オンラインでも実現、英語を使って美術を学ぶ…横浜女学院

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 横浜女学院中学校高等学校(横浜市)は新型コロナウイルスによる休校中、オンラインで美術のCLIL(内容言語統合型学習)を実施した。中3生たちは、オンラインで絵画を鑑賞したうえで、英語で感想を述べ、絵画をテーマとした物語を書くなどした。このCLILを指導した美術科と英語科の教諭に、授業の実際や生徒の様子などについて聞いた。

感じたことを言語化する美術鑑賞はCLIL向き

「絵画鑑賞では言葉にすることが大事」と話す深川教諭
「絵画鑑賞では言葉にすることが大事」と話す深川教諭

 同校の国際教養クラスは、中3で外国語を週に10時限(1時限は45分)学び、そのうちの3時限をCLILに充てている。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため休校となり、CLILもオンラインで実施することが必要になったという。

 「そこで、美術をオンラインCLILで学ぶのはどうかと、美術科の深川貴子教諭に相談したのです。ビジネスシーンにおける芸術的感覚の需要の高まりを受け、かねがね英語で芸術を指導したいと考えていました」と英語科の白井龍馬教諭は話す。

 深川教諭も、「授業数が少ない美術は、実技に時間を取られがちですが、生徒とのやり取りの中で芸術に関する教養教育の必要性を常々感じており、鑑賞にも力を入れなければと考えていたところでした。美術鑑賞は、美術的視点に立って感じたことを言語化する言語活動です。英語で学ぶのにぴったりでした」と話す。

 さらに、オンライン授業ならではの利点もあった。「教室で同時に鑑賞させようとすると他人の視線や鑑賞の進捗(しんちょく)が気になってしまい、良い意味で自分の世界に入り込むことが難しくなっていました。オンラインなら生徒それぞれのパソコン画面で簡単に画面共有できるので画質も問題ありません」

 2人の教諭は授業プランを練り、休校中だった5月中、中3の国際教養クラスで約2週間、白井教諭の指導でオンライン授業での美術のCLILが実施された。

言葉にすることで自分の中に新しい価値観が生まれる

「想像以上に、美術CLILは大成功でした」と話す白井教諭
「想像以上に、美術CLILは大成功でした」と話す白井教諭

 授業はオンライン会議システム「Microsoft Teams」を使って行われた。美術鑑賞の題材は、マルク・シャガールが描いた「エッフェル塔の新郎新婦」と「私と村」の2枚の絵だ。

 まずは白井教諭と深川教諭が鑑賞の手本を見せる。「エッフェル塔の新郎新婦」の画像を生徒たちと共有したうえで、主人公は誰か、時間や場所、主人公の気持ち、色遣い、描かれたものからどんな印象を受けるかなどについて、それぞれの鑑賞を語って見せた。次いで、それを英語で表現できるように「This 〇〇 shows~(この○○が示すのは~)」「To me,〇〇 looks~(私には〇〇は~に見える)」などの役に立つフレーズを提示した。これらのフレーズが正しく使えているか、英語力が伸長しているかどうかが評価される。

 次は生徒たちが鑑賞する番だ。「私と村」の絵を生徒たちが鑑賞する。教諭らの手本を見ているので、生徒たちは「これなら自分たちもできる」とばかり、次々と英語で表現し始めたという。チャット機能を使って生徒同士、英語でやりとりをしたあと、英文にまとめて掲示板に投稿し、互いにコメントを書き合ったという。

自宅からオンライン授業をする白井教諭
自宅からオンライン授業をする白井教諭

 絵画鑑賞のCLILについて深川教諭は、「まずは絵をよく見ることが大事です。じっくり見て、描かれている人物の表情や光の加減などを読み取る力を養います。次に読み取ったうえで感じたことを発表します。言葉にすることが大事です。言葉にすることで、初めて自分のものになるのです。自分の考えを整理したり、友達の考えを聞いて自分になかった視点や考えに気付いたりする中で、自分の中に新しい価値観が作り出されていきます」と解説する。

 生徒たちの鑑賞は、「牛は女性の象徴で、男女の愛が描かれている」「故郷の今と昔を思い、主人公は寂しさを感じている」など、さまざまだったという。授業後の感想も、「何を言っても間違いにならないから、やりやすかった」「他人の意見や考えを知ることで、視野が広くなり、自分が豊かになった」「普段見ている日常の風景も、美術なんだと思った」など積極的な内容が多かったという。

 深川教諭は「作者がどんな思いで描いたとしても、世の中に出た作品を、見た人がどう感じるかは自由です」と話す。白井教諭も「美術ならではのオープンエンドな質問です。正解を出さなければいけないのではなく、生徒が思ったことが正しいのです。それが、生徒たちにとっては、表現しやすかったと思います」と話した。

英語も美術も想像を超えた成功を収める

シャガールのキュビスムをヒントに制作した生徒の絵
シャガールのキュビスムをヒントに制作した生徒の絵

 さらに、内容を深めて発展させていくために、この鑑賞で感じたことを絵に描いて英語で説明する、あるいは『私と村』の絵をモチーフにして自分で英語の物語を書く、という取り組みも行った。

 「生徒にどちらかを選んでもらい、課題として提出してもらいました。鑑賞して終わりではなくて、そこから思考するステップが大事です。そこから何を生み出していくかに重点がありましたが、私たち教員の想像を超えたものが出来上がってきて驚きました」と白井教諭は話す。

 生徒たちは、キュビスムを自分なりに解釈して描いた絵や、想像力を膨らませて「村に活気を取り戻した男性の物語」「村を去った飼い主を待つヤギの話」「故郷を思い返す駆け落ちした男性の話」などの物語を作ってきたという。

 授業後の生徒のアンケートでは、「美術の鑑賞力が付いた」「美術により興味が出てきた」「美術館に行きたくなった」などと回答しており、多くの生徒が美術への関心を強めたようだ。

 英語についても「英語の表現力が付いた」「英語で表現することが楽しくなった」などの回答が多く、英語も美術も同時に深く学んだ様子だ。

 白井教諭は、「私たちの想像以上に、美術CLILは大成功でした。絵画を見る視点が深まり、英語力も向上しました。何より、新型コロナウイルスによる自粛期間中でしたから、在宅でできる楽しい授業という大きな目的も達成されました」と話す。

 白井教諭はこの授業について日本CLIL教育学会で発表したという。「オンラインでもCLILが成功した例として、多くの反響が寄せられました」

 同校は今後、聖書などもCLILで学ぶことを予定している。科目の内容を深く学ぶとともに、英語で自分の意見を話したり書いたりして、4技能(読む、聞く、話す、書く)を養っていくという。

 今回のCLILの授業を通して生徒たちは、オンラインでも英語を使って学習できる自分たちに自信を持ったことだろう。その自信をますます今後の学びに生かしていってほしい。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:横浜女学院中学校高等学校)

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1431983 0 横浜女学院中学校高等学校 2020/08/28 05:21:00 2020/08/28 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200824-OYT8I50014-T.jpg?type=thumbnail

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