「食」の新しい世界を広げる「マリアランチ」…緑ヶ丘女子

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 緑ヶ丘女子中学校・高等学校(神奈川県横須賀市)は、中学生を対象に「マリアランチ」と名付けた学食を提供している。一流のシェフが献立と調理を手掛けていて、栄養バランスに優れているだけでなく、独自ルートで仕入れる新しい食材・メニューを通して、生徒たちの「食」の世界を広げるのに役立っているという。マリアランチの目的や、提供していく上での工夫について縄田利寿教頭と脇田裕之シェフに聞いた。

栄養バランスがよく温かい食事を提供

「マリアランチ」で学年ごとに仲良くテーブルを囲む生徒たち
「マリアランチ」で学年ごとに仲良くテーブルを囲む生徒たち

 緑ヶ丘女子中学校は2015年から校内にランチルームを設けて学食を提供している。神奈川県の公立中学校は給食実施率の低さが課題となっているが、同校では「成長期の子供たちに、栄養のバランスがよく、温かい食事を提供したい」という大田順子理事長の考えから、管理栄養士が作成した献立を基に、一流のシェフが腕を振るっている。

 メニューは旬の素材を取り入れているだけでなく、地元横須賀名物の海軍カレーや、新年のランチ初めのお雑煮や赤飯、さらに冬場の入試説明会に合わせた体の温まるスープなど、地域性、季節、イベントなどを踏まえてバラエティー豊かであり、「食育」の機会としても大いに役立っている。

 マリアランチは1週間前に注文をする方式で1食500円。全員一律の給食ではなく、弁当を持参することもできる。縄田利寿教頭は、「少人数向けのため、一般的な給食では困難な自由度の高いメニューが提供できます」と話す。

 取材に訪れた9月12日、正午を過ぎたころにランチルームのドアを開けると、すでに生徒たちが学年ごとに仲良くテーブルを囲んでいた。

あんかけ焼きそばをメインに、ちくわとキュウリのあえ物などを添えたメニュー
あんかけ焼きそばをメインに、ちくわとキュウリのあえ物などを添えたメニュー

 この日のメニューはメインのあんかけ焼きそばのほか、ちくわとキュウリのあえ物やみそ汁、プリンなどが並んでいた。シェフの脇田裕之さんは、「焼きそばのあんは鶏の胸肉から取った出し汁を野菜と合わせて自然な甘さ、香りを出しました。イタリアンを意識してフレッシュトマトもあしらっています」と説明する。

 生徒たちにマリアランチの感想を聞くと「ほぼ毎日注文していますが、1学期からこれまで、一度も同じメニューがないので、飽きることがありません」「メジャーなメニューだけでなく、あまり聞いたことがない食材やメニューがあって楽しみです」「いろいろな食材や調理法を知るきっかけにもなっています」といった声が上がった。

 教員の1人は「私も毎日食べています。生徒と『この食材は何だろう』と話すことも食に関心を持つきっかけの一つですね。季節の魚や野菜が使われているので、旬に対する理解が深まると思います」と話した。

旬を意識し、独自のルートで多彩な食材を仕入れる

「旬を意識し、独自のルートで多彩な食材を仕入れる」と話す脇田シェフ
「旬を意識し、独自のルートで多彩な食材を仕入れる」と話す脇田シェフ

 マリアランチのメニューを作って調理する脇田シェフは、東京・銀座の老舗レストランで経験を積み、神奈川県藤沢市の辻堂で店を経営し、6年ほど前からフリーランスの料理人に転身した経歴を持つ。現在は、飲食店のプロデュースやメニュー開発を担当するほか、業務委託やケータリングの依頼に対応するなど幅広く活躍中だ。

 「メニュー構成は家庭の手料理をイメージしていますが、ときにはイベリコ豚のように高価な食材を使うこともあります。給食ではまず使えない食材であっても、ほかの仕事と合わせて大量に仕入れることで、コスト割れせずに提供することができます」と脇田シェフは話す。「食材は市場や独自のルートで旬のものを仕入れ、野菜は彩りも考えて選んでいます。素材の味を大事に調理し、子供たちに“給食”以上の昼食を提供したい」

 生徒のコメントで印象的だったのは「マリアランチを食べるようになって、好き嫌いが減りました」という言葉だ。

 それまで嫌いだったものが食べられるようになるのは、マリアランチでは、調理法や味付け、見た目を変えて提供しているからだという。脇田シェフは「生徒のアレルギー情報を把握した上で、問題のない食材は、いろいろと食べやすいように工夫しています。一口食べることができれば、苦手意識が消えるので普通に食べられるようになります」と語る。

 脇田シェフによると、現代は、自然そのものの味を生かした料理に出会うチャンスが少ないため、舌が本来の味覚を取り戻すには時間がかかるという。1年生の1学期は味が薄いと感じる生徒も多いが、1年たつ頃には誰もが自然の味わいを感じられるようになるそうだ。

新しい出会いが、食の世界を広げていく

食育を考える場所として役立っているランチルーム
食育を考える場所として役立っているランチルーム

 脇田シェフがマリアランチを提供する上で最も大切にしていることは「新しいもの、知らなかったこととの出会いを楽しんでほしい」ということだ。「私が仕入れてくる食材は個性が強いものが多いのですが、『この食材は何!』という驚きとともに、その味わい、食感を覚えてもらいたい」

 取材当日は、キッチンの奥にまだ青い「島バナナ」が置かれていた。脇田シェフが、知り合いの沖縄の農家から、「台風で落果してしまう前に購入しないか」と声をかけられて仕入れたそうだ。「間もなく食べ頃を迎えるので、来週あたりデザートに使おうと思っています」

 縄田教頭も「家庭ではあまり食卓に上らない食材やメニューを通して食への関心を高めたい。人は自分の知る範囲でしか、食材を選べません。マリアランチでの新しい材料、新しいメニューとの出会いをきっかけに、生徒たちの食の世界が広がることを願っています」と話した。

 ランチルームでは、脇田シェフが調理している姿を間近に見ることができる。食事を通じて人の存在やその工夫が感じられることもまた、大事な食育の一つだろう。

 (文・写真:山口俊成 一部写真提供:緑ヶ丘女子中学校・高等学校)

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924579 0 緑ヶ丘女子中学校・高等学校 2019/12/03 05:21:00 2019/12/03 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191129-OYT8I50004-T.jpg?type=thumbnail

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