【特集】海に鍛え、挑戦して自分の進むべき道を見つける…逗子開成

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 逗子開成中学校・高等学校(神奈川県逗子市)は、逗子海岸に面して立つ環境を生かした海洋教育プログラムによって、生徒に自らの成長を実感させる教育を行っている。その上で、年間100を超える「土曜講座」に参加することで、生徒たちは興味・関心の幅を広げ、自分の進む道を見つける力を養うという。同校の教育理念やこうした教育を実現するために同校が整えている施設・設備などを紹介する。

拠点を整備してユニークな海洋教育に取り組む

 同校の校名は、古代中国の易経にある「開物成務(人間性を開拓・啓発し、人としての務めをなす)」という言葉に由来し、これを教育の原点としている。目の前に逗子海岸を望み、背後に山々の控える豊かな自然の中で、知性と豊かな心を養い、たくましい身体を作って社会に貢献できる人物を育てたいという願いが込められているという。

 同校は、そのためのさまざまな教育施設、学習環境を整えているが、特色と言えるのはやはり、海を生かしたさまざまなプログラムだ。

ヨットの製作に取り組む中1生たち
ヨットの製作に取り組む中1生たち

 なかでも毎年7月に逗子の海で1.5キロ泳ぐ「遠泳実習」と、自分たちの手で製作したヨットで海を走る「ヨット製作・帆走実習」は象徴的な行事と言える。

 「遠泳実習」の対象は中3生だ。入学時はまったく泳げない生徒もいるが、中1からプールや海での授業、夏休みの集中講座を通して段階的に泳力を高めていく。本番では周りに救助艇やボートを配し、生徒たちは隊列を作って互いに励まし合いながら泳ぐ。

 小西信行教頭は、「少しずつ泳ぎに慣れ、仲間と助け合って、ゴールまで泳ぎ切ったとき、それは大きな自信になり、受験や社会などの壁を乗り越える支えになってくれます」と話す。

 「ヨット製作」は、中1の10月から翌年3月にかけて行われる。生徒たちはグループに分かれて船体の外板を張ったり、塗装したりして製作を進める。ヨット製作中は、並行して海洋講義も行われる。中2の5月に進水式を行って海に乗り出し、3年間で4回ほど「帆走実習」に取り組む。

 中学ヨット部顧問を務める風間啓一教諭は、「命を預ける道具なのでヨット作りは真剣です。また、ヨット製作と並行して行われる海洋講義では、ヨットの基礎知識や環境問題などについて考えます」と説明する。

逗子湾内で約1500メートルを泳ぐ中3生の遠泳実習
逗子湾内で約1500メートルを泳ぐ中3生の遠泳実習

 「遠泳実習」や「ヨット製作・帆走実習」などのユニークなプログラムを実施するためには、それなりの施設、活動拠点が必要だ。

 「遠泳実習」の第一歩は、プールで始まる。同校のプールは屋外プールながら温水プールであり、水温を27、28度に維持できるので5月上旬から10月中旬まで泳ぐことができる。まったく平泳ぎができない生徒も、この温水プールで泳ぎを身に付け、顔を水につけずに1500メートルを泳げるだけの力を付けて、海での遠泳に挑むという。

 「ヨット製作・帆走実習」の拠点は、逗子湾に接する「海洋教育センター」だ。1階には二つの講義室があり、2階の宿泊室は88人が泊まれる。地下にはヨット工作室や艇庫、浴室、シャワー室を備えている。

 「2階の宿泊室の天井は船底をイメージし、照明や丸窓などは船室をほうふつとさせるものになっています。海に面しているので、台風の時は風雨が直接吹き付けるのですが、普段は波の音をBGMに眠ることができます。2階中央の部屋は保護者の方が、よくランチ会などで利用されています」と風間教諭は説明する。

 風間教諭によると、艇庫から海へ出るトンネルは、風が強いと砂で埋まってしまうため、みんなで一生懸命にかき出す。「生徒たちは、なぜかその作業が大好きで、プロかと思うくらいきれいにしてくれます」

 また、「父親懇親会」も6、7月に海洋教育センターの1階で行われる。今年は残念ながらコロナ禍の影響で中止となったが、例年は400人ほどが参加する人気イベントだそうだ。

徳間理事長時代、次々と拡充した施設・制度

「本校での豊かな体験を基に生きる力を身に付けてほしい」と話す小西教頭
「本校での豊かな体験を基に生きる力を身に付けてほしい」と話す小西教頭

 同校の教育施設はもちろん、海洋教育に関するものだけではない。「研修センター」と「セミナーハウス」は、生徒たちの勉強や部活動の拠点だ。いずれも宿泊室があるのが特徴で、合宿所として、あるいは練習試合などに招いた他校生のために利用されている。

 本館・校舎とグラウンドを挟んで立つ「セミナーハウス」は地上2階、地下1階建てで、大小の和式宿泊施設を特徴とする多目的施設。90人が利用できる地下の大研修室、小教室、男女浴室などがある。大研修室は和太鼓部の練習場所になっている。電子黒板が2台設置してあり、高2の研究旅行の事前・事後学習などに使われている。

 本館・校舎の南側に立つ「研修センター」は2階建てで、宿泊室は2階に5室あり、25人程度まで泊まることができる。1階には高3生用の自習室が入り、休日も早朝から利用可能になっている。

 映像を中心とした情操教育に大きな役割を果たしているのは、「研修センター」に並んで立つ「徳間記念ホール」だ。340席を備えた多目的ホールで、映画や音楽、演劇などの鑑賞、講演会や学年集会、保護者説明会などに活用されている。催しのない時は、演劇部の練習や発表、ダンス部の練習場としても活用されている。

 風間教諭によると、映像鑑賞では各学年を対象に年に5作品を上映している。メッセージが伝わりやすいドキュメント映画が中心だといい、生徒たちは鑑賞後、感想文を書いて提出する。音楽鑑賞はプロの演奏家を招いて行われる。その際、国語で平家物語を学ぶのに合わせて、平家琵琶(びわ)を聴くといったように関連付けを心がけていて、生徒が理解を深められるようにしているという。

 「徳間記念ホール」は、同校の卒業生であり、建設当時、理事長を務めた徳間書店社長の徳間康快(やすよし)氏の名に由来する。徳間氏は84年に理事長に就任し、実業家としての手腕を生かして矢継ぎ早に学校改革を行った。このホールや「海洋教育センター」の建設、「セミナーハウス」「研修センター」の整備など施設面を充実させたほか、中学校の募集再開、学校週5日制実施や「土曜講座」の開設など、教育制度の面でも大胆に新風を吹き込んだという。

進路を探るきっかけとなる「土曜講座」

「生徒はヨットや遠泳に挑戦することで成長を実感する」と話す風間教諭
「生徒はヨットや遠泳に挑戦することで成長を実感する」と話す風間教諭

 「土曜講座」は、90年代から徐々に公立学校で実施された学校週5日制を採用するのに伴って、土曜日に教養や知恵を育てる目的で開かれた講座だ。徳間氏が充実させていったさまざまな施設を拠点として毎年100講座以上が開講され、教職員をはじめ、在校生の保護者や卒業生、各界の専門家などを講師として生徒の知見を広げている。

 たとえば、講座の一つ「お泊り保育を手伝おう!」は20年以上続いている人気講座だ。近隣の保育園の子供たちを「海洋教育センター」に招待し、一緒に遊び、寝かしつけなどを手伝う。主に高1、高2を対象とし、例年10人前後の生徒が参加しているという。

 風間教諭が担任していた生徒の中には、「お泊り保育」の経験から、小さい子供の世話をするのが好きだということに気付き、小児科医を志望した生徒がいるという。「そろそろ研修医になっている頃だと思います。100も講座があると、何かしらその生徒に合った講座が見つかりますし、逆に受講してみたけれど、自分には合わなかったということも自分の進路を定める材料になります」

 また、「徳間記念ホール」で以前開講されていた「特撮映画を作ろう!」という講座を受けて、大学を卒業後、映画会社に就職を決めた生徒もいるという。

 「ヨットや遠泳は、挑戦することで成長を実感することにつながっています。また、多彩な土曜講座から興味・関心がある講座を受講することは、自分の進む道を探るきっかけの一つにもなっています」と風間教諭は話す。「進みたい道が決まると、学びへの意欲も高まります。その意味で、本校のさまざまな実習や講座は、偏差値では測れない『自分の進むべき道を見つける力』を育てていると確信しています」

 「開物成務とチャレンジの心が、6年間で生徒の中に育っていることを実感します」と小西教頭と風間教諭は口をそろえる。「本校での豊かな体験を基に生きる力を身に付けて巣立っていってほしい」

 (文:山口俊成 写真:中学受験サポート、一部写真提供:逗子開成中学校・高等学校)

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1402173 0 逗子開成中学校・高等学校 2020/08/13 05:21:00 2020/10/23 11:27:04 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200811-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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