【特集】カトリックの伝統から育った生徒たちのボランティア精神…白百合学園

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 「愛の心をもって社会に奉仕できる女性の育成」を教育目的に掲げる白百合学園中学高等学校(東京都千代田区)では、ボランティア委員会を始めとして多くの生徒がさまざまなボランティア活動に取り組んでいる。マスクの寄贈活動や被災地訪問など、活動の多くは生徒の自発的な提案に始まったものだという。3人の高校生にボランティア活動の動機や実際の活動などを聞いた。

土台となるのは修道会の精神

入試広報部長の瀧澤教諭(左)と田島教諭
入試広報部長の瀧澤教諭(左)と田島教諭

 「本校の設立母体は、17世紀フランスに誕生したシャルトル聖パウロ修道女会です。本校のボランティア活動は、困っている人に手を差し伸べるという修道会の精神を土台として、自然に生まれ、続けられてきたものです」と入試広報部長の瀧澤裕子教諭は話す。

 同校には、各クラス2人で組織されるボランティア委員会がある。1年を通してベルマークや古切手の収集、「口と足で描く芸術家協会」の美術作品の販売支援などを行っているが、毎年12月の「クリスマス奉仕活動」は、ボランティア委員会を中心に、全校生徒が参加する重要な活動だ。事前に生徒から食品や衣服、せっけんなどの物品や寄付金を募り、クリスマス奉仕活動の当日に社会福祉施設に送るほか、中学生が手作りしたカレンダーやお正月用の祝い箸袋を介護施設にプレゼントしたり、高校生の有志が児童養護施設や高齢者施設を訪れ、楽器演奏や聖歌を披露したりするなど、施設で過ごす人々との交流を楽しむ。

 現在、ボランティア委員会の委員長を務める井上怜さん(高3)は、昨年のクリスマス奉仕活動で初めて高齢者施設を訪問した。入居者たちと一緒に歌を歌ったことがとても印象に残っていると言う。「演奏に合わせてみなさん手拍子をしてくれました。何よりも、喜んでくださる笑顔を直接見られたことがうれしかったですね」

 井上さんがボランティア活動に関心を持ったきっかけは、アメリカの小学校に通っていた時に、東日本大震災をテレビで見たことだったという。「当時、現地でチャリティーバザーに母と参加したり、鶴を折って募った寄付金と一緒に日本赤十字社に送ったりしたことが、最初のボランティアでした」

 井上さんはボランティア活動をする中で、自分自身が変わったことを感じるという。「学校の外でも、困っている人を見たら躊躇(ちゅうちょ)せずに声をかけられるようになりました。そういう時に何をすればいいか、その方が何を求めているかを察することができるようになった気がします」

インドでの体験からマスクを送る活動へ

クリスマス奉仕活動で作成しているローズウィンドー(紙のステンドグラス)
クリスマス奉仕活動で作成しているローズウィンドー(紙のステンドグラス)

 自ら思いついたボランティア活動を実践する生徒もいる。高1の松澤杏奈さんは、昨年の夏休みに、個人的にインドへの「マザーハウスボランティアツアー」に母親と参加し、マザー・テレサゆかりのマザーハウスでボランティア活動をした。「インド滞在中、路上生活者に出会った時に、驚いてしまって直視できず、何もできなかったんです。マザー・テレサの『愛の反対は無関心である』という言葉を思い出し、自分の無力さに打ちのめされて。この体験がずっと胸を離れませんでした」

 今年に入り、インドのホストファミリーから、コロナ禍の中でマスクも足りず、仕事もなくなっているという厳しい状況を聞いた。「ちょうど家庭科の課題でマスクを作ったところだったので、マスクをたくさん作って送ろうと思い立ちました。今度こそ無関心にならず、少しでも思いを伝えられたらと考えました」

 ただ、混乱状態にあるインドにマスクを送っても必要とする人に届くかどうか分からない。そこで松澤さんは、日本にもある修道会「神の愛の宣教者会」や担任に相談し、まずは日本で困っている人々にマスクを送るための募金活動を開始した。

 7月に校内放送で全校生徒に呼びかけ、募金活動の背景や、自分の気持ちを伝えたところ、多くの生徒たちから寄付金が集まったという。

 「全校生徒の前で話すのはとても緊張しましたが、自分の言葉で真摯(しんし)に思いを伝えて共感を得られたこと、そして活動の輪を広げられたことは忘れられません。今回の募金活動を通して、みんなの思いや真心が伝わってきました」と松澤さんは話す。また今後、自分で作ったマスクをインドのホストファミリーに送り、荷物が届くかを確認してから、本格的に送るためのマスク作りを呼びかけていこうと計画している。

今年はオンラインで被災地の高校生と交流

昨年行った大槌高校の生徒とのワークショップ
昨年行った大槌高校の生徒とのワークショップ

 2011年の東日本大震災後、生徒たちの声から始まった被災地訪問プロジェクトがある。学園名にちなんで「ゆりごころ」と呼ばれるこのプロジェクトに、眞柄(まがら)美咲(みさき)さん(高2)は昨年初めて参加した。8月7~10日の3泊4日の日程で被災地を訪問し、一般家庭で民泊を体験して、震災当時の話を聞いた。また、復興状況を見学したほか、岩手県立大槌高校の生徒と交流し、復興に関するワークショップに参加した。

 この時の体験から眞柄さんは、「もっと自主的に復興に関わりたい。東京にいる自分たちにできることは何か」と考えたという。そこで、大槌町の復興に向けた活動の手助けになればと、昨年の11月に全校生徒1200人を対象にアンケート調査を行った。内容は「東日本大震災後、被災地に行ったことがありますか」「大槌町を知っていますか」「大槌町がどのような場所であれば行ってみたいと思いますか」などだ。

 今年はコロナ禍の影響で被災地訪問は中止されたが、代わりに大槌町の高校生とオンラインで交流するイベント企画を行った。7月29日、白百合学園から35人、大槌高校からは10人が参加し、昨年の大槌町訪問で印象に残ったことや、町の観光などについて、活発に意見やアイデアを出し合った。「アンケートを実施したことも、オンラインイベントを一から企画することも、初めての試みでした。毎日忙しかったけれど、自分たちが主体となって活動できたことがよかったと思います」

 眞柄さんは、「何かをしたいと思ったとき、その思いを受け入れてくれる環境が白百合にはあると思います。将来はいろいろな人と関わりながら、何かを企画するような仕事に就きたいです」と話した。

「かがやキッチン」で高齢者と交流する生徒たち
「かがやキッチン」で高齢者と交流する生徒たち

 ほかにも、同校のボランティア活動は多岐にわたる。いまだ福島から避難している人たちを支援する「きらきら星ネット」と連携してのクリスマス会、東京・千代田区と連携し、区内に暮らす高齢者とのレクリエーションや食事を通じて交流する「かがやキッチン」、カメルーンの修道会に衣服を送る活動などさまざまだ。

 宗教教育推進委員会主任の田島正城教諭は「多くは、生徒たちの『こういう活動をしたい』という自発的な声から始まっています」と強調する。「苦しんでいる人、寂しい思いをしている人に寄り添うのがカトリックの伝統です。この精神にのっとって、学校が企画した奉仕活動に参加するのが白百合のボランティアの始まりでしたが、今では生徒たちが自主的に行うものへと発展しています」

 ボランティア活動が深く根付いている背景には、保護者の理解も大きいと田島教諭は話す。「2011年に『ゆりごころ』を始めるとき、保護者会で活動について説明しましたが、反対する保護者はほとんどいませんでした。むしろ、『ぜひ娘にそういう体験をさせてほしい』という声が多かったですね」

 生徒たちにとってボランティア活動は、言われてやるものではなく、日常となっているという。「愛の心をもって社会に奉仕できる女性の育成」という同校の教育目的は、生徒たちの行動の中で日々、実現されている。

 (文・写真:石井りえ 一部写真提供:白百合学園中学高等学校)

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1615342 0 白百合学園中学高等学校 2020/11/11 07:00:00 2020/11/11 07:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201110-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

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