CLILと多言語教育で築く「共生教育」…横浜女学院

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 横浜女学院中学校高等学校(横浜市)は、さまざまな国籍や文化的背景を持つ人たちと理解し合い、協働作業できる人材を育成する「共生教育」に力を入れている。その推進のため、昨年度は「国際教養クラス」を新設し、英語以外に3か国語を学ぶ多言語教育と、CLIL(内容言語統合型学習)を充実させている。それぞれの授業風景や生徒の反応を紹介する。

世界の文化を体験して、世界の人々を理解する礎に

国際教養クラスについて説明する宮下教諭
国際教養クラスについて説明する宮下教諭

 「グローバル化が進んだ未来では、さまざまな国籍や文化的背景を持つ人たちと協働作業をすることが求められます。それが潤滑にできる人材を育成する『共生教育』を充実させるため、2018年度から国際教養クラスとアカデミークラスを設置しています。国際教養クラスでは、全員が英語のほか、ドイツ語、中国語、スペイン語の3か国語を学びます」と、広報主任の宮下直樹教諭が説明する。

 国際教養クラスでは、中1で3か国それぞれの文化を学び、中2で各言語の基礎を学ぶ。中3ではその中から一つ選択して、より学びを深めるという。「特に中1では文化の体験を重視しています。教室で学ぶだけでなく、横浜にある中国人学校、ドイツ人学校と交流して、その国の文化に触れ、同世代とコミュニケーションを取ります。こうした体験が、さまざまな文化的背景を持つ人たちを理解する礎になるのです」と、宮下教諭は話す。

ドイツの移民問題を知り、多文化共生を考える

 取材に訪れた昨年11月8日、中1の国際教養クラスで行われていたドイツ語の授業を見た。「フランクフルトには、本格的な美味(おい)しいお寿司(すし)屋さんがあるんですよ。いらっしゃいませ、といつも私を温かく迎えてくれます」。そう話していたのはドイツ・フランクフルト出身で、東京横浜独逸学園(横浜市)の司書教諭を務める男性、コジチ・ヨシコさんだ。この授業の講師として、ヨシコさんはドイツ語でのあいさつや自己紹介の仕方を教えた後、文化についてのレクチャーに移った。

コジチ・ヨシコさんによるドイツ語の授業
コジチ・ヨシコさんによるドイツ語の授業

 「ドイツは多文化社会で、全人口の20%は移民のルーツを持つ人です。私もおじいさんがクロアチア人の外国人労働者でした。日本も2025年までに50万人の外国人労働者受け入れを見込んでいますから、移民大国ドイツの歴史を学んで、移民受け入れに何が必要か考えていきましょう」

 移民問題の深刻なイメージが浮かんだのか、楽しそうに授業を聞いていた生徒の表情はすっかり硬くなったが、ヨシコさんはさらに話を続けた。「最近は人種問題を面白く捉えようという機運が出てきました。人気ドラマ『トルコ語入門』では、トルコ系俳優が演じる主人公にドイツ人の彼女ができて巻き起こる文化摩擦を、面白く描いています。今のドイツは、外国人もドイツ文化を豊かにする存在と認めるようになってきました。多文化共生は、平和な世界作りに貢献すると思います」

 授業を受けた佐々木來那(らいな)さんは、「ドイツの人が日本に興味を持ってくれるのが、とてもうれしいと感じました。外国の文化や言語に触れて、私も外国に興味が出てきました。もっと勉強していきたいです」と話す。

 (けん)如星(るしん)さんも、「ドイツ語の発音は難しいですが、あいさつと自己紹介はできるようになったので、東京オリンピックで来日するドイツの人と会話をしてみたいです。ドイツの移民問題も教えてもらい、より深く多文化共生を考えるきっかけになりました」と話した。

自然エネルギーを巡り、英語で生き生き議論

世界各国の人たちとエネルギー問題を話し合う生徒たち
世界各国の人たちとエネルギー問題を話し合う生徒たち

 同校の「共生教育」を土台にし、学習指導へと結びつけたのが、英語で他教科を学ぶCLILだ。CLILを日本に紹介した、池田真・上智大学教授の監修を受け、導入してから3年目となる。

 「中3からCLILを学んだ生徒が高2になり、大きな成果が出てきました。英語力が付いただけでなく、学ぶ内容も深くなってきました」と、英語科主任の白井龍馬教諭は話す。

 導入2年目には、東京大とソウル大の大学生たちと教育について英語で議論を行うほか、ドイツの大学との共同プログラムでドイツ人研究者から英語で生物を学び、英語でプレゼンテーションするまでに成長してきた。

 3年目となった昨年は、自然エネルギー由来の電気を供給している「自然電力株式会社」(福岡市)の協力を得て、アメリカ、中国、台湾、ケニア、ボツワナ、カナダ出身のインターン生たちと、エネルギー問題を討論する授業を行った。輪になって指相撲をするアクティビティーの後、各テーブルに分かれて英語でディスカッションを行ったという。その後、2人1組で電力についての発表を行い、質疑応答を通して、活発な議論を行った。

 この授業に参加した土居七海さん(高2)は、「同じアフリカの国でも、ケニアとボツワナではエネルギー源の内訳が大きく違っていることや、発展途上国でも自立的に電力を生み出していて、環境意識が高いことに驚きました」と話す。

 石丸梓乃さん(高2)も、「これまでもCLILでエネルギー問題を学んできましたが、『海流発電』など初めて知った発電方法や、各国が思いもよらない対策を取っているのを知り、知らないことがたくさんあると実感しました」と話す。

 この授業の様子を振り返って白井教諭は「生徒は事前にエネルギー問題について授業で学習をしているため、話したいこと、聞きたいことが多くあり、生き生きとした議論が続きました。各国のインターン生も、本校の生徒も、世界をよりよい環境にしようという温かい雰囲気の中で議論できました」と語る。

 2019年度は、国際問題だけでなく、聖書の授業もCLILで取り組んでいるという。来年度はさらに社会と理科もCLILで学ぶ予定だ。

オリジナルテキストでCLILに対応する英語力

「CLILで大きな成果が出てきました」と話す白井教諭
「CLILで大きな成果が出てきました」と話す白井教諭

 同校は、独自のオリジナルテキストを使用して、徹底的に生徒の英語力を高めている。来年度はさらに、オリジナルの「語源で覚える英単語集」も加える予定で、現在テキストを作成している。

 白井教諭は「CLILでは、語彙(ごい)力の指導が重要になってきます」と話す。生物多様性や環境問題、多文化共生などを論じられるかどうかは、専門的な単語を知っているかどうかで左右されるからです。新テキストで語源を知ることで、知らない単語も容易に理解できるようになるでしょう」

 CLILによる学び自体も、英語力を鍛える。石丸さんは「CLILの授業で扱う資料や映像もすべて英語なので、確実に語彙力が伸びました。大学入試問題でもCLILで扱う世界の諸問題についての文章が多いので、強みだと感じています」と話す。

 土居さんも「社会性のあるテーマが問われる英検準1級の面接試験でも、CLILでスピーキング力や語彙力が付いているので、自信を持って臨むことができました」と話す。

 CLILによって国際問題や環境問題への視野を広げてきた生徒たちは、おのずと世界の人々への理解を深め、世界をよりよくすることへの関心が高まる。それが同校の教育理念である「共生教育」につながる。

 土居さんは「私は人権問題や21世紀型教育を経済の視点から研究したいと考えるようになりました。CLILで英語の授業にも自信が付いたので、海外大学と国内大学の併願を考えています」と話す。

 石丸さんも「CLILで環境問題を学んでから、海外の英語ニュースを見るようになりました。これらを通して、今、自分に何ができるのか、どのような対策が必要か、考えるようになりました。考えだけで終わらせず、多くの人と共有して行動に移したいと思っています」と熱っぽく話した。

 この勇気があれば、異なる文化の人々とも力を合わせて未来を切り開けることだろう。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:横浜女学院中学校高等学校)

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1023710 0 横浜女学院中学校高等学校 2020/01/29 05:21:00 2020/01/29 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200128-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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