取り組み30年、体験学習の感動が生徒の視野を広げる…高輪

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 高輪中学高等学校(東京都港区)は、中学1~3年と高校2年生を対象に全員参加の体験学習を行っている。都会に慣れた生徒たちに豊かな自然や農家の生活などを体験させ、感動を味わってもらうことで、豊かな人間性を育むのが狙いだ。この取り組みを始めて30年になるといい、今年も7月27~30日、中1の「自然体験学習」と中2の「農工芸体験学習」がともに行われた。担当教員と参加した生徒たちの話を聞いた。

仲間との絆を深め、団結力を高める中1生

「自然体験学習」を担当した君島直人教諭と「農工芸体験学習」を担当した田中俊充教諭
「自然体験学習」を担当した君島直人教諭と「農工芸体験学習」を担当した田中俊充教諭

 「自然体験学習」には、中1生238人が参加した。行き先は例年通り、山梨県富士河口湖町と長野県の諏訪地区及び上高地だ。初日は飯ごう炊さんとカレー作り、2日目は下諏訪の散策や松本城の見学、3日目は上高地の散策、最終日は牧場体験を行った。

 中1を受け持つ君島直人先生は「入学から3か月後に行われるこの体験学習で生徒は絆を深め、クラスの結束が強まる」と話す。班行動が多いため、役割分担やチームワークなど、集団行動の基本が身に付くという。飯ごう炊さんとカレー作りは、作業を分担しないと時間内に終わらない。下諏訪の散策は、行き先を話し合って決めなければならない。助け合って行動するうちに、自然と仲間意識が芽生えていくという。

 この4日間で生徒たちは互いの距離を一気に縮め、出発前までのおとなしさが嘘のようににぎやかになったという。おとなしいと思っていた子が、カレー作りで的確な指示を出していたりして、生徒の意外な一面を知ることもできたという。「仲間と過ごす夜の時間は、格別に楽しかったはず。両親や教員の知らない出来事を共有することで絆が深まり、団結力につながるのでしょう。まとまりの良さも全然違います。9月の高学祭で発表する合唱に向けて、良い状態になりました」と君島先生は満足そうだ。

 「自然は守る価値のあるもので、大事にしなければいけない」。桑野聡君は、「自然体験学習」を振り返ってそう実感したという。田舎に住んでいたこともあるが、上高地は想像以上に素晴らしかったそうだ。「梓川(あずさがわ)の水がきれいで冷たくて、すぐ近くの木で猿も見た。国の特別名勝・特別天然記念物に指定されているだけあって、空気も澄んでいた。でもきれいなだけじゃなくて、触るとかぶれる植物とか危険もあって新鮮でした」

役割分担が重要なカレー作りと飯ごう炊さん
役割分担が重要なカレー作りと飯ごう炊さん

 飯ごう炊さんとカレー作りも忘れられない思い出だ。かまどは火加減が難しい。まきを追加しても思うように火力を強められず、ご飯はべちゃべちゃ、カレーは水っぽい仕上がりになってしまった。「簡単に火加減を調節できる炊飯器やガスコンロは便利だなあと思いました」。桑野君の夢は、人の生活を快適にする物やシステムを発明することだという。不便さを痛感した体験が、きっと役に立つだろう。

 川口景祐君は諏訪地方に古くから伝わる「御柱祭」に強い衝撃を受けた。初日の夜、宿泊先のホテルでこの祭りについて学ぶ特別プログラムがあり、巨大な丸太に人がまたがって急坂を下る「木落(きおと)し」の映像を見た。迫力満点の映像に加え、死者が出ることもあるほどの危険、乗り手に選ばれる名誉について聞き、圧倒されたという。

 上高地散策では、知識豊富なガイドに刺激を受けた。「自分にはまだ知らないことがいっぱいあると分かった。疑問に思ったことは調べるようにして、知識を付けていきたい」。また、美しい景観に感銘を受けた川口君は、景勝地巡りがしたくなったという。「グランドキャニオンとか世界の自然も見たいので、海外でも困らないよう語学の勉強に力を入れたい」

農家の苦労を実感し、採れたて野菜に感動する

工芸体験の「陶芸」では手動のろくろに挑戦
工芸体験の「陶芸」では手動のろくろに挑戦

 今年の「農工芸体験学習」には、中2生237人が参加した。行き先は福島県の会津若松市と喜多方市周辺だ。1日目にカヌー体験と周辺の散策、2日目に鶴ヶ城見学や工芸体験、3日目に農作業体験、4日目に喜多方の散策を実施した。東日本大震災以降は行き先を替えていたが、今年から元のコースで行うことになった。生徒たちは、農作業体験でお世話になる農家の方々から「お帰りなさい」の言葉をもらったという。

 中1の体験学習は生徒同士の親睦を深める役割が大きいが、中2はすでに関係性が出来上がっている。むしろ親しい仲間との宿泊行事に浮かれて騒ぎがちなため、「2年生に対しては、規律やけじめを重視して指導します」と中2を担当する田中俊充先生は話す。

 都会で暮らす生徒にとって、貴重な学びとなるのは農作業体験だ。班ごとに、一つの農家で丸1日お世話になる。仲間とともに考えて行動し、自分たちとは全く違う生活を送る人々と交流する。田中先生は「土を触ったことのない生徒、虫が苦手な生徒、野菜を残しがちな生徒は多い。苦労して野菜を作っている人がいるという知識はあっても、普段意識することはなかったでしょう。農家の方と接してその暮らしを垣間見たことは、大きな財産になったはず」と語る。

農作業体験は初めての連続
農作業体験は初めての連続

 炭谷真史君は「農作業体験がとても楽しかった」と振り返る。裸足(はだし)で畑に入って種をまいたり、ジャガイモの袋詰めを手伝ったりした。とりわけ感動したのは、作業の合間に食べさせてもらった採れたての野菜だ。「水に漬けて冷やしておいたキュウリやトマト、生で食べたナスも、びっくりするくらいおいしかった。特に目の前で切ってくれたスイカは、実が真っ赤で甘くて、感動的においしかった。今度ホームセンターで種を買ってきて、家で野菜や果物を作ってみたい」。噴火の跡が残る荒々しい磐梯山の姿にも感銘を受けた。「山の半分が崩れて、その部分は大地がむき出しになっているんです。生の自然という感じがしました」

 6種類の中から2種類を選んで行う工芸体験で、熊谷遥斗君はろうそくに絵を描く「絵ろうそく」と陶芸を選んだ。「曲面に筆で絵を描くのが難しかった。職人さんが桜の花びらとか細かい絵をきれいに描いていて、すごいと思った。陶芸は電動ろくろではなく手動だったので、湯飲みを作るのは面白かったけど疲れた」。農作業体験では、暑い中で畑の草むしりを1時間手伝い、農家の苦労を実感した。畑にはクモやムカデがいるし、蚊も飛んでいる。虫が苦手という熊谷君にとっては、体力だけでなく勇気や忍耐も必要だったようだ。「早く終わらせたいという一心で頑張った。今まで、畑よりずっと狭い家の庭の草むしりに何時間もかけていたけど、もっと早くできるようになると思う」

 1年生、2年生ともに、都会の生活に慣れた生徒たちの心には、豊かな自然の印象が強く刻まれたようだ。

体験を通して視野を広げ、興味の対象を見つける

 同校の体験学習は中1の「自然体験学習」と中2の「農工芸体験学習」だけではない。中3では沖縄の離島で民泊する4泊5日「西日本探訪」、高2ではオーストラリアでファームステイする5泊6日の「海外学校交流」がある。すべて全員参加のプログラムだ。入試広報部長の真壁亨先生は「中3と高2の体験学習は修学旅行にあたりますが、観光は少なく、体験による学びに重点を置いています」と話す。

 同校が体験学習に取り組み始めて30年になるという。豊かな自然や伝統文化に触れ、仲間と協働し、地元の人々と交流する。どれほど多くの生徒たちが、そうした体験を通して自分の視野を広げ、興味の対象を見いだしていったことだろう。

 (文:佐々木志野 写真:中学受験サポート 一部写真提供:高輪中学高等学校)

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931346 0 高輪中学高等学校 2019/12/04 05:22:00 2019/12/04 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191203-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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