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【特集】「規律」より「合理性」で個性をまとめ上げる部活動…啓明学園

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 啓明学園中学校高等学校(東京都昭島市)は「自主性」と「個人の尊重」を基本精神として、部活動を運営している。1940年に帰国生のための学校として設立された同校は、現在も帰国生や外国籍の生徒などの国際生が全生徒の約3割を占めており、多様なバックボーンを持つ生徒たちの人間関係を育む場として部活動は重要な位置を占めている。多くの部活動の中から40年の歴史を持つ男子バスケットボール部を紹介する。

強制も奨励もなしに8割を超える部活加入率

男子バスケットボール部顧問の川口大輔教諭
男子バスケットボール部顧問の川口大輔教諭

 同校広報センターの荒木栄主任は、同校の部活動運営の基本を「自主性」と「個人の尊重」だという。「技能を磨くか、趣味やアクティビティーとして楽しむか。部活動の目的や内容は、参加する生徒自身がどう考え、行動するかにかかってきます。特に本校は多様な生徒の集まりですから、一人一人の意思を尊重し合い、すり合わせして皆が納得する良い活動にしなければなりません。これは今後の社会でも大切になる素養です。うれしいことに、多くの部でそれがうまくいっているようです。部活動への加入率が強制や奨励なしに8割を超えている事実が、それを示していると思います」

 約40年の歴史を持つ男子バスケットボール部も、多様な生徒が尊重し合って活気ある運営を行っている。部員数は高校生26人、中学生15人であり、多くの部活の中でも国際生の割合が高く、7割に達するという。

 顧問の川口大輔教諭は、日本体育大学在学中に全日本テコンドー選手権大会で優勝した実績があり、ムエタイやキックボクシングの経験もある格闘技のエキスパートだ。他校に勤務していた際はラグビー部の顧問を務め、4年前に同校に赴任したが、「それまでバスケットボールの経験はなかった」という。

 「本校のバスケ部は一見まとまりがなく遊び半分のように見えますが、一方で日本の若者のような冷めた感じがなく、自分の感情をストレートに出します。頑張るべき時は『俺、頑張る』と言葉にしますし、良いプレーが決まった時の盛り上がりはすごいですよ」

一つ一つの行動・動作の具体的な意味を考えて練習に励む
一つ一つの行動・動作の具体的な意味を考えて練習に励む

 出身国や文化背景がさまざまな生徒を、トップダウンの規律でまとめるのは難しい。そのため、指導では誰もが納得できる合理性を大切にしている。

 「一つ一つの行動・動作の具体的な意味を教えます。確実にパスを回すため相手の名前を必ず呼ぶ。もらう相手は受け取りたい場所に必ず手を出す。シュートの際は出来るだけゴールに近づく。全てに、成功率を高めるための理由があるのです。そして、生徒に『頑張れ』と言うだけでなく、指導者も力を出し切る。練習の際も部員と同じメニューをこなします」

 生徒が率直にぶつけてくる考えを柔軟に聞き入れ、チーム運営に生かすことも多いという。「現在のメンバーは身長の高い生徒が少ないんです。そこで私は、カットインなどで当たり負けしないよう、筋トレ中心の練習メニューを組みました。しかし彼らが『速攻が得意なチームにするため、走り主体の練習をしたい』と希望したため、その考えを受け入れました。このように、その年の生徒の意見や考え方によって部の持ち味も変わっていきます」

多摩地区で10位内を狙えるレベルにまで上達してきた
多摩地区で10位内を狙えるレベルにまで上達してきた

 部を盛り上げるためのちょっとしたルールも設けている。「ネガティブワード禁止です。絶望的な局面でも『ダメだ』と漏らさず、笑顔で『まだゴール1本はいけるぞ』と前向きにいこうと言っています。それから、周囲を鼓舞するハッスルプレーに努めること。ボールを追ってコート外の観客席に突っ込んでいくような熱意あるプレーが飛び出すと、大いに士気が上がります」

 こうした指導を積み重ねた結果、赴任した当初は多摩地区24校中で最下位だった成績が10位入りを(うかが)うレベルにまで上がってきたという。

 「元々啓明バスケ部は『楽勝の相手』と見られていたので、対戦チームからは『こんなに強いとは聞いていない』と驚かれます」

仲が良いだけでなく、互いにリスペクトし合う部員たち

 部の中核を担う2人の高2生にも話を聞いた。部長の吉村海飛(かいと)君は米テネシー州からの帰国生だ。副部長の池田(かえで)君は3歳までカナダ、その後、米アラバマ州で暮らして帰国した。

 「部の良い所は」と聞くと、2人は「部員全員仲がいいこと」と異口同音に答えた。バスケのほかに野球も得意だという吉村君は「部の仲間と遊びに行くのが楽しい。学校裏の多摩川にみんなでよく行きます」と言い、ダンスや体操、水泳などさまざまなスポーツをこなす池田君は、「後輩も遠慮なくいじってきます。『先輩、踊って』と言われるとK-POP風のダンスをやってみせます」と楽しげに話す。

仲が良いだけでなく、互いにリスペクトし合う関係の部員たち
仲が良いだけでなく、互いにリスペクトし合う関係の部員たち

 「部員たちは仲が良いだけでなく、お互いの違いを認め、リスペクトする関係なんです」と川口教諭は話す。「高校で野球からバスケに転向した部員がいます。バスケの動きに慣れないこともあり、『リバウンドを拾う役割に特化したい』と申し出ました。普通ならわがままと思われることかも知れませんが、部員たちは彼の希望を受け入れ、『じゃあ自分はここ』『自分はこれをやる』とポジションを割り振っていました。こうした雰囲気は本校全体に通じるものです。国際生の気質が日本で育った生徒にも良い影響を与えているのか、出る(くい)を打つような感覚はありません」

 もちろん、小さないさかいはあるという。吉村君は、中学の頃から先輩よりもバスケットボールがうまく、闘争心も強かったため、時には周りがついていかず、一部の部員との間に摩擦が生じたこともあったそうだ。

 「そんな時は同学年の仲間が、双方を取り成すなどし、孤立しないようにしていました。私も、吉村が練習中に激して袖をつかんだりするようなことがあったため、セルフコントロールに努めること、周囲との対話を大事にすること、と伝えました。現在は相手のことを考えた態度を取るようになり、技術、熱意共に手本となる部長です。皆には『彼に負けるな』と言っています」

 池田君も吉村君のフォローに回りながら、影響を受けて成長しているという。「試合で吉村がマークされた時に風穴を開ける存在です。熱い心はあるものの、以前は少し控えめなところがあり、吉村に引っ張られて積極性や責任感が出てきたと思います。いろんなスポーツの才能がありますが、『チームのために』と今はバスケ一本で頑張っています」

コービー・ブライアントに学べ

 川口教諭が部員たちに手本にしてほしいのが、今年初めに事故で亡くなった元NBA選手のコービー・ブライアントだという。

 「天才と言われる彼の偉業の裏には、人の何倍もの努力がありました。あるインタビューで『愛があれば、その物事に対する情熱は無限大のはずだ』と言ったそうです。生徒たちも、自分が好きなことに笑顔で情熱と時間を注ぎ、周囲の反応を気にせず胸を張って、成功を目指して努力してほしい。そうした経験があれば、困難や逆境の中でも自分を信じて頑張れる人になれる。その中から真のリーダーが育つと思っています」

 さまざまな個性を持った生徒たちが多様性を発揮しながら、互いを尊重し、合理的な話し合いで部活動をまとめていく。同校の部活動は多様性の教育の一つのモデルケースと言えないだろうか。

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:啓明学園中学校高等学校)

 啓明学園中学校高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1401906 0 啓明学園中学校高等学校 2020/08/12 05:22:00 2020/10/21 16:01:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200807-OYT8I50030-T.jpg?type=thumbnail

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