校長が語る「挑戦する気持ちを大切に」教育…桜蔭

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 全国の私立女子校の最難関である桜蔭中学校・高等学校(東京都文京区)の校長に、今年4月、齊藤由紀子前教頭が就任した。伝統ある校風や高い進学実績を支える仕組みなどについて語ってもらった。

「勤勉・温雅・聡明であれ」

桜蔭生の素顔を紹介する齊藤校長
桜蔭生の素顔を紹介する齊藤校長

 桜蔭は「勤勉・温雅・聡明であれ」「責任を重んじ、礼儀を厚くし、よき社会人であれ」を校訓に、関東大震災の翌年である1924年、東京・本郷の現在地で開学した。

 「基本的には、真面目で、なにごとにも熱心に取り組んでいる生徒が多いのは、私の在学時代と変わりません。一方で、前々任、そして前任の校長が『勤勉、聡明はともかく、温雅は少し欠けているかしら』と話しておりましたが、その点については、私もそうですが、まだまだ自信はありません」

 自身、同校のOGである齊藤校長は、一般に「おとなしい」と思われがちな桜蔭生の“素顔”について、笑顔でこう語った。

 開学の母体となったのは、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)の同窓会組織「桜蔭会」で、女子の教育を充実させ、学びと礼法を基本に、社会で役立つ人材の育成を目的とする。

開学当初からカリキュラムに組み込まれている「礼法」の授業
開学当初からカリキュラムに組み込まれている「礼法」の授業

 そうした歴史もあり、開学当初から今に至るまで「礼法」の授業がカリキュラムに組み込まれているのが同校の特色の一つだ。中1では週1回、中2、中3では5週に1回、ホームルームの時間を使って学ぶ。高2では「女性学」と「礼法」を合わせて「総合」の時間で学ぶ。

 「授業では、お辞儀の仕方とか、ふすまの開け閉め、座布団の運び方や勧め方など、基本となる所作を学びます。学んでいる当時は、足がしびれたとか、立ったとたんによろけたとか、動作が身についた実感はなかったかもしれませんが、実は卒業生にとって、『もう一度受けたい授業』の筆頭が『礼法』なのです。社会に出て、そのありがたみが分かるようですね」

予習こそ最高のアクティブラーニング

受験への対応も特別カリキュラムはなく、通常の授業で
受験への対応も特別カリキュラムはなく、通常の授業で

 そうした魅力的な校風以上に、保護者が最も着目するのが、抜群の進学実績だ。2017年春の東京大合格者は63人で、国公立大医学部合格者は53人。いずれも全国の女子校の中でトップだ。

 きっと完成度の高い受験カリキュラムがあるに違いないと思って伺うと、「受験は常に意識はしていますが、それを目的とした『東大コース』『医学部コース』のようなものをつくる気は毛頭ありません。受験に対応できる授業を、どの生徒にも受けてもらう、というのが本校の基本姿勢です」と齊藤校長はさらりと語った。

 さらにこう続ける。「基本、文系・理系のコース分けはしませんし、文系の生徒も高3まで数学をやります。生徒からすると、『やらされている』という感じかもしれませんが、主要5科目以外にも、音楽、美術、保健体育、技術家庭など、さまざまな教科を学ばせてもいます。『私は文系(もしくは理系)だから』というような、逃げの気持ちを持たせないようにしていますし、いろいろな発想があり、それを集約していく過程を大切にしています」。学力の土台となる基礎教養は欠かせないというのだ。

 また、今で言う、アクティブラーニングの伝統が根強いのも特徴の一つだ。伝統校では、そうした名前で呼ばれる以前から、実践している学校が多い。

 齊藤校長は、その点について、こう説明する。「前任の校長の佐々木は、そもそも『アクティブでないラーニングはない』と話していましたが、私も同感です。本校では、理科の実験の後のリポート、国語のグループワークなどを早くから実践してきました。それに家での予習もまさにアクティブラーニングです。例えば古文の学習は、予習で70%、授業を受けて95%、残りの5%は試験の前の復習と考えています。地道な予習以上のアクティブラーニングはないのではないでしょうか」

 2020年度から、新しい大学入試制度として「大学入学共通テスト」が導入され、より思考力、判断力、表現力が問われることになる。伝統として、古くからアクティブラーニングを実践してきただけに、齊藤校長は、「まったく不安がないと言えばおこがましいですが、そう不安は感じていません」と胸を張る。

伝統校ならではのキャリア教育の厚み

職業に関する卒業生からのメッセージをまとめた冊子
職業に関する卒業生からのメッセージをまとめた冊子

 キャリア教育に強いのも伝統校の特徴の一つだ。官公庁、法曹界、マスコミ、科学技術の諸分野、教育界などさまざまな世界に人材を輩出していて、キャリア教育のモデルには事欠かないからだ。

 そうしたOGたちによる講演会に加え、自ら仕事と子育てを両立させてきた齊藤校長を始めとする教員たちの存在も生徒、OGのキャリアを後押ししている。

 「先だってもOG3人が、ベビーカーに子どもを乗せて学校を訪ねてきて、そのうちの一人が『そういえば先生方は、お子さんをどうされていたのですか?』と聞くのです。私の場合は、(しゅうとめ)の手助けや、周りに同じような経験を持つ方が多くいて、理解と協力を得やすかったことで乗り切ることができました。そういった話をすると、『当時は先生たちの苦労を考えたことはなかった。その時、聞いておけばよかった』と言っていました。ただ、私立なので、公立のように教員に異動はありません。卒業後でもそういった相談に乗ることはできますし、実際、うちのOGたちはよく学校を訪ねてきますね」

 社会に出て働く女性も、妊娠、出産、育児の問題は避けては通れない。齊藤校長は、「(桜蔭OGの場合)真面目なので、常に100%を自分に課すことが多く、少しでもうまくいかないと、あっさりと撤退してしまうのです。潔いといえばそうかもしれません、残念なことだとも思います」と懸念した上で、「使える制度は100%使い、周りの方の支援を受けながら、しなやかに、したたかに働き続けてほしい」と願いを込めた。

受験生へ「周りが見える人になってほしい」

 着任から半年、「学校の動きがよく見えるようになった」という齊藤校長から、最後に未来の受験生に向けてエールを送ってもらった。

 「『よき社会人』であるためには、自分の頭で物事を考える生徒になってほしいですし、そういう女性を卒業生として社会に送り出したいと思っています。何かに挑戦して失敗することは当然ありますが、だからといって手取り足取りするつもりはありません。失敗して困ったら、先生や、上級生、友達に聞くなどして、自分でなんとか道を切り開いていける生徒であってもらいたいですね。小学校でのさまざまな経験を通して、ベストでなくてもベターな方法を、置かれた状況の中から選べる、そういう力を身につけてください。また、人は一人では生きていけません。ほかの人に助けてもらえるような人になってください。そのためには、まず他の人に手を差し伸べることです。未来の桜蔭生には、そういう周りが見える人であってほしいですね」

 (文:二居隆司 写真:中学受験サポート/一部写真:桜蔭中学校・高等学校提供)

208279 0 桜蔭中学校・高等学校 2017/11/01 05:20:00 2017/11/01 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20171025-OYT8I50101-T.jpg?type=thumbnail

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