英語で他教科を学び、英語で思考する力を育てる…横浜女学院

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 横浜女学院中学校高等学校(横浜市)では、英語教育に「CLIL」(内容言語統合型学習、Content and Language Integrated Learning=CLIL)を今年から本格的に導入、生徒の英語力だけでなく、思考力、積極的に取り組む力が向上しているという。CLILを導入した英語科主任・白井龍馬教諭らに話を聞き、CLILの授業の様子をリポートする。

英語で世界の問題を学ぶことで視野が広がる

ネイティブの教師が授業をリードし、生徒に英語で考え、話すよう指導する
ネイティブの教師が授業をリードし、生徒に英語で考え、話すよう指導する

 「What do you think about biggest impact of globalization ?(グローバル化がもたらした最も大きな影響は何だと思いますか)」。アメリカ人のネイティブ教師・ハンナ春名先生が問うと、生徒たちから次々に意見が上がる。「migration(移住)」「trade(貿易)」「culture(文化)」「communication(コミュニケーション)」「cross-cultural exchange(異文化交流)」……。

 この日の高2のCLILの授業のテーマは、「グローバル化」。プロジェクターには米国のニュース雑誌「TIME」のグローバル化についての記事が映し出され、生徒たちは英語で意見を交換している。

 まずは隣の人と意見を述べ合い、次に、別の人とペアを組んで意見を交換する。ある生徒が「私は貿易だと思う。例えば、ジーンズは布、ジッパー、ボタンなどさまざまなパーツが別々の国で作られ、裁縫やラベル付けもそれぞれ別々の国で行われている。企業がコストカットのために海外に工場を移転しているけれども、現地の人は安い賃金で働かされ、それはフェアではないよね」と英語で話すと、それに応じる生徒も「なるほど。私がグローバル化で一番変化したと思うのはコミュニケーション。海外にいる人ともネットを通して瞬時にコミュニケーションできるようになった。人々の考え方を大きく変えたと思う」と英語で返す。ときおりハンナ先生や、エクアドルからの留学生も交えて、英語で議論を深めていく。

 授業に参加している生徒は、「中2の時から、このCLILの授業を受けていますが、パワーポイントを使って英語でスピーチしたり、エッセイを書いたりしてきているので、スピーチもエッセーを書くのもスピードが上がりました。英検も準1級を取れました」「英語が得意になるだけでなく、扱うテーマが国際的で興味深いので、視野が広がりました。ニュースを見るのが楽しくなりました」と口々に、その効果のほどを話す。

「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能に「考える」をプラス

CLILを導入した狙いを語る白井龍馬教諭
CLILを導入した狙いを語る白井龍馬教諭

 CLILとは、1994年にヨーロッパで提唱された非母国語で科目を学ぶ教育法で、科目内容、語学力、思考力、協同学習の四つの要素をバランスよく育成するというもの。複言語主義のEUの言語政策の一環として始まり、現在ヨーロッパのほとんどの国の教育に組み込まれているという。日本では上智大学の池田真・教授が中心になり、2010年から同大学で導入後、全国の高校や大学でも採用が相次ぎ、横浜女学院でも3年前から試験的に実施していた。

 池田教授のサポートを受け、CLILを実施してきた英語科主任の白井龍馬教諭は、こう話す。

 「これまでは主に帰国生や成績上位層を対象に試験的に導入してきましたが、3年がたって、生徒たちも英語で深く思考することができるようになってきました。今年度からは、中2から高3まで全クラスで導入しています」

 英語で他教科を学ぶといえば、イマージョン教育が有名だ。それとの違いについて、白井教諭はこう説明する。

 「イマージョン教育とは違って、科目内容だけではなく、英語で深い思考ができること、英語で深い議論ができることを大切にしています。英語4技能(読む・聞く・話す・書く)に『考える』をプラスした5技能ともいわれています」

ESDとCLILの相乗効果

考えを英語でまとめ、ディスカッションする協同学習を大事にしている
考えを英語でまとめ、ディスカッションする協同学習を大事にしている

 導入初期には、生徒に戸惑いもあったという。「しかし、CLILが単なる英語の習得ではなく、内容ベースなのが良かった。本校ではESD(Education for Sustainable Development=「持続可能な開発のための教育」…国連が進める国際問題を解決するリーダーを育てるプログラム)を導入していて、中1から日本語で学んでいます。CLILの学習テーマは、移民問題や人権問題、エネルギー問題、動物実験の問題など、ESDと重なることが多いので、それなら知っているから英語で発言してみよう、と一歩踏み出せるんです」と白井教諭。

 ESDでは、中3のときに各自、国際問題について調べ学習をし、プレゼンテーションする授業を行っている。そのため、「CLILの授業でも、興味・関心を持ちやすくなるのです。授業への食いつきがすごくいいですね。また、CLILをやるとESDも充実していきます。双方が、スパイラル効果でよくなっていく」というのだ。

 また、教科横断型の授業のため、理科や社会の教諭ともオープンに聞き合って授業を進めている。高2は教育情報サービス企業のセンゲージラーニングが出版する「Global Issue」の教科書をメーンに使用し、高3では大学入試問題を使ってCLILの授業を展開している。

 CLILとESDの両輪が横浜女学院の教育の柱となっており、「こうした、よりアクティブな授業をすることで、2020年の大学入試改革へも対応できると考えています」と白井教諭は力を込める。

意識が変わり「ヨコジョ生」っぽく成長

「ニュージーランド海外セミナーを経てヨコジョ生っぽくなる」と語る佐々木準教諭
「ニュージーランド海外セミナーを経てヨコジョ生っぽくなる」と語る佐々木準教諭

 CLILとESDの学びを発揮し、さらに深める場になっているのが、中3の全員が参加するニュージーランド海外セミナーだ。ホームステイをしながら現地の学校に通い、英語での発表や協同学習に取り組む。国際教養クラスで30日間、アカデミークラスで12日間の日程を組んでいる。

 「英語の学習意欲が飛躍的に伸びます。ホームステイでは英語しか通じませんから、トラブルが起こったりします。すると、戻ってきたときには、あきらめない力、チャレンジしようという姿勢が身に付いてくるのです。あんなにもじもじしていたのに、見違えるくらいたくましく成長してくるのです」と広報主任の佐々木準教諭は話す。

 また、これまでの学びに自信を持てるようにもなるという。「CLILで学んできたことを実際に海外でやってみて、意外に自分もやれるんだということに気付くのです。そうすると、顔つきも変わってきます。一生懸命やらないことが恥ずかしい、という意識に変わってくるのです。『あきらめないこと』がヨコジョ生っぽくなってくるのですね」と佐々木教諭は話す。

CLILの学習内容に共感して、自ら積極的に学び始める

 CLILや海外セミナー、また、全員がノートパソコンのChromebookを使用するICTを活用した教育で、生徒の英語力は飛躍的に伸びているという。

 「英語経験ゼロで入学した子たちが、CLILやICTを使ってコンテンツベースで英語を学んでいくと、中2で3分の2の生徒が実用英語技能検定準2級を取得するようになりました。女子は共感すると強いのですね。内容を伝えて、共感してくれると、授業もだんだん前のめりになってくる。そうすると、生徒は自分からどんどん積極的に学び始めるのです」と白井教諭。

 CLILを導入して、英語で深く思考する力だけでなく、積極性も育んでいる生徒たち。横浜女学院から世界へ羽ばたいていく、生徒たちの将来が楽しみだ。

 (文と写真:小山美香)

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9406 0 横浜女学院中学校高等学校 2018/03/01 05:20:00 2018/03/01 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180227-OYT8I50014-1.jpg?type=thumbnail

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