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【特集】帰ってきては新たな力を得る「港」のような学校へ…光塩

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 光塩女子学院中等科・高等科(東京都杉並区)の佐野摩美校長は今春、校長就任1周年を迎えた。生徒が自らの役割や本領を見つけられるよう、一人一人に寄り添う姿勢を基本とし、基礎・基本の学力定着にも力を入れてきた。また、現代社会の動きを踏まえ、探究活動にもさまざまな試みを取り入れてきたという。佐野校長に同校の特徴やこれからの抱負などを聞いた。

基礎・基本を身に付けて自分の役割・本領を見つける

 佐野校長は、自身、光塩の卒業生であり、上智大学を卒業して母校に国語科教員として赴任して以来約35年間、生徒と共に学び続けてきた。

――光塩の教育の特徴は何だと考えますか。

授業をする佐野校長
授業をする佐野校長

 「一人一人がかけがえのない存在」という揺るぎない価値観が通奏低音のように流れていることです。本校の名称は、新約聖書の言葉『世の光 地の塩』に由来します。「光」とは燭台(しょくだい)の光であり、ろうそくは自ら溶けることで光を発して世の中を照らします。「塩」も自ら溶けることで食べ物をおいしくします。同様に、人間にも一人一人に必ず役割や本領がある。それを自ら見つけて磨き、「人のために生きることを喜びとする」人生を歩むことが、本校の教育目標です。

 私たちは、生徒一人一人が思う存分に力を発揮できるよう、一人一人に寄り添うことを重視しています。中高時代は悩み多き時期です。調子が出ない時も、勉強したくない時もあります。放っておいてほしい反面、支えてほしい時もある。微妙な心の揺れは、表情や振る舞い、テストの答案の文字などにも表れます。それを見逃さず、声なき声に耳を傾け、見守り、相談に乗る。学年全体を6、7人の教員で受け持つ共同担任制は、外国人シスターと日本人の教員とがチームティーチングをしていた創立当初から続いています。

 ですから、卒業後も生徒と教員の結びつきは強いですね。卒業生から、先日「就職のための小論文を添削してほしい」と連絡があり、卒業以来久々に彼女の文章に再会しましたが、文章力がアップしていてうれしかったです。

――生徒が自分の「役割や本領」を見つけるため、どのような教育を行っていますか。

 まず、基礎と基本の習得です。あらゆる知識や技術を学ぶ前提として、英語力や文章表現、計算力などを着実に身に付け、またそうした訓練を自ら行う習慣付けを重視しています。全学年で、土曜日の朝に漢字と英単語の小テストを交互に実施しているほか、計算力テストや定期試験の振り返り学習などを学年ごとにきめ細かく実施しています。

 その上で、世の中への興味を広げ、自分の将来の可能性を考えるキャリア教育に力を入れています。中2で行う「キャリア講演会」では、保護者や親戚などに仕事についてインタビューし、何人かをお招きしてお話しいただきます。世の中を知るとともに、素晴らしい仕事をしていらっしゃる方が意外と身近にいると意識することで、「自分にもできる」というモチベーションアップにつながります。

 さらに、中等科の総合学習の時間などには、さまざまな職業の第一線の方、国立天文台などでご活躍の専門家の話を聴く講演会を年に数回実施します。高等科の「高大連携プログラム」ではお茶の水女子大学、上智大学、国際基督教大学の先生方をお招きしての特別講義を行ったり、東京農工大学を訪れて「イノベーションワークショップ」に参加したりしています。

世の中の出来事を「我がこと」として捉える探究学習

――校長として、力を入れてきたことは何ですか。

 生徒たちがこの世界や環境に向き合い、自分の学びを深め、成長へと進むことを願い、昨年度から「光と塩」の精神のうち、「塩」に着目して「S・A・L・T」をキーワードとした語りかけを行っています。Sは「Sustainability(持続可能性―環境問題)」、Aは「Ambition(大志―夢の実現)」、Lは「Lux Veritatis(真理の光―学問探究)、Tは「Tolerance(寛容―多様性)」。「自分の夢を追求し、本領を発揮して社会全体の幸せをめざそう」というメッセージです。始業式、終業式を始め、行事の際のあいさつ文などで折に触れて発信しています。

――授業やカリキュラムの面で重視していることは。

探究特別講座で「伝統舞踊」について学ぶ生徒たち
探究特別講座で「伝統舞踊」について学ぶ生徒たち

 探究学習の進化です。今の中3生が高1になる2022年度には、高校で「新学習指導要領」が実施され、知識・技能の習得に加えて思考力や表現力、学びに向かう力、人間性などを高める教育が求められます。そのためにプログラムの再構築を進めています。

 昨年度は、10月から11月にかけて、中1から高2までを対象に任意参加の「探究特別講座」を行いました。テーマは「イマドキ光塩生が考える『今ない仕事』」です。約40人の生徒が学年横断のグループワークで、保護者や卒業生に職業観を問うオンラインインタビューを行った上で、社会の変化を予測し、グループ発表を行いました。その事後学習として、11月に立命館アジア太平洋大学の出口治明学長のオンライン講演を聴き、今後の社会の変化を踏まえた学習の意味について考えました。

 中2では3学期に、それまでの学習を踏まえた特別授業「探究チャレンジ」を実施しました。授業の内容を基に自らテーマを決め、自分のデバイスを活用してスライドなどにまとめて5人ほどのグループ内で個人発表します。最終的にグループからの代表者を決め、全体発表の機会を設けました。

 その際、題名を「〇〇について」ではなく疑問形にすることを提案しました。自分の問題意識がどこにあるかを自覚するためです。発表では、「人はなぜ会話ができるのか」「絶滅した動物と生き残った動物は何が違ったか」「サラエボ事件はなぜサラエボで起きたか」など、興味深いテーマが数多く見られました。

――盛りだくさんな内容ですね。

 もちろん、従来からの教育をベースにしています。このほかにも、全学年対象に週に1度行う「特別講座」では、授業の領域を超える知識を学んだり、世の中について考えたりする10以上の講座を設定して、ディスカッションや創作活動など多様な取り組みを行います。高2の国語の「教養演習」は、哲学、生命倫理、異文化理解、環境問題など多岐にわたるテーマを掘り下げる科目横断の思考の鍛錬の場です。卒業生・在校生の保護者にご自身の専門分野についてお話しいただく講演会もあり、受験対策を超えて、人生や社会のあり方について深く探究する機会になっています。

 重視しているのは、世の中の物事や出来事を「我がこと」として考えることです。この姿勢が身に付いているため、議論も活発ですし、講演会の質疑応答もとても盛り上がります。

 また、そうした素養を持つ子供たちを多く受け入れるため、10年ほど前から「総合型入試」も行っています。エッセーや評論、新聞記事など幅広いジャンルから課題文を選び、思考力、論理力、読解力、表現力、発想力などさまざまな力を測ります。

バーチャルな対応とリアルな対話のバランスを検討

――これからの抱負を聞かせてください

特別授業「探究チャレンジ」で発表する生徒たち
特別授業「探究チャレンジ」で発表する生徒たち

 「探究チャレンジ」では、知識・思考・表現、いずれも期待を超えるレベルの達成が見られました。生徒も「自分が練り上げた考えを人に伝える」という探究活動の(だい)()味を味わったと思います。これをさらに発展させたいですね。今回は授業の枠内でテーマを考えましたが、今後は生徒の興味、関心に基づく自由テーマで行いたいです。

 生徒への新たな寄り添い方についても考えています。本校では、生徒と直に向き合う対話が人間形成に不可欠と考えていますが、コロナ禍で新たな対応を余儀なくされました。新校舎建設の際に設置したWi-Fi回線に加え、20年度の夏にICT学習の仕組みを整え、年明けの緊急事態宣言後もしばらくは、春に引き続いて第2弾のオンライン授業を行いました。登校再開後も、健康リスクの高い家族がいる生徒たちには在宅学習を許可し、ライブカメラ代わりのタブレットを用いて授業の中継を実施しました。こうしたバーチャルな対応とリアルな対話のバランスをどうとるのが最適か、検討を進めています。

 ガルブレイスの「不確実性の時代」より一層不確実な現代ですが、「光と塩」の精神に基づく本校の教育の根本が、揺らぐことはありません。これからも、生徒が力を磨いて新たなステージへ飛び立つ、そして時には戻ってきて新たな力を得る、そんな「港」のような存在でありたいと思っています。

 (文:上田大朗 写真提供:光塩女子学院中等科・高等科)

 光塩女子学院中等科・高等科について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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2041235 0 光塩女子学院中等科・高等科 2021/05/11 05:01:00 2021/05/11 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210510-OYT8I50070-T.jpg?type=thumbnail

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