講義を行ったバリー博士

 最後の研究テーマは目に見えない暗黒物質のことだ。宇宙をエネルギーとして見た場合、全体の約7割が暗黒エネルギー、2割強が暗黒物質で占められているという。さらに暗黒物質の多い場所により多くの暗黒物質が集まって銀河や恒星系が形成されていることを説明したうえ、「では、暗黒物質を含まない恒星系は存在するのかどうか。これを数学的アプローチで解決しようというのが私の研究です」とバリー博士は話した。

 さらに、女性の研究者としての経験やキャリアへと話は及んだ。東大大学院でも女性の研究者は3%しかいないことを紹介し、「世界と比べると低いのが現状です。それでも私の研究室も女性は1人だけでなく、3人いますから、状況は良くなっています。ぜひみなさんも続いて下さい」と話し、講義は締めくくられた。

 続く質疑応答では、「そのグラフの単位は何ですか」「この図は暗黒物質のどういう状態を示しているのですか」といった講義内容そのものへの質問から、「研究者になるために、どんな勉強をしてきましたか」「女性研究者としての生活・キャリアはどういうものですか」など、バリー博士個人のことまで質問は多岐に及んだ。

 バリー博士はそれぞれの質問を、「いい質問です」と丁寧に受け止める一方、科学者を志す生徒に対しては、「科学者として何かを発見する最初の人になれることは、素晴らしいこと。研究成果が出るには長い時間がかかることもありますが、人と比べるのではなく、自分のやりたいことを勇気を持って続けて」とアドバイスした。

文系の生徒も多く、今後は人文学系講義も

図書館に設置された天文学コーナー
図書館に設置された天文学コーナー

 講義の終わりに、高2の生徒が「宇宙は数学を使って解明できると知ることができました。また、女性研究者としての生き方を学べて勉強になりました」と英語でお礼の挨拶(あいさつ)をして花束を渡すとバリー博士も「もう泣きそう! みんなをハグしたいわ」と感激の様子だった。「みんなの英語は素晴らしいです。このまま勉強を続けて下さい」

 講義後もバリー博士は「質問が素晴らしく、深い内容で驚きました。とても聡明な生徒です」と同校生徒の印象を語った。

 講義を聴いた別の高2の生徒は、「私は文系ですが、今回の講義を聴き、一人の女性としてどうキャリアを積んでいくかということで、新たな発見がありました。将来は外交官になって国際問題を解決したい」と話した。

 広報部部長の高野栄治教諭によると、今回の講義は希望制だったが、理系の生徒だけでなく、文系の生徒も多く参加したという。天文学の専門用語が多くて心配していたが、図書館に関連本コーナーを設置するなどしたところ、事前に専門用語を勉強した生徒が多かったという。「『思ったより英語が聞き取れました』『理解できました』という生徒が多くいました。また、『英語のスキルをもっと磨きたい』『英語に対するモチベーションが高まりました』という生徒もいて、いい刺激になったようです。今後もサイエンスダイアログプログラムを続け、人文学系の講義もお願いしていきたい」と高野教諭は意気込んだ。

基礎から発展まで地道に英語力を伸ばす

英語で研究論文を発表し、優秀賞を受賞 
英語で研究論文を発表し、優秀賞を受賞 

 同校はカナダのカトリック系修道会によって創立され、カナダ人シスターが英語やフランス語を教えるなど外国語教育に力を入れてきた歴史がある。現在はフランス語の授業はなくなったものの、「英語の明の星」と呼ばれ、英語教育には定評がある。

 英語科の高梨えり子教諭によると、中1から日本人教師とネイティブの教師によって英語4技能を高める授業を行っており、高2からは大学入試レベルの授業を行う。「本校の英語教育は、単に大学入試に合格するためではなく、進学後や社会に出てからも必要になる英語力を見据えて、実力を培います」と高梨教諭は話す。

 昨年度、同校の生徒29人が、科学技術振興機構の高大連携プログラム「グローバルサイエンスキャンパス」で埼玉大学などに学び、英語で研究論文を作成した。なかでも、「Analysis of sugars included in vegetables and mushrooms(野菜やキノコに含まれる糖の分析)」という研究は、同プログラムの全国受講生研究発表会で優秀賞を受賞した。

 高野教諭は、「国際性への理解が求められる今日、文系、理系を問わず、英語を使えるようになるのは必須だと考えます。このような教科横断的な取り組みはますます必要になっていくと思います」と語る。今回の講義のような先端的な科学に触れることができるのも、大学入試対策にとどまらない英語力を磨いているからこそだ。英語を使った学びの喜びが、同校の生徒たちの前にますます開けていくことだろう。

 (文・写真:小山美香)

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702784 0 浦和明の星女子中学・高等学校 2019/07/23 05:21:00 2019/07/30 09:45:22 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190722-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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