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【特集】「ほんとうの私」へのきっかけは普段の学校生活に…浦和明の星

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 浦和明の星女子中学・高等学校(さいたま市)は、「ほんとうの私」を生きるための言葉として掲げ、生徒一人一人の自己実現を後押しする進路指導を行っている。そのために、生徒が興味のあるもの、やりたいものを見つけ、それぞれの得意を生かせるよう、普段の授業や部活、行事などにさまざまなきっかけをちりばめているという。理科の教師として母校に帰った久保瑛子教諭に学校生活を振り返ってもらい、どのように進路を固めていったかなどを聞いた。

自由参加の実験講座が生物学を志すきっかけに

母校に戻って理科の教員として勤めている久保教諭
母校に戻って理科の教員として勤めている久保教諭

 久保教諭は2012年3月に同校を卒業し、大学の理学部では生物学を専攻した。さらに大学院で学んで、17年に教師として母校に戻ってきた。非常勤を経て、今年から専任の教員として教壇に立っている。「大好きな母校に帰ってこられたのは、本当にうれしいですね。生徒だった時の気持ちを思い返して、生徒に共感できる先生でありたいです」

 久保教諭が生物学を志したきっかけは、同校の実験講座にあったという。「放課後や夏休みなどの長期休みに、当時から定期的に実験講座がありました。自由参加で、大学でやるような実験ができるので、とてもワクワクしました」と振り返る。

 実験の内容は「与えられた肉片が鶏肉か豚肉か牛肉か判定する」「メダカのDNA分析~ミナミメダカかキタメダカか」「豚の頭部の解剖」など。マイクロピペットや電気泳動装置、サーマルサイクラーなど、大学の研究で使うような実験器具を操作できるのが楽しかったそうだ。「毎月のように実験講座に参加して、自分の体内の目には見えないミクロの世界で、こんなことが起こっているんだと、驚きの連続でした」。久保教諭は、実験を積み重ねるうちに、「生物学を大学でも学びたい」と進路を固めたという。

 教師となって、自身も昨年、理化学研究所の研究員に協力を得て、土の中の放線菌を培養し、抗生物質の産生の有無を調べる研究を、生徒たちと進めている。

 理科主任で当時の久保教諭を教えていた高野教諭は、「理科の実験講座だけでなく、学校周辺の歴史と地理を散歩しながら学ぶ東浦和巡検や、薬学体験実習、一日医師体験、大学体験授業、外国人研究者による英語の宇宙物理学講座など、本校は課外の自由参加の講座をいくつも提供しています。また、東日本大震災の被災地ボランティア、クリスマスのチャリティー活動なども毎年継続して行っています。強制はしませんが、なるべく多くの経験をさせて、興味のあることを見つけるきっかけになればと考えています」と話す。

温かい校風が生徒を成長させる下地に

久保教諭(左)と在学中に指導していた高野教諭
久保教諭(左)と在学中に指導していた高野教諭

 当時の久保教諭は体育委員でバスケットボール部に所属していた。元気で快活な生徒だったそうだ。「少しやんちゃをして、よく先生に叱られました」と頭をかく。

 「でも、先生方はとても温かいのです。悪いことをしたら当然叱られますが、いつも優しく見守ってくれる。あなたがやりたいことをやりなさい、と後押ししてくれるのです。先生と生徒の仲が良く、心地よい距離感なのです。こうした温かい校風は、今も変わっていないと感じます」

 今年の新型コロナウイルスの影響による休校期間中も、同校の校風をうかがわせるエピソードがあったという。思うように授業などができない日が続くなか、島村新校長は毎月1回、行っているアッセンブリ(全校集会)に代えて動画を5本公開し、自ら全校生徒に手紙を何通も送って、生徒たちと交流を図ったという。

 島村校長は手紙の中で「今、私たちはどんなに『みんなで』ということが大切か気付かされていると思いませんか。今は物理的には一緒に集えないけれど、今だって、いつだって、星子(ほしこ)の心は一つです」と呼びかけている。

 生徒たちからは、「私はこの自粛期間中、『みんなで』を一番実感できました」「学校に行かなくてもつながっている実感が湧き、元気を取り戻すことができました」「離れているのに不思議とみんなが近くにいるような実感が湧いてきました」など、次々と返事の手紙が届いたそうだ。

 高野教諭は、「明の星らしい温かい方法で、先生と生徒が一緒にこの危機を乗り越えていると思います。生徒一人一人が安心して自分を認め、大きく成長できる下地があることが、こうしたやり取りにも表れていると思います」と話す。

聖書の言葉や聖歌が受験を乗り越える力に

毎朝、聖歌を歌い、聖句を読むことから一日が始まる
毎朝、聖歌を歌い、聖句を読むことから一日が始まる

 同校では「Be your best and truest self」(最善のあなたでありなさい。そして、最も真実なあなたでありなさい)という言葉をスクールモットーとしている。これをさらに一言で表したのが「ほんとうの私」であり、進路指導もこの言葉を実現するために行われるという。

 高野教諭は「本校の進路指導は、単なる進学指導ではありません。大学のネームバリューや偏差値にとらわれず、生徒が、それぞれの目指す『ほんとうの私』になるための種まきなのです。それを見つけるきっかけが、普段の授業や部活動、行事などにちりばめられているのです」と説明する。久保教諭も、大学名や偏差値に目を奪われることなく、自分が学びたい生物学が学べる大学を中心に受験したそうだ。

 受験勉強中、久保教諭は、「ごらんよ空の鳥」という聖歌を常に思い浮かべていたという。マタイによる福音書にある「思い悩むな。(中略)空の鳥をよく見なさい。種もまかず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養って下さる」という一節を歌にしたものだ。「入学して初めて歌った思い出の聖歌です。今日できることを精いっぱい頑張りなさい、ということだと思い、目の前の試験に全力を尽くしました」

 同校では毎朝、聖歌を歌い、聖句を読んで静かなひとときを過ごす。「聖歌の美しいハーモニーに、憧れて入学しました。宗教を強制されることはありませんが、毎朝の聖歌や聖句を通して学ぶ聖書の言葉や、校長先生の言葉が日常にあり、それが自然と普段の行動や生活につながり、受験期を乗り越える力にもなったと思います」と久保教諭は振り返った。

 高野教諭は「生徒一人一人が『ほんとうの私』を目指すこと、それはみんなとの競争ではなく、ありのままの私を認め、みんなが一緒になって、初めて実現できることだと考えています」と説明する。「生徒それぞれが『ほんとうの私』になれるように、授業や行事、部活動などで、自分の得意分野を生かせるようになっています。私たち教員はそれを温かく見守り、いつでも相談や悩みを聞く体制を整えているのです」

 久保教諭も「『ほんとうの私』というのは、在学中も卒業後も、明の星生の人生の指針になっていると思います」と話す。

 久保教諭の友人たちも、「ほんとうの私」を目指して、さまざまな人生を歩んでいるという。大学の物理学部を目指していたものの、「ほんとうの私」を模索した結果、哲学科に入り、さらに、人を楽しませるのが好きだということに気付いてマジシャンになった人がいる。合唱コンクールで活躍して、オペラ歌手になった人、文化祭ではポスターを描き、美大を経てデザイナーになった人、「両親のための家を建てたい」と建築家になった人、動画の制作が得意で、広告代理店に就職した人もいるという。

 高野教諭は「自己実現とは、生涯をかけて成していくことであり、中高生の時に、その種まきをしているのです。明の星での学びや気付きが今につながっていると、将来、気付いてくれたらうれしいですね」と話し、久保教諭も「今度は私が生徒に種まきをする番です」と笑顔を見せた。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:浦和明の星女子中学・高等学校)

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1500783 0 浦和明の星女子中学・高等学校 2020/09/28 05:01:00 2020/10/23 11:58:42 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200925-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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