生徒の自主自立を促し、成長を見守る教育…高輪

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 高輪中学高等学校(東京都港区)で今年度、平野豊中学教頭が新校長に就任した。新卒で赴任して以来30年余、同校で教鞭(きょうべん)を執り、学校の運営に力を尽くしてきた平野校長に、同校の校風や、生徒の自主自立を促す教育理念とその取り組みなどについて聞いた。

生徒の自主自立を育むさまざまな取り組み

 平野校長は国学院大学を卒業後、国語科教員として同校に赴任した。中学が1968年に生徒募集を停止し、89年に募集再開した際に中学担任となり、その後、入試広報部長や高校・中学教頭などを経て、この春校長に就任した。

 ――どういう点が高輪学園の良さだと考えますか。

生徒の自主自立を促す取り組みについて語る平野校長
生徒の自主自立を促す取り組みについて語る平野校長

 中学再開後、より良い学校づくりを目指し、教員が主体となって学校の仕組みやカリキュラムを考え、協議を重ねて改善に努めているということです。そのため学校運営に現場の実感が生かされ、自由で大らかな校風につながっていると思います。私としては、大切にしてきた教育方針を引き継ぎながら、より良い運営に努めるつもりです。

 ――学校の教育方針について説明してください。

 本校の校訓は「自主堅正」。自分の意志で自分を戒め正すこと。困難を乗り越え、人格向上に努力しようということです。教員が誘導するのではなく、生徒の自立を促し、見守るのが本校の教育の基本です。

 ――生徒の自主自立を促すための、具体的な取り組みはありますか。

 代表的なものの一つは、中1の国語で毎週行う「国語表現」です。やみくもに書かせるのではなく、「人に伝えること」を意識してテーマを選んでいます。たとえば、清涼飲料水のCMの企画を考え、文章にする。誰に向けて、どんな手法で、何をアピールするか、誰をキャスティングするかなどのアイデアを、読んでイメージできるように書くのです。絵コンテを書かせたりもします。

 また、一人一人に、異なった複雑な図形の書かれた紙を渡し、それを文章だけで説明させます。書き上げたものを隣の席同士で交換し、読んでその図形を再現できるか、分からない時は文章をどう直せば分かるかも検討します。伝える難しさや伝える工夫の面白さ、伝わった達成感を経験することが自信につながり、前向きに学ぶ姿勢が芽生えます。

 また、自分の目で見て手で触れる体験を重視しています。理科では実験や観察を多く取り入れ、学校敷地内の植物観察や、各地の科学館、博物館の見学も行います。コロナ休校を受けて実施している動画授業もこの方針を踏まえており、先日の中1理科の授業では、桜の花弁や(がく)を紙の上に並べ、数を確認する動画がアップされていました。社会科でも、鎌倉や浅草など伝統文化が残る地区へ校外学習に出かけます。

 ――ホームページの校長挨拶(あいさつ)で「見えるものの奥にある見えないものを見つめよう」という教育理念を紹介していますね。

 そうです。各学年で行う総合学習の宿泊体験行事は、まさにそれが狙い。さまざまな物事を間近に見て体験し、背景にある社会の仕組みや自分との関わりを知ることで、その後の行動の糧とします。

自然体験学習で、上高地を散策する中1生
自然体験学習で、上高地を散策する中1生
農工芸体験学習でジャガイモを収穫する中2生
農工芸体験学習でジャガイモを収穫する中2生
西日本探訪で訪れた伊是名島で海人(うみんちゅ)体験をする中3生
西日本探訪で訪れた伊是名島で海人(うみんちゅ)体験をする中3生

 中1の夏に行う上高地(長野県)の自然体験学習では、飯盒炊爨(はんごうすいさん)で仲間との協力を体験し、人との関わりの中での自分の役割を意識します。

 中2の夏は福島県の会津・喜多方方面で農工芸体験学習を行い、地元の農家で野菜の収穫などを行います。よく知る食べ物が食卓に並ぶ前の状態を垣間見る機会です。ある生徒は、収穫するジャガイモを(くわ)で傷つけてしまった体験から「スーパーでは簡単に手に入るのに、掘り起こすだけで大変」と、食を支える人々の苦労に思いを致していました。

 中3の秋に行う「西日本探訪」では、沖縄・伊是名島(いぜなじま)の民泊体験を行います。漁師の家やサトウキビ農家などで作業を手伝い、日本の文化の多様さを体感します。さらに、沖縄戦の舞台となった糸満のガマの訪問や、嘉手納(かでな)基地を望む佐喜眞(さきま)美術館で「沖縄戦の図」鑑賞などを行い、歴史と今のつながりを肌で感じます。

 昨年の沖縄では、見学予定だった首里城が当日朝に焼け落ちるという出来事がありました。ガイドさんが涙を浮かべて見学中止を告げる様子に、失われたものの大きさを思い、「再建後にぜひ訪ねたい」と感想を書いた生徒もいました。忘れられない体験になったと思います。

 高2では海外に目を向け、オーストラリア・ゴールドコーストで5泊6日の海外学校交流を行います。前半は農場に泊まるファームステイを行い、後半は現地の高校の授業を受け、生徒と交流します。それまで蓄積された日本文化の体験がコミュニケーションの助けとなります。

 もちろん、日頃から英語力の向上にも力を入れています。読解力や自己表現力を重視するほか、中学各学年で週1回、ネイティブの講師と英語教員による英会話授業も行います。

 そうした成果の集大成が、中3の英語スピーチコンテストです。「将来の夢」や「尊敬する人物」などをテーマに、自分の言葉で語ります。そのほか、中3、高1の希望者にはイギリスのサマースクールへの参加やアメリカでホームステイする語学研修も用意しています。

個性を発揮できる多くの発表機会

 このほかにも発表の機会を多く設けていて、これも生徒の自主自立を養う機会になっています。大きな舞台となるのは文化祭です。中1は合唱コンクール、中2はクラスのオリジナル演劇を披露します。期間中に何度か公演しますが、「失敗も勉強のうち。恥ずかしくない」という意識があるので、最初はミスが多くても、回を追ってうまくなり、盛り上がっていきます。

 中3は、沖縄文化に関するチーム別の発表企画を行います。エイサーや三線(さんしん)演奏のほか、沖縄名物のハンバーガーショップ模擬店で、ハンバーグや紅芋(べにいも)タルト、さんぴん茶を販売するチームもあります。

 ――部活動の発表もあるのですか。

 部活動も個性的です。たとえば93人の部員を誇る旅行・鉄道研究部は、文化祭では教室の大半に広がるNゲージ模型で参観者を驚かせます。理科研究部は膨大な数の昆虫標本を有するほか、イカから発光細菌を取り出す研究や、池や川の水を身近なものでろ過して災害時の飲用にする研究などレベルの高い研究実績もあり、見応えがあります。

 「部」や「同好会」の他に、少数の同好の士が作る「サークル」もあります。切手収集や縄跳びのダブルダッチ、クイズ研究といったマニアックなサークルが多く、実績を積んで部員を増やし、同好会や部に昇格することもあります。そうした様子も楽しく見守っています。

教員は生徒に信頼される大人として

 ――先生と生徒の関係性はどうですか。

 教員は「家族ではないが信頼の置ける大人」であることを心がけています。本校は教員の専任率が8割と高く、じっくり時間を割いてコミュニケーションできる環境です。さらに1学年6クラスに対し、担任の他に学年所属教員が5人。クラス数の約2倍の11人で、ゆとりをもって生徒の問題に向き合います。

 職員室前に設けたテーブルには、休み時間や放課後に多くの生徒が勉強や生活面の相談に来ます。どの教員も、生徒の話をじっくり聞くことから始めます。

 ――生徒の安心感を大切にしているのですね。

 そうです。自然体でいられる環境で自分の興味を見つけて打ち込むので、おっとりしたように見えても情熱があり、芯の強い生徒が多いと思います。国公立および難関私大、GMARCHの進学が4割前後と安定した実績が出せているのも、こうした校風ゆえかも知れません。

 同校の2020年度出願者数は、JR高輪ゲートウェイ駅の新設やWeb出願の開始の効果もあって約26%増加したという。平野新校長は、「より志願しやすくなり、登校の利便も増しました。生徒たちには『自主堅正』の校風のもと、自分を見つめながら日々さまざまな体験をして、成長していってほしい」と穏やかな笑顔で語った。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート)

 高輪中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1230739 0 高輪中学高等学校 2020/05/22 05:21:00 2020/05/22 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200520-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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