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【特集】「個として自立する女性」を育てる探究学習…湘南白百合

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 湘南白百合学園中学・高等学校(神奈川県藤沢市)は、「総合的な学習の時間」を活用し、中学3年間を通して体系的な探究学習を行っている。特に中学3年生の授業は「環境」をテーマとして生徒各自が自分の課題を見つけ、研究から発表、英語による要約作成まで行う集大成的な学びとなっており、「一生役に立つ学びの姿勢を身に付ける」のに役立っているという。この授業を取材し、大学での学びにも生かしているという卒業生の話を聞いた。

「一生役に立つ学びの姿勢を身に付ける」をテーマに

「総合的な学習の時間」を活用した探究学習について語る水尾先生
「総合的な学習の時間」を活用した探究学習について語る水尾先生

 同校は、週2回の「総合的な学習の時間」を活用し、中学3年間を通して系統立った探究学習を実践している。「中1では水族館見学などを通して互いの意見を交換する方法を知り、中2では博物館見学に行って調査の手法を学びます。中3は『環境』学習によって、自分で問題を見つけ、それを解決するためのプロセスを習得します」と、教頭・広報部長で社会科の水尾純子先生は説明する。

 この総合学習で3年間共通するテーマは「一生役に立つ学びの姿勢を身に付ける」ことだという。自ら問いを立てて解決していこうとする姿勢を、中高での学習にとどまらず、大学での研究、社会に出てからの活動へと、生かしていけるようにするのが目的だ。

 特に中3の「環境」授業は、「理科×情報×英語」の三つの分野にまたがり、3年間の総合学習の集大成と言えるものになっている。この授業では、生徒は自分で研究テーマを見つけて仮説を立て、実験を行うなどして実証する。さらに、その成果をプレゼンテーションしたうえ英語の要約を作成する。この間、情報収集や発表資料の作成など、すべての過程で情報についての学習が盛り込まれている。

 中3生は、1学期の内にリポートの書き方などを学びながら各自研究テーマを設定し、夏休み中に、立てた仮説を実証するための実験を行う。9~10月に研究リポートと発表原稿を作成し、11月から3学期にかけて、クラス内での発表と各クラスの代表1人による学年発表会が実施される。さらに3学期の最後に、研究リポートを英語で要約して提出する。

「教える」のではなく「導く」ことに主眼を置く

先生は生徒を「導く」アドバイスを行う
先生は生徒を「導く」アドバイスを行う

 6月3日、同校を訪れて中3梅組の「環境」授業を見てきた。この授業は、同校に昨年新しくオープンした「メディアネットラボ」で行われる。図書室とグループワークのスペース、自習スペースが一体となった施設だ。この日は43人の生徒たちが6、7人のグループに分かれてテーブルを囲み、各自の研究テーマを設定するために互いの意見を出し合っていた。

 昨年から導入された1人1台の「Chromebook」を使用し、生徒たちはインターネットを検索しながら、ワークシートに「研究テーマ」「仮説」「仮説の根拠」「実験計画」などを書き込んでいく。「プラスチックの廃棄について調べたいんだけれど、何から始めればいいと思う?」「スーパーやカフェに、廃棄方法について聞いてみるといいかもしれない」など、生徒たちは思い思いにアイデアを出し合っている。

 授業を担当しているのは、いずれも理科教師の高島 壮大(そうだい) 先生、石原寛子先生、 斜木(ななめき)宏海(ひろみ) 先生の3人。生徒は自分の考えをまとめると、1人ずつ先生に伝えに行く。「風力発電をもっと普及させるにはどうすればいいか調べたいんです」という生徒に、高島先生は「なぜあまり普及していないのか、まず自分で仮説を立ててみてください」とアドバイスした。「普及しない原因をいくつか挙げて、その中から自分が調べてみたいこと、実証可能なことを絞っていくといいですよ」

 水尾先生によると、教師は実験のやり方を「教える」のではなく、自分で方法論を見つけるよう「導く」ことに主眼を置いているという。

 「総合的な学習の時間」が教科となった2002年以前から、同校では「調べて発表する」という活動を始めており、積み上げた経験から授業も発展してきている。「各自が『環境』学習の流れが分かるファイルを作る、自分の考えを可視化しやすいようワークシートは1枚に収めるといった工夫が生まれています。また、さまざまな実験器具を貸し出せるようにしていて、生徒の研究テーマに合わせて新しい器具を購入することもあります」と、水尾先生は話す。

在校中に学んだ研究姿勢が大学でも生きる

「学んだ研究姿勢が役に立っています」と話す卒業生の池内さん
「学んだ研究姿勢が役に立っています」と話す卒業生の池内さん

 同校で「自ら問いを立てて問題を解決する」学びを積み重ねてきたという卒業生の池内萌さんに話を聞いた。現在、東京大学工学部物理工学科3年生の池内さんは、幼稚園から高校まで湘南白百合に通っていた。

 池内さんが中3の総合学習「環境」で選んだテーマは、「地盤の液状化現象について」だった。「東日本大震災の時に、東京ディズニーランドなどがある浦安市で広範囲に液状化現象が起こったことを思い出し、どのような条件で液状化が起こりやすいのか調べたいと思いました」

 池内さんは園芸用の砂など粒子の大きさが異なる数種類の砂を用意してそれぞれ水槽に入れ、衝撃を与えて地震の揺れを再現する実験を行った。衝撃を加えるためのロボットは、自らプログラミングして制作したという。その結果、粒子が大きいほど液状化しやすいことが分かり、発生しやすい揺れのタイプについても特定することができたそうだ。

 「担当の先生から、 剽窃(ひょうせつ) や改ざんは許されないという『研究理念』について聞いたことが強く心に残りました。実験を繰り返すうち『あまり細かいことまで気にしなくてもいいのでは』と思うこともあったのですが、先生の言葉を思い出し、正確なデータを取ることにこだわりました。その時に学んだ研究姿勢は、今も大学で実験を行ううえで役に立っています」

 池内さんは湘南白百合で英語ディベートの活動をしていて、高2の時に、知識・教養を英語のディベートやライティングなどで競う「ワールド・スカラーズ・カップ」に挑戦。アメリカのエール大学で開かれた決勝大会に進んで、個人総合部門で金メダルを受賞した経験を持つ。東京大学には推薦入学し、大学院に進んで将来は研究者になることを考えているそうだ。

 「湘南白百合は、自分がやりたいことにどんどん挑戦することができ、それを先生が後押ししてくれる学校です。目標を実現させたい時に実際にどのようなステップを踏めばよいかも、中高の活動で学びました。現在は学外の国際交流団体の活動にも参加し、アジアの国々への支援を行っています」

 池内さんの活動について聞いていた水尾先生はこう話した。「本校には、フィリピンの子供たちに支援物資を送るボランティアグループがあります。学校が勧めたのではなく、生徒たちが自発的に始めた有志の団体です。自ら問いを立てて行動する中で、人の役に立ちたい、社会貢献したい、という気持ちが強く育ち、自分の考えを持って個として自立する。キリスト教に基づく学校として『愛ある人』として育つという本校の理念が、さまざまな形で実現しています」

 同校は現在、東京学芸大学次世代教育研究推進機構のプロジェクトに参加し、同大教授陣とともに、高校の探究学習の取り組みを構築している。「これからは『総合的な学習の時間』にとどまらず、あらゆる教科に探究的な学びを取り入れていきたい」と、水尾先生は抱負を語った。

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート)

 湘南白百合学園中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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