ICT活用で生徒の未来を育む…十文字

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 十文字中学・高等学校(東京都豊島区)は、英語・理数教育にICT(情報通信技術)を積極的に取り入れた授業を展開している。ICT活用の効果はすでに、理系への大学進学実績に表れており、これからますます真価が問われると同校では考えている。ICTを活用した授業の実際について中学校の浅見武教頭らに聞いた。

ICTの活用で密度の濃い授業を実現

効率的な授業を実現した教室内の大型プロジェクター
効率的な授業を実現した教室内の大型プロジェクター

 同校は時代の先端技術に着目した教育を行ってきた。35年前に校舎を新築した際は、マルチメディアルームを2室設け、40~50台のパソコンを備えたという。ICTを本格的に導入し始めたのは2014年からで、前年に文部科学省の「第2期教育振興基本計画」によって、ICT活用の推進が打ち出されたのを受けての素早い対応だった。

 「文部科学省の方針を受け、本校も大きくかじを切りました。最初は試行錯誤でしたが、マルチメディアルームの経験があるので、ICT導入も比較的に楽でした」と浅見教頭は振り返る。

 大型のプロジェクターを一般教室に入れることに始まり、iPadを英語授業向けに30台、理科授業向けに40台購入。同時に各教室に電子黒板を設置した。昨年度からは高1生に1人1台、キーボードが使えるタブレットパソコン「サーフェスゴー」を持たせるようになった。今やタブレットパソコンを使って授業を進めるスタイルは日常の風景となっている。

 「電子黒板は授業全体に心地よいリズムとテンポを与えてくれます。アクティブラーニングには必須のツールです。『授業に参加している』という強い意識が生徒に生まれ、学習意欲を高めてくれます」

 電子黒板の使用は先生たちにとっても大いに省力化になる。デジタル教科書をそのまま映し出すことができるので、板書の手間がなくなり、その分、授業の内容に集中できる。結果、密度の濃い授業が可能になるそうだ。

英語力が向上し、数学の授業は円滑化

オンライン英会話で海外の英語教師と1対1のレッスンに励む生徒たち
オンライン英会話で海外の英語教師と1対1のレッスンに励む生徒たち

 同校がICTの活用を特に積極的に進めているのは英語教育と理数教育だ。英語の授業では、電子黒板を導入した14年に、日本英語検定協会公式のオンライン学習システムも取り入れた。同校では生徒たちのほとんどが在学中に実用英語技能検定(英検)準2級以上を目指して受検する。パソコンを備えた「CALL教室」でこのシステムを使い、英語の基礎から目標とする級の英検対策まで、昼休みや放課後など好きな時間に学習ができる。

 16年にはフィリピンの英語学校とスカイプで結ぶオンライン英会話を導入し、現地の講師と1対1での英会話レッスンを開始した。

 「オンライン英会話は実験的な試みでしたが、今では完全に授業の中で定着しています。本校にはネイティブの教員が5人いますが、オンライン英会話には生徒それぞれが自分の能力に合わせて取り組めるという利点があります。皆、ヘッドセットを着けて、それぞれ違った内容の英会話をしています。1回15分ほどですが、皆話す自信を付けています」

 このほか、「リピートーク」という音読学習管理ツールを全学年で使用している。「生徒はパソコンの前で英文を音読し、その録音をオンラインで先生に提出します。先生はそれを聴いて、正しく読めているかどうか評価し、コメントを返します。職員室でもヘッドセットを着けている先生は多いですよ」

 こうして鍛えられた英会話力は、オーストラリア海外研修で試される。同校は中3の春休み、希望者向けにオーストラリアのブリスベンでの10日間の語学研修を行っている。研修中は全泊ホームステイして現地の学校に通う。当初の参加者は28人だったが、昨年は115人に増え、今年は150人程度に膨らむ見込みだという。中3生は185人なので大多数が参加すると言ってもいい。

 「修学旅行的な要素はなく、全期間、英語漬けです。帰国後は明らかに英語力が上がっています。英語が出来れば世界でやっていけるんだと分かるようですね」と、浅見教頭は笑顔を見せる。

 高1ではさらに、同じくブリスベンでの3か月間のターム留学も用意している。18年には帰国後6人の生徒が英検準1級を取得するほど英語力を付けたという。

 数学の授業でもICTはさまざまに活用されている。中3の統計の授業で学ぶ「相関関係」では統計ソフトが活躍する。

 数学を担当している浅見教頭によると、たとえば「寝る子は育つ」ということわざが本当かどうか調べる際、「寝る時間」と「身長」という2種類のデータの関係について仮説を立て、周囲の人から実際にデータを聞き集めて精査し、それをグラフ化して検証するという手順が必要だ。

 統計ソフトを使えば、データの収集や意見の共有、「箱ひげ図」と呼ばれる統計グラフの作成などが一気にスムーズになる。さらに、その図について考察した結果をパワーポイントでまとめて資料化し、電子黒板を使ってプレゼンテーションすることもできる。

 「プレゼンは説明する班と聞く班に分かれて行い、優れた説明には聞く班から高評価が与えられます。答えのない問題にぶつかった時にそれをどう乗り越えるかが問われる授業であり、ICTのさまざまなツールがあって、初めて実現したと言えます」と浅見教頭はICTの意義を語った。

個々の生徒の習熟度に合わせた授業が可能

ICT教育の成果を語る浅見・中学校教頭
ICT教育の成果を語る浅見・中学校教頭

 ICTの活用によって同校の授業は大きく変わってきたと浅見教頭は見る。「ICTの力を借りると、生徒一人一人の学習の進捗(しんちょく)が違います。生徒の習熟度に応じて課題難易度を変えることができるため、以前は『全員、ここまで理解しよう』という授業でしたが、今は『それぞれの力を思い切り伸ばそう』という授業に変わりました。生徒の姿勢も受け身ではなく能動的になります。これからも積極的に取り入れていく予定です」

 今春の大学入試では、同校から13人が国公立大学に進んだ。理系への進学者も多く、現役生で理系へ進学した割合は約23%。医学部医学科にも毎年複数の合格者を出している。

 この実績について入試募集対策室長の和田吉弘教諭は「理科に興味の湧くようなICT授業に力を入れている成果です」と胸を張る。「ICT授業を導入し始めた2014年に中1だった生徒は現在、高3です。2021年度入試では、その生徒たちが6年間のICT教育の成果を発揮してくれるでしょう。これからがますます楽しみです」

 同校が現在の北大塚の地で開校したのは1922年だ。この土地の地盤は固く、翌年東京を襲った関東大震災でも校舎は無事だったそうだ。伝統という、しっかりした「地盤」に根を張り、最新のICTに支えられた生徒の学びの芽は大きく育っていくことだろう。

 (文・写真:水無瀬尚 一部写真:十文字中学・高等学校提供)

 十文字中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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731809 0 十文字中学・高等学校 2019/08/14 05:21:00 2019/08/14 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190808-OYT8I50004-T.jpg?type=thumbnail

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